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「まずは本気を出す!」富士通のグラフィックカタリスト・タムラカイに聞く、好きを仕事にするための秘訣

「まずは本気を出す!」富士通のグラフィックカタリスト・タムラカイに聞く、好きを仕事にするための秘訣

「まずは本気を出す!」富士通のグラフィックカタリスト・タムラカイに聞く、好きを仕事にするための秘訣

「好きなことを仕事にする」「やりたいことをビジネスで」とは言うけれど、そんなことができるのはフリーランスや自分の会社を作れた一部の人だけ。「会社や組織で働くとなると、上司の命令が絶対!」なんて思っている人も少なくないはず。

会社の規模が大きくなればなるほどルールが増え、その傾向は強くなるのでは?そんな風に思われがちではありますが、 ”富士通” という大企業に所属しながら、自分のやりたいことである「ラクガキ & グラフィック」を仕事にし、半公認ながら「グラフィック・カタリスト・ビオトープ(以下、GCB)」という組織まで作ってしまったのが、水玉シャツがトレードマークのタムラカイさん。

今回は、GCB立ち上げ時からのメンバーである武田さんを迎え、インタビュー形式でタムラさんのこれまで、そしてGCBのこれから、活動を通してみえてきた「働くこと」についてのお話を伺いました。

グラフィックカタリスト・ビオトープとは

「かいてつたえる、かいてつながる」をコンセプトに活動するグラフィックチーム。グラフィックカタリスト(カタリスト=触媒)とは「描くことを通して創造的関係性をはぐくむ触媒」というコンセプトでタムラカイが名付けた名称。メンバーは富士通のグループ社員を中心として2016年に結成。本業とは違ったスキル・才能を発揮する場にもなっており、2017年にはWork Story Award 2017を受賞。

タムラ カイ

2003年富士通入社、UI/UXデザイナーとしてWeb制作やスマートフォンブランド立ち上げなどを担当。個人活動として2009年個人ブログ、2014年にラクガキ講座『ハッピーラクガキライフ』」を開始。2016年「グラフィックカタリスト・ビオトープ」を結成。 自著に「アイデアがどんどん生まれる ラクガキノート術 実践編」

武田 英裕

2001年富士通グループ入社。テクニカルインストラクターを経て、2012年に富士通へ転籍。数多くのイノベーションプロジェクトに関わるほか、Webメディアの運営を担当。現在はデジタルビジネスプロデューサーとしてお客様の新サービス創出を支援するほか、編集学校において編集コーチとしてのロールも担う。

水玉ラクガキコーチ、タムラカイができるまで

武田 英裕(以下、武田):あらためまして、よろしくお願いします。今日は最近世間でも話題になっている「働き方」という文脈と絡めて、タムラさんのこれまでと、これからということでお話を聞いていきたいと思います。

・・・にしても、あらためてこういう座組で「タムラさん」なんて言う感じで話を聴くのは、照れくさくて調子がでないですね(笑)

タムラ カイ(以下、タムカイ):またまたー(笑)

武田:いつもどおり ”タムカイ”さんと呼びたいと思います(笑)

タムカイ:いいですよー、それでいっちゃってください(笑)

武田:では早速(笑)僕がタムカイさんに出会ったのは2016年2月。富士通が企画・主催したアイデアソンでグラフィックレコーディングを担当してくれたのがきっかけでした。その頃には「ラクガキノート術」という本も出版されていたし、水玉シャツでラクガキコーチを名乗っていた今の感じのタムカイさんでしたよね。

「へぇー!富士通にこんな面白いデザイナーがいるんだー!!」というのが正直な感想でした(笑)でも、富士通に入社されたわけなので、さすがに最初からそうじゃなかったと思うんですよね。なにかきっかけがあったんですか?というか、なければおかしくないですか!?

タムカイ:はい、いやー、色々ありましたね…!これを話し出すと一晩でも足りない説があるので、簡単な略歴を用意してみました。

2003年 入社直後、実力不足による暗黒期からイケイケ期
2008年 望まぬ異動と自分に何もないことを自覚
2009年 個人ブログを開始、以降会社と個人活動の両輪
2014年 社外の知人の一言でラクガキ講座を開始
2015年 「ラクガキノート術」出版、会社と向き合う覚悟を決める
2016年 「ラクガキノート術 実践編」出版、GCBを結成
2017年 働き方を考えるカンファレンス2017グラレコ、富士通フォーラム2017グラレコ、ワークストーリーアワード受賞
2018年 働き方を考えるカンファレンス2018グラレコ、タムラカイは登壇

武田:暗黒期からのスタートって面白い。そして、イケイケ期から望まぬ移動と自分に対する自覚。このあたりにタムラカイがタムカイさんになっていく「何か」がありそうですね。でも、なるべくしてタムカイさんになったという、戦略的というか自覚的なキャリアデザインというか、そんなストーリーって感じがしないでもないですが、そのあたりご本人としてはどう感じてるんですか?

タムカイ:んー、それが難しくて。今という結果から遡ると「なるべくしてなった」という感じなのですが、本人としては結構行き当たりばったりで今に至ってるんですよね。この道で行こう!」と覚悟がきまったのが、この表だと2015年くらいかな。

そもそも会社に入ったのすら成り行きで、大学院への進学を検討しつつも大学の先生に「経験としてどこか一社くらい受けておけ」と言われ、消去法と携帯電話が好きという理由で富士通を選び、そしたら受かってしまって「行くか」と。

武田:軽っ(笑)でも、僕も同じような理由で会社入ってるから、普通といえば普通かも。

タムカイ:思い返すとそんなのばっかりだな…。デザインを専攻した理由も、美術系出身の両親から「この道に進むのは反対しないけど、美術はお金にならないからデザインがいいよ」と笑いながら言われて決めたくらいだし(笑)

武田:なんか、こだわりを持って、自分で決めて、バリバリ動いている今のタムカイさんのイメージじゃないですね。

タムカイ:そうですね、仕事にしても進路にしても自分の「好き」の方向を向いてるんだけど、「これだ」というのがなかったなと今となっては思います。当時はそんなこと考えなかったですけどね。

武田:でも、世の中ってそういう人がほとんどですよね。自分の「これだ」って言えるものはなんですか?と聞かれれば僕だって悩みますもん。

タムカイ:ただ、その代わりに大事にしていたことがあって、「置かれた環境では本気を出す」というのは徹底していた気がします。入社試験も受ける時は本気で受けたし、会社に入ってからの実力が伴わず悔しい思いをした暗黒期も、最後は徹底的に努力して乗り切ったし。望まぬ異動があった時も、行ったら行ったでやることはやっていて。

今につながるラクガキ講座も、最初は知人の何気ない一言がきっかけで、そこからやると決めて、やるとなったら本気でやろう!となりました。本気でやれば結果が出て、その結果がベースになって次のオファーが来るんですよね。「好きじゃないからやらない」と言っちゃうのは簡単ですが、そうするとオファーすらこなくなっちゃう。あと、人って何かと理由をつけてやらないんですよ(苦笑)

そういう意味だと、やりたいことって、結局やったことの中からしか出てこないんじゃないかなと思うんですよね。

武田:仕事にしても何をやるにしても、「好き」はもちろん大事なんだけど、それより大事なのが「本気を出してやる」ということ。実は、やってみたことの中に「やりたいこと」やこれまで気づかなかった「好き」が隠れているのかもしれない。

なるほどー。そう言ってもらうと、現時点で「自分はこれだ!」という確固たるものがなくても、ちょっと気が楽になりますね。

「好き」に本気を出すための、グラフィックカタリスト・ビオトープ

タムカイ:さらに言うと自分が色々行動してきて確信したのが「人って好きなことをやってる時に一番パフォーマンスが上がる」ということです。これって言ってしまえば当たり前なんだけど、すごく軽視されていると思うんです。特定の会社をdisるわけではないですが、なんとなく機械的に人を配置して「これをやれ」というのをもう何度も見てきました。でもそれでパフォーマンスなんて上がるわけないんですよ。

好きじゃないからパフォーマンスが上がらない、パフォーマンスが上がらないから結果が出にくい、結果が出にくいから「これをやりたい!」と強く言えない。強く言えないから、好きじゃないことをやらされ…とどまることを知らない悪循環です。

武田:さすが、デザイナー。ズバッと斬りこんできましたね(笑)でもこの話は、大小関係なくいろんな企業や組織にありそうな話ですね。僕も昔、人材育成の仕事をしていた時に、その負のスパイラルはよく目にしました。でも、そういう状況を何とかしようとされている人たちも少なからずいる、ということだけはフォローしておきますね(笑)

タムカイ:ありがとうございます(笑)という、いわゆる会社組織の「当り前」に対して、アンチテーゼ的に存在しているのが「グラフィックカタリスト・ビオトープ」なんです。もちろん元々は大規模案件に対応するためのチームでしたし、周りの人たちからは「グラフィックレコーディングのチームでしょ」と思われていますが、僕は違う想いを持っています。

まず、メンバーは「描くことが好き」というのがなによりの条件です。あと、これは言い方に気を付けなければいけないのですが、加入メンバーはチームみんなでものすごくえり好みしてます。つまり「この人とだったら楽しく仕事ができる!」という人しかいません。でも決して馴れ合いではなく、緊張感があったり、いい刺激を与えあえるメンバーだと信じています。


▲タムカイさんとGCBのメンバー

武田:あとタムカイさんがいつも言ってて、興味深いのが 「僕はリーダーではない。発起人兼目立ち担当だ(笑)」っていうこと。普通、会社組織だと意思決定を行うリーダーがいて、その下にメンバーがいるというのが当たり前。GCBは、それに対して明確に「違う」と言い続けているのが印象的です。

タムカイ:これで僕がいわゆる"リーダー"になってしまうと、普段の会社と何も変わらなくなってしまいますからね。一人のリーダーよりも、みんなが意思を持って自立した存在として「リーダーシップ」を発揮することがいい組織だと常々考えていて、それを実証したくて試してみている感じです。僕が言うのもなんですが、実際みんなすごく生き生きしてると思うんですよね。

あとは「好きを仕事にする」と言葉で言うのは簡単だけど、実際やろうと思ってもどうしていいか分からない人がほとんど。なので、僕の手の届く範囲から実際にやってみているというのがこのGCBになります。僕は色んな回り道をして5年くらいかけてここに辿りつきました。でも、その経験があるからこそ、メンバーに対してショートカットを提示できるとも思っているんです。

武田:GCBってそこがすごくいいですよね。さっきGCBメンバーの話が出ましたけど、仕事をしてるのに本気で好きなことをやってるから、いわゆる「仕事をしてる」って感覚がほとんどない。でも、好きなことに本気で取り組むから結果はばっちり出ていて、周りからの評価もめちゃくちゃ高い。

タムカイ:そうなんです。そしてGCBで結果を出して成長することが、いわゆる本業にもいい影響を与えているという話を聞いて、狙い通りだなって思っています(笑)

武田:特に今はお客様からの新事業開発の相談などを受けるのが増えてきていて、明確に定まっていないお客様の想いや方向性をまとめてくれるグラフィックカタリストは引っ張りだこですからね。

「好き」と「仕事」をつなげていくためのアドバイス

武田:でも、この記事を読んでる人の周りにはタムカイさんみたいな人はいないかもしれないし、GCBみたいなつながりもないかもしれない。そういう人はどうすればいいと思いますか?

タムカイ:最近色んな所で「これから副業・複業を考えてる人にアドバイスを」と聞かれることが多いのですが、そういう時には次の3つを伝えています。

1.とりあえず今自分自身がいる環境で本気を出す
2.自分の好きと向き合い、やってみて、発信する
3.普段とは違うつながりに身を置いて自分に違う光を当てる

タムカイ:順番に説明しますね。

1.とりあえず今自分自身がいる環境で本気を出す。

タムカイ:繰り返しになりますが、何はなくともいま自分がいる環境で本気を出して結果を出すこと。これがスタートだと思います。結果というのは必ずしも「成功」でなく、行動したことで生まれるものを指します。

今自分がいる環境というのは、自分自身の選択の結果でしかありません。そこで本気が出せないなら、副業や複業に手を出しても決してうまくいかないと思います。

もし、今いる環境がどうしても自分の意に沿わないものなら…本気でそこから飛び出すという選択も、行動の一つになると思います。

2.自分の好きと向き合い、やってみて、発信する

タムカイ:お金が必要で副業や複業をしたいというのなら別ですが、多くの人は「好きを仕事にする」ということが気になっていると思います。であれば、まずは仕事ということを抜きにして、自分の「好き」と向き合って何かを始めてみることがスタートかなと思います。そして始めてみたことを発信して人に伝えることです。

今であればブログ、Twitter、Facebookなどを使うこともできますし、ネットにアップするのがはばかられるなら、直接周りの人に伝えるのでもいいでしょう。これだと「ウチは副業禁止なんで…」という方でもできるはずです。その「好き」が人に届いた時、なにかしらのリクエストが返ってくることがあります。

僕の場合であれば、ネットやブログに上げていたラクガキを見て、知人が何気なく言った「楽しく絵を描いてみたいな」が全てのスタートでした。リクエストが来たら…そう、本気です。

実は今回インタビュアーに武田さんをお願いしたのも「GCBメンバーの中で、編集に興味があって編集の学校に通っている」というのを僕が知っていたからなんですよね。

3.普段とは違うつながりに身を置いて自分に違う光を当てる

タムカイ:2とも関連するのですが、自分の「好き」に興味を持ってくれるのは、案外今あるつながりの外側だったりするものです。僕の場合でいうと、デザインの会社で絵を描いていても誰も褒めてくれなかったんです。それはこの環境では当たり前のことだったというのが理由ですし、なんならもっと絵が上手な人だっています。

でも、僕の場合はブログをきっかけにして会社の外のつながりができて、そこで出会った知人が僕にきっかけをくれました。いつものつながりというのは安定していて楽ですが、もし何か一歩を踏み出したいと思っているのであれば、是非普段とは違うつながりに身を置いてみてください。今でも僕自身、意識して知り合いのほとんどいないところに飛び込んでみるというのをやっています。

武田:なるほど。今いる環境から始められるという意味でも、とても参考になる話でした。2の「好きなことと向き合い、やってみて発信する」って特に大事なんじゃないかなって僕自身強く思います。実はこれが続かない場合、思ったほど好きじゃなかったんじゃないかなーって(笑)

僕自身、昔から雑誌や本が好きで買って読むだけじゃなく、人に会いに行って話を聴いたり、書いたりするのも好きだった。で、もっとうまくなりたいし、編集ってもっと奥が深そうだなーっと思ったんで学校へ行ってみた。勉強した内容が面白かったので時々Facebookなんかに感想を書いてたんだけど、タムカイさん見てくれてたんだ(笑)

ちなみに、僕自身はGCBにおいて、グラフィックレコーディングという役割では人前に立たない。仕事の打合せなどでは絵やスケッチを描いていてるけど、さて、グラフィックレコーディングをしないとなるとGCBメンバーとはどう関わるのがいいのかな?なんて考えることもあって。そんな中、自分の好きな「編集・ライティング」という分野でリクエストをもらえたのは、ちょっと驚きでした。なるほど、こういうかかわり方があってもいいのか!って嬉しかったです。

グラフィックカタリスト・タムラカイの次なるチャレンジ

タムカイ:実はこれが僕の次の挑戦で。グラフィック・カタリスト・ビオトープは文字通りグラフィックをきっかけに集まりましたが、別にグラフィックにこだわる必要もないなと思っているんです。

武田:というと?

タムカイ:編集やライティングが好きな人がいれば、それを活かせばよくて。こういった寄稿記事の執筆や、実は裏で進行中のプロジェクトをメディア化するのを武田さんにお願いしたいなと思っていて(笑)

武田:まじで?初めて聞いた(笑)でも、常日頃、タムカイさんは「漢字」そのものがグラフィックだって言ってるもんね。言葉でかくグラフィックがあってもいいよね。

タムカイ:他にも生け花の師範代の免許を持ってるメンバーがいて、彼女のワークショップがものすごく楽しかったので、これをもっと多くの人に体験してもらうのはおもしろそうだなと考えていたり、GCB外の人でも「好き」が見えてる人にお仕事をお願いしたり。

武田:おー、「好き」がつながって、活動に広がりがでてきたぞ。グラフィックなのにグラフィックにこだわらないと言えちゃうところも、GCBの良さなのかも。じゃあ、最後にタムカイさんからご自身の今後に向けて一言お願いします。

タムカイ:そうですね、文字通り色んな人の「好きを仕事にする」ことのお手伝い。これを、まずは僕の手の届く範囲からできたらなーと思っています。その裏で、自分はまた行き当たりばったりで楽しいことを探して行きたいと思っています。なんかもう、そんな風にしか生きられなくなっちゃいましたので(笑)

武田:いやー、なんかすごくタムカイさんらしいですね(笑)グラフィックはこれまでどおり武器としつつ、よりカタリスト(触媒)となる活動にも力をいれていくと。やると決めたら本気のタムカイさん、今後も楽しみですね。今日は本当にありがとうございました!

インタビューを終えて

大企業において、Webデザイナーとしてキャリアをスタートさせたタムラカイ。望まぬ部署移動にもかかわらず、その環境で自分ができることに本気で取り組む。その一方、異動をきっかけに自分の「好き」に向き合い、ブログなどで少しずつ自身の取り組みを発信する。与えられた環境での本気が、新しい可能性を引き寄せる。きっかけを見つけ、やると決めたら、あとはトコトン。今回のインタビューをとおして、「行き当たりばったりかも」という本人の言葉の裏にはデザイナー・タムラカイなりの「好き」と「こだわり」が見え隠れしていた。

「あれはタムカイさんだからできることだよね?」という声が多いのもよく知っている。それはそうだろう。彼が積み上げてきたものなのだから。だけど、私たち一人ひとりには私なりの「好き」や「こだわり」、「積み重ね」があるはずだ。彼のアドバイスは至ってシンプル。自分が選んだ場所で本気を出し、好きと向き合い・やって・発信、普段とは違う場所に身を置いてみる。「好きを仕事に」というのは、そのような実験的で探索的なアプローチと、ちょっとの勇気から生まれてくるのかもしれない。

記事執筆:武田英裕
写真:むねさだよしろう