今、ワーク・シェアリングを再考する

今、ワーク・シェアリングを再考する

今、ワーク・シェアリングを再考する

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日本の働き方が、大きく見直されようとしています。政府主導で進んでいる「働き方改革」。現在、大手企業を中心に、その対応に迫られています。働き方改革の内容は、ダイバーシティーや副業・兼業、テレワークなど様々あります。しかし、特に重要視されているのが働きすぎの抑制、すなわち「残業対策」になるのではないでしょうか。
大手企業における、過労を理由にした社員の自殺事件など、現代社会は「働き過ぎ」に対して、どんどん厳しくなっています。このような状況において、企業はどのような働き方を推進すればよいのでしょうか。その中の1つとして、今後「ワーク・シェアリング」という概念が脚光を浴びるかもしれません。

ワーク・シェアリングとは

ワーク・シェアリングとは、その名の通り業務を分け合うことです。これまで1人で行っていた仕事を、2人ないしは3人で行うことで、一人ひとりの業務負荷を軽減し、かつ効率的に進むことを狙いとしています。ワーク・シェアリングという言葉は、日本では今から10年以上前に提唱されています。当時、話題になった背景としては、失業対策における雇用創出の手段として、ワーク・シェアリングが提唱されていました。
参考:独立行政法人経済産業研究所

ワーク・シェアリングは、もともとヨーロッパで始まった概念です。
60年代後半から70年代にかけて、ドイツで労働時間の短縮・シェアによって、雇用を維持しようという動きがありました。労働組合側は、賃金を維持して実現するよう要請したものの、企業側が激しく抵抗。結果として、導入に至るケースはほとんどなく、ドイツで30社ほどだったといわれています。

日本に入ってきた当初もワーク・シェアリングに対して否定的な見方がありました。一人ひとりが行う仕事が減少するため、給与が減額されてしまうのではないかというものです。確かに、企業の給与は、多くの場合、時間に比例して支払われるため、このような懸念が生まれても仕方がないといえるでしょう。

しかし、現代では、アウトソーシングの普及などにより、ワーク・シェアリングという言葉が使われていなくても、業務分担が進んでいます。これまで自社の社員で行っていた仕事も、外部の会社に委託するなど、私たちが認識しないうちにワーク・シェアリングは進んでいるのです。
このように、ワーク・シェアリングは、すでに私たちにとって当たり前のものとなっているのです。

ワーク・シェアリングのメリット・デメリット

ワーク・シェアリングを再考する上で、そのメリット・デメリットについてしっかり押さえておく必要があります。果たして、どのようなものがあるのでしょうか。

ワーク・シェアリングのメリット

1. 雇用を確保することができる
従業員の働く場を確保する。これが当初、日本で導入された際の目的の一つでした。業務をを分担することで、人手をかけることができ、失業を回避することができるのです。
特に、不況の際に企業が人員整理の必要に迫られた際に、ワーク・シェアリングを実施することでそれを避けることができる可能性があります。

2. 業務負荷の軽減
業務を分担することで、1人の業務量を減らすことが期待できます。最近では、働き過ぎに対する風当たりが強く、従業員の業務負荷を企業が真剣に考えていく必要があります。そのような時に、ワーク・シェアリングが実施できると解決につながるかもしれません。


ワーク・シェアリングのデメリット

1. 給与が削減される
1人ひとりの業務量が減ることで、働く時間が減り、給与の低下につながることが懸念されます。実際、過去にワーク・シェアリングを実施した企業では、給与カットが発生した事例もあります。給与は生活に直結する大事な要素だけに、従業員の方も不安になることが想定されます。

2. 生産性の低下
ワーク・シェアリングを行った場合、仕事を分担された方が前任者のように業務を進められるかという懸念もあります。また、日本の場合、海外ほど業務分担が明確でなく、引き継ぎが難しいという問題もあります。

ワーク・シェアリングの導入事例

それでは、過去にワーク・シェアリングを導入した企業は、どのような企業があったのでしょうか。
この記事では、2社の事例を紹介します。

1. 半導体装置メーカーの「TOWA」


TOWAがワーク・シェアリングに取り組んだ背景として、2000年ごろから半導体業界が不況に見舞われ、その煽りを受け、売上が激減したことがあります。そのため、TOWAとして雇用をどう維持するのか、対応に迫られていました。そこで、TOWAはワーク・シェアリングを実施し、従業員の稼働日を週4日にすることで雇用の維持を図りました。
従業員の給与は多少下がりましたが、「雇用が維持されて助かった」という方もいたそうです。また、企業側も、景気が回復した際の受注増に備えて、人員を確保できるメリットがあると語っています。

2. 自動車メーカー「日野自動車」


もう1つ、ワーク・シェアリングの事例として日野自動車の例を取り上げます。
日野自動車は、従業員の労働時間を短縮することによって、その分の賃金をカットし、雇用維持を試みました。大企業が実施した例として、大きな注目を集めましたが、効果はなんともいえないものだったようです。短時間勤務になった場合、給与削減により生活に影響が出る社員がおり、社内で展開が進まなかったのが原因のようです。ワーク・シェアリング普及の難しさが浮き彫りになった事例の1つです。

このように、ワーク・シェアリングがある程度機能した例も見られます。しかし、日本では、雇用維持を目的としたワーク・シェアリングはほとんど機能しなかったのが実情のようです。

「雇用維持のワーク・シェアリング」から、「多就業促進のワーク・シェアリング」へ

ここまで、雇用維持の観点でワーク・シェアリングについて取り上げてきました。雇用維持を目的としたワーク・シェアリングは、日本では成功しているとは言い難いのが実情です。

しかし、近年は、ワーク・シェアリングという言葉が使われていなくても、当たり前のように業務が分担されています。アウトソーシングにより、外部に業務が委託されるのは、一般的になりつつあります。また、副業・兼業を認められた従業員は、クラウドソーシングやSNSなどを通じて、仕事を請けるケースもどんどん増えています。
シェアされるのは、ワークだけでなく、1人の人間のリソースも対象となっています。ワーク・シェアリングの考え方は、これまでの雇用維持の意味合いではなく、多就業促進の意味合いで広まっていくのではないでしょうか。

シェアリング・エコノミーという言葉があるように、仕事をはじめ様々なことに「シェア」という概念がついてきます。自分の持っているもので何をシェアできるか、ご自身のキャリアを考える上で、一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

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