<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=1176794389076832&ev=PageView&noscript=1" />

生産者との架け橋となる場所『東京オーブン』が地域に愛されるワケ

生産者との架け橋となる場所『東京オーブン』が地域に愛されるワケ

生産者との架け橋となる場所『東京オーブン』が地域に愛されるワケ

2012年11月、神田西口にオープンしたワインバル『東京オーブン』。自分たちが納得した食材を産地直送で仕入れ、南部鉄器を調理器具として用いるなどなど食材の個性を活かした料理が話題となりました。

“生産者の想いを届ける”ことをテーマに展開し、2017年には赤坂に新店をオープン。周囲の店を巻き込んで地方食材を活用したさまざまなイベントを開催するなど、はやくも“街の顔”となりつつあります。

今回は、そんな東京オーブンを経営する『株式会社テンプルボーイ』代表の渡邉さんに、経営にかける想いを伺いました。

渡邉真祐

株式会社テンプルボーイ 代表取締役。 大阪の浄土真宗の寺の次男坊として生まれる。学生時代に読んだ「アイ・ラブ・レストラン」で飲食業での起業を決意。大手弁当チェーン店にてマネジャー職、都内キッチンカーのプロデュース業を経て2010年、東京神田にてプラットフォームデリカフェを創業。NPO法人農商工連携サポートセンターの理事に就任し、「地域の生産者と東京の消費者の架橋になる」という経営理念を持つようになる。

東北復興支援から始まった“生産者への想い”

おしゃれで落ち着きのある素敵な空間ですね。東京オーブンは一言でいうとどんなお店なんですか?

▲赤坂の『東京オーブン』。ホテルの1階ということもあり、外国人観光客にも人気。

渡邉:頑張る生産者と東京の消費者の懸け橋となる場所です。

なるほど。ただのおしゃれなワインバルではなさそうですね。

渡邉:僕らが追求しているのは、お客様、従業員、生産者、街というこの4者の幸せなんです。

それを、“生産者の想いを届ける”という大きなテーマを元にしてやっています。

一般的な『三方良し』に“街”が加わったのはなぜでしょう?

渡邉:3.11の震災後、釜石市にボランティアに行ったときから、生産者の想いを消費者に届けるようなことを東京でやりたいなと思うようになりました。

僕たちは2011年3月18日に、釜石市産の『桜牡蠣』のプロモーション活動のイベント企画していて、生産者さんや市長さんを呼んで、大々的にやる予定でした。

でも、その1週間前に震災が起こり、釜石市の飲食店を営んでいた方に向けて何かできないかな、と考えたんです。

そこで、釜石市で料理人をしていた方から「キッチンカーが欲しい」と言われたんです。僕は前職でキッチンカーの出店者を募って食のイベントをやる事務局をやっていて、それで「キッチンカーさえあれば料理を作って提供することができる」という提案をいただいたんですね。

炊き出しに行こうと思っていたのですが、逆にそんな提案をされてびっくりしましたね(笑)。それでみんなに声をかけて、4月1日に3台のキッチンカーをプレゼントしに行きました。それが釜石市との付き合いの始まりです。

そこから、東京オーブンを開店するにいたったんですね。

渡邉:僕自身は自分でレストランをやっていきたいという想いがありました。釜石市と付き合い始めて、ケンちゃんという牡蠣の漁師さんがいることを知って、「釜石産の」ではなくて、「ケンちゃんが作った牡蠣」として消費者が食べることって意義があるなと思い、そんなレストランを作りたいと思いました。それでできたのが東京オーブンなんです。
▲震災から2年後に開催したイベント。真ん中がケンちゃん。

全国各地の生産者と、どれだけ深く付き合えるか

今では全国各地に生産者のつながりがあるそうですね。

渡邉:料理人もいっしょに全国各地の生産者のところに行くんです。ついこの間も宮崎県の養豚場に行ってきました。職人である料理人が自ら生産者の人たちの想いを知って、それをお客さんに伝えることを目的にやっています。

“生産者とどれだけ深い付き合いができるか”を大事にしていて、彼らの困りごとを解決できる存在になったときに、ただの生産者と仕入先の関係性から一歩先に進めると考えています。

生産者が抱えているのは、どういった困りごとですか?

渡邉:例えば、豚の場合は売れる部位が偏ってしまうという問題があります。腕や肩が売れ残るのであれば、そこを生かしたメニューを提案してお店で出したり。

 先日の台風11号の被害で、千葉がクローズアップされていましたが、東京も結構大変だったんです。秋に収穫するはずだった茄子が全部なぎ倒されてしまって、僕たちがその茄子30キロを全部引き取ったんです。

その茄子をお店で食べ放題にして、お客さんにはその代わりに募金をお願いして、その募金を持って、生産者のところに持っていきました。そういう提案も僕たちの方からしています。

こういう提案も、店のスタッフみんなで考えるので店の全員が食材について心から語れるんです。そうすると、お客さんに生産者の想いを届けることもできると思うんです。

生産者の苦労や悩みに触れる機会って都会で暮らしていたらあんまりないですね。

渡邉:僕たちは、生産者と消費者の架け橋になる、という理念を一番大事にしています。なぜならみんな生産者のことを知らないから。

実際に会って話してみると、生産者の困りごとは私達で解決できたり、生産者の何気ない一言から私達のお店のヒントをもらうことって、たくさんあるんですよ。

でも、生産者とそういう関係になるには、信頼を構築していく必要があります。衛生管理も徹底しているところに入っていくわけなので、すぐに受け入れてくれるところばかりではありません。ただの仕入れに行くわけではないので、これは本当に時間のかかることです。

生産者の悩みを聞くことができるのも、信頼関係があってこそなのですね。

渡邉:大事にしている理念として、共存共栄できるパートナーに出会ったら簡単に諦めない、というのもあります。

これはどういうことかというと、生産者と深く付き合うために、あえて言いにくいことも言っていくということです。「野菜にこういう問題があったから、他にも出さないほうが良いですよ」とか「もっとこうしてもらえませんか」と伝えたり。

深く付き合うとはそういうことで、それでこそ共存共栄できるパートナーですからね。

飲食店の枠組みを越え、周囲を巻き込む提案

渡邉:そんなふうにして、東京三鷹の『冨澤ファーム』の富澤剛さんとはパートナーとして年に1回、農園BBQを企画しています。当店のお客様をお連れして収穫体験やバーベキューをします。採れたて野菜を畑の真ん中で当店の料理人が調理して、皆んなで食べるんです。

めちゃめちゃ贅沢!そして楽しそうなイベントですね!

渡邉:料理人という技術と、生産者の力が合わされば、さらに共存共栄できる強固なシステムを作り出すことができるはずなんです。

岩手県のワイナリーさんをお店に呼んでイベントもやったこともあります。

ワイナリーさんのほうから「うちのワインをPRする方法は何かないですか」という相談があり、『岩手ワイン祭り』ということにしてイベントをやったんです。

4店舗の飲食店に6つのワイナリーの人たちに来てもらって、限定20人で、ワインに合う料理を提供したり、試飲ができるイベントを開催しました。

飲食店をやっているからこそできる生産者のサポートですね。

渡邉:岩手県の住田町まで行って、東京オーブンを出店したりもしましたね。
うちのローストチキンを地元のおじいちゃんやおばあちゃんにも食べてもらうというイベントです。

普段は丸鶏を捌くところまでしか作業しない生産者の人たちに、僕らといっしょにスパイスを仕込んでもらって、といっしょにお客さんに出すということをやりました。

今まで作って終わりだった生産者が、それを加工して直接お客さんに売ることで、反応を見て、自分の作っているものの価値を知ってもっと良くしたいと思ってもらえたり、それで「もっとこうしよう」と考えるきっかけが生まれるんです。そういったムーブメントが生まれる活動をしていきたいですね。

幸せを追求できる仲間が集まる場所に

渡邉さん個人としては今後どんな想いを持ってやっていきたいですか。

渡邉:僕自身の目標としては、感謝できる経営者になりたいですね。

「あなたに出会えて良かった」と思いたいし、自分も言ってもらいたい。ありがとうを集めたいだけなんですよ。お客様、従業員、生産者、街というこの4者にありがとうと言ってもらいたい。そしてそれが連鎖するのが理想ですね。

今後の目標はありますか?

渡邉:1つ目はレストランを増やす。2つ目は、もっと深い生産者とのつながりを作る。大きくはこの2つですね。

効率の良いやり方ではないかもしれませんが、作る人と売る人がいっしょになって「ひとつの物ができて消費者に届くまで」これに一環して携わることで見えてくるものってあると思うんですね。

生産者の想いを届けることができればどんな方法でも良くて、それを自由に考えて実現していける仲間がもっと増えると良いですね。

具体的にどんな人といっしょにやっていきたいなどありますか?

渡邉:飲食店の枠組みを越えた提案をどんどんしてくれるよな人ですかね。必ずしも料理人でなくても、企画やコーディネートといった経験が役に立つ仕事だと思います。

いっしょに畑に行ってバーベキューをやる、でも良いし、余ってしまった部位について料理人といっしょに考えて、うちの店だけじゃなくて周りのお店も巻き込んでいっしょになって扱えるように声をかけたり。

それまでやってきたことや道のりが違ったとしても、いっしょに生産者のところに行って、生産者の悩みに触れて「じゃあどうすれば良いか」をいっしょに考えると、カルチャーの違いを乗り越えて、みんなで幸せを追求していけると思います。そんな人間が集まる会社を作っていきたいですね。

取材を終えて

『東京オーブン』に行ってみると、どこからともなく生産者と食材についての情報が聞こえてきます。作り手のストーリーに触れて食べる食材は、いつもと違って新鮮さや個性を感じることができ、より一層美味しく感じます。
週末は生産者のところへ行って、顔を見て話を聞いて、いっしょにつくる体験をして…と想像してみると、なんだかとてもわくわくしてきました。ものづくりに一環して携わることは、私たちにとって新しい価値を発見するひとつの方法であるのかもしれません。