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“待機児童問題” 解決の糸口って結局、どこ?【区長に聞いてみた 編】

“待機児童問題” 解決の糸口って結局、どこ?【区長に聞いてみた 編】

“待機児童問題” 解決の糸口って結局、どこ?【区長に聞いてみた 編】

・・・ある日のFledge編集部・・・

パパライター薗部:うーむ…。1月に入り「保育園に入れない」ツイートが引き続き多発していますね。。

女性の働き方ライター モカ:そうですね。2016年には「保育園落ちた日本死ね」という匿名ブログも話題になりましたよね 。

薗部:保育園の定員に対して入園希望者が多く、子どもを預けられずに復職できない女性の悩みはますます深刻さを増しているみたいですね…。 待機児童が一番多い場所って一体どこなんでしょう?

モカ:厚生労働省の2017年4月の発表によると、世田谷区の861人が一番多かったみたいです。
(参考:「保育所等関連状況取りまとめ(平成 29 年4月1日)」)

薗部:待機児童問題解決の糸口を探るためには、世田谷区長に話を聞くのが一番早そうですね…。 そうと決まったら、いざ世田谷区役所へ!

モカ:はい!

…ということで、Fledge編集部では今日から

「“待機児童問題” 解決の糸口って結局、どこ?」

連載をスタート。行政、民間、ママの三者の視点で、待機児童問題の根本、そして女性が活躍できる社会は一体どんなものなのかを紐解きます。

第一回目となる今回は、「行政の視点」。
世田谷区区長である保坂展人氏に、保育対策や女性が働きやすい社会を作るにはどうすればよいかなどをお伺いしました。

保坂 展人(ほさか のぶと)

宮城県仙台市生まれ。教育問題などを中心にジャーナリストとして活躍し、1996年から2009年まで(2003年から2005年を除く)衆議院議員を3期11年務める。2009年10月から2010年3月まで総務省顧問。2011年4月より世田谷区長(現在2期目)。 著書:「相模原事件とヘイトクライム」(岩波ブックレット)、「脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたのか?」(ロッキング・オン)、「88万人のコミュニティデザイン 希望の地図の描き方」(ほんの木)他

出生数は増加の一途 少子化が進む日本とは正反対の世田谷区

本日はよろしくお願いいたします。早速なんですが、政府は以前から「待機児童ゼロ」を掲げていますが、未だに解決していません。待機児童問題の根本は何だと思われますか?

保坂 展人区長(以下、保坂):社会モデルの変化だと思います。かつて女性は結婚や出産を機に退職して子育てに専念するケースが多かったですが、賃金の低下などから今は共働き世帯の数が専業主婦世帯を上回っています。日本人の年収は1996年~97年を境に下落を続け、夫の収入だけでは生活が心許ないため、妻も働くようになったのです。

女性が外で仕事をしようとすれば、子どもを保育園に預ける必要があります。しかし都市部を中心に、高まる需要に対して受け皿となる園の数が不足しているという状況が起こっています。

他には、保育園に対する保護者の意識が変わったことも挙げられます。以前は保育園に通う子どもに対して「何か事情があるのでしょうね」という目が向けられることがありました。しかし今ではそうした考えが薄れ、こぞって預けたいと思うようになった。周りで保育園に預ける子どもを見て、「それでは自分も」と預けたくなっていく。潜在需要を掘り起こしたことも一因でしょう

なるほど、社会モデルと保護者の意識変化が大きな要因となっているんですね。世田谷区の今の状況をお教えいただけませんでしょうか?

保坂:世田谷区で毎年生まれてくる子どもの数を見ると、10年前は約6,000人であったのに対して、2017年現在は約8,000人に増えています。日本は少子化が進んでいますが、当区では真逆の状況にあります。

出生数が増えれば、保育園入園希望者も当然ながら増加します。世田谷区の認可保育園への入園申込み件数を見ると、2010年度は約3,900件なのに対して、2017年度は約6,700件と、2倍近くに増加しています。

認可保育園の保育料は親の収入に応じて変わるので比較的安いですが、認可外保育園では保育料が認可の2倍ほどになることもあり、家計には負担です。親が子どもを認可保育園に入れたいと思うのは当然ですね。

待機児童の発表は自治体のメンツのためではない 保護者を惑わす情報に意味はない

世田谷区長、保坂展人氏1

世田谷区では出生数が増加しているほか、待機児童数は全国の自治体で最も多い状況にあります。世田谷区が保育園を整えるための最短ルートは何だと思われますか?

保坂:後ほど詳しくお話しますが、待機児童数が全国で一番多いというのは数字のトリックです。区としては、可能な限り保育園を作っています。実際、この6年間で約80園を増設し、定員は6600人ほど増やしました。こうした取り組みの結果、2017年度は3歳以上の待機児童はゼロとなりました。

また、ただ増やせばいいというわけではなく、必要な場所に作ることが大切です。今後も特に必要とされる0~2歳の低年齢児の受け皿となる小規模保育園を、場所を選んで作っていきます。2018年春には認可保育園を29か所増設し、1400人の定員増を予定しています。

先ほど数字のトリックと話されていましたが、どのような意味でしょうか?

保坂:一言で言えば、上げ底弁当ですね。「待機児童ゼロ」を発表する自治体がありますが、果たして実情を反映しているか疑問です。待機児童の定義は自治体によって異なるためです。(編注:両親が育児休業中の場合は待機児童に含めないなど)。

ゼロを謳っても、別の基準で見るとそうでないことがある。最近では横浜市の待機児童数が新定義で増えましたね。「待機児童数は自治体のメンツのために出しているのではないか」というのは重要な視点です。当区では待機児童の定義や発表は保護者目線で行い、なるべく実像に近い数値を出したいと考えていました。保護者を惑わしたくなかったからです。

保護者の中には待機児童ゼロの情報を信じて引っ越しをしたにもかかわらず、保育園に入れず「こんなはずじゃなかった」と思った人がいるかもしれません。待機児童数は自治体にとっては悪い情報でも、保護者にとっては良い情報なのです。正直に発表するのが筋なのです。

待機児童が問題になっているのに、メートル法と尺貫法で出した数字を一覧表で発表する厚生労働省のやり方はおかしいと思い、対策を求めました。こうした訴えかけの結果、待機児童の定義は2018年度から全国で統一されます。

保育園を整備する以外の対策はお考えでしょうか?

保坂:もちろんあります。保育園を作ることは大切ですが、無限に増やし続けることは不可能です。場所については民間で貸してくれる人がいるのでクリアできる部分はありますが、保育園整備だけに予算を割くことは現実的ではありません。

世田谷区の一般会計予算の約3000億円のうち、約460億円が保育園の整備と運営に充てられています。このままだと将来的には約500億円に達する見込みです。しかし介護や道路整備などにも予算を割くので、保育園関係に使えるお金には限界はあります。

自営業やフリーランスの人だと、週に3~4回や1日4時間ほど預けて集中して働きたいというニーズもあります。現在も一時預かりはありますが、枠がすぐに埋まってしまうので先の予定が立てにくく、使い勝手が悪い。そこで私が考えているのが、コワーキングスペースやシェアオフィスなどと託児保育をセットにして、ママたちがそこで子どもを預けながら働けるような場所を整備することです。

区が昨年8月に区民や区で働く従業員を対象に実施したアンケートでは、区民・従業員ともに「サテライトオフィス」や「在宅勤務」を希望する人が増えていました。そこで世田谷区では、コワーキングスペースなどを使った働き方ができる制度設計を進めています。

仕事を取るか、育児を取るかという考えはナンセンス

世田谷区長、保坂展人氏2

子育てをしながら働く女性が増えるためには、今後どのような制度を整える必要があるとお考えですか?

保坂:国が抜本的に政策を変えるのであれば、保育園は全入化して、4歳からはプレスクールにして義務化すればいいと思っています。フランスのように保育にも幼児教育の要素を入れてしまうのもありでしょう。

また、パパの意識を変える必要もあると思います。外で仕事だけしていればいいわけではない。育児を一緒にするという考えになることが大切です。先にお話したコワーキングスペースには、ママではなくパパが来てもいいんですよ。男性は奥さんの産後ある程度の時間が立つと、育児を「手伝う」という感覚が出てしまうそうです。そうではなくて、パパが中心となって子育てをしてもいいし、するべきでしょう。昨年1月には区役所職員に対して、子どもが生まれたら2週間の「パパになる休暇」を取るように伝えています。

世田谷区では夫婦で勤務している人が結構います。そこで私は、例えば月水金はパパ、火木はママという風に「ワークシェアリング」ができないかと思っています。よく、「仕事を取るか育児を取るか」という考えになりがちですが、両方取ればいいと思っているんです。

子育てをしながら働く女性が増えていくためには、企業はどのような行動をとるべきだとお考えでしょうか?

保坂:育休の2年までの延長が要望されていますが、当事者であるママたちからは「2年も職場から離れられない」と不評です。そこで1年間の育休明け時点で、託児機能付きのコワーキングスペースなどで短時間仕事をするなど、配慮された働き方をしたらいいのではないかと思います。

前述の区のアンケート調査でも、子育て中の区民・従業員のおよそ4人に1人は月間の労働時間は「120時間~160時間が理想」と答えています。働く時間に柔軟性を持たせることは大切だと思います。

また企業としては、保育園に預けた子どもが熱を出した時、お迎えに行く子育て中の社員に協力するといった「子育て・育児配慮義務」をやるべきだと思いますね。そのような配慮がなければ、育児中の社員が長期間雇用されるのは難しくなります。そこは企業が変わっていく必要があるでしょう。

また現在はテレワークが注目されていますが、業種によっては難しいケースもあるのも事実です。なので保育を利用したい時に使えて、勤務時間を短時間や柔軟性を持てたりするなど、新しい社会の形を提示していかないといけません。世田谷区では待機児童の定義に問題提起したように、制度設計をすれば広がっていくという立場にあります。区をよくするだけでなく、様々な人の声に耳を傾けながら、保育園の問題や女性の働きやすさに取り組んでいきたいと考えています。

貴重なお話ありがとうございました!

取材を終えて

薗部:行政の首長として、待機児童問題に正面から向き合い、改善に向けて力強く行動される保坂区長。保育園に子どもを預けられるかどうかもそうですが、働き方の変化なしには育児をするのが難しいのが現状です。 ともすれば、「子どもを持つことが損である」となりかねません。僕も0歳児の親として、待機児童問題や親の働き方についてより関心を深めた取材となりました。

モカ:新しい時代に合わせた女性支援をものすごく考えている世田谷区。時代の変化に合わせて柔軟に制度を変えようとしている姿が印象的でした!
「数字を正しく見せる」という保坂区長の向き合い方に、待機児童問題解決の糸口が掴めたような気がします。

さて、「“待機児童問題” 解決の糸口って結局、どこ?」連載 第2回目は「企業編」。保育園が足りない状態で、企業がするべきことって一体…?ベビーシッター関連企業の「株式会社キッズライン」にお話を伺いました。
1月25日公開をお楽しみに!