静かに、けれど確実に社員の内面を変えた。シックス・アパート「SAWS(サウス)」の効果

静かに、けれど確実に社員の内面を変えた。シックス・アパート「SAWS(サウス)」の効果

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今回、企業インタビューとしてお話を伺ったのは、CMSプラットフォームMovable Typeを提供していることで知られているシックス・アパート株式会社

実はこのシックス・アパートさん、以前にこちらの記事でも紹介したように、2011年の東日本大震災を機に、節電と新しい働き方の実験を兼ねて「夏季期間中(7~9月)の毎週水曜日はオフィス以外の自由な場での勤務を推奨する」という制度を試験的に導入しています。

その後、5年間で蓄積してきたノウハウを活かし、2016年8月8日からは「Six Apart(SA)らしい、Working Style(WS)を実践する」という想いを込めた「SAWS(サウス)」という新しい働き方に関する取り組みを開始しています。

今回はそんな「新しい働き方」の先駆者ともいえるシックス・アパートさんに、「SAWS」を導入した狙いや効果、社員の働き方に対するアツい想いをじっくりと伺ってきました!

第1回
静かに、けれど確実に社員の内面を変えた。シックス・アパート「SAWS(サウス)」の効果
第2回
長野からのリモートワークに、ドローンの副業。SAWS(サウス)が与えた選択肢 ── シックス・アパート

作村 裕史(さくむら ひろふみ):クラウド事業開発 シニアコンサルタント

2011年より、事業開発担当としてシックス・アパート株式会社に勤務。現在は、経営企画も兼務。東京生まれ。社会人としてのほとんどの時間を横浜/鎌倉で幸せに過ごす。一児の父。好きな言葉は「合理的な非常識」。2016年夏、リモートワーカーとして働き始める。自らを実験台にリモートワークに関する様々なアイデアに挑む。

リモートワークだけじゃない!シックス・アパートの働き方の取り組み

── シックス・アパートさんは、2016年の8月8日に現在の神保町へオフィスを移転したと同時に、全社員を対象に「リモートワーク」を導入したと伺いしました。この理由と詳細について教えていただけますか?

作村裕史(以下、作村):オフィス移転前の試行錯誤の期間を経て、リモートワークという働き方は、シックス・アパートの社員にとって様々なメリットがあるということに気づいたんです。

自分が働きやすい環境を選んで業務に集中できる時間を確保できること、通勤に掛かる時間を減らして家族との時間を増やせること、それによって業務効率や日々の生活に対する満足度が大きく向上しました。


▲オフィス移転前/移転後の社内風景(必要最低限の設備に止めよりコンパクトなスペースになっています)

ただ、「SAWS」についてはリモートワークに関する内容が取り上げられることが多いんですが、実は特に項目や範囲を絞っていないんです。例えば「副業」だって基本的にはリモートワークでやることになると思うので、結局はどれも繋がってくる話だと考えています。

「SAWS」のリモートワークに関する主な取り組み
・赤坂から神保町へ、よりコンパクトなオフィスに移転
・新オフィスには、アドミンチーム以外のメンバーの固定席はなし
・全社員はオフィスに出社して働いてもよし、出社せずに好きな場所で働いてもよし
・交通費の代わりに一定の「自宅勤務手当」を支給
(コワーキングスペースの使用料や、自宅設備への投資に使ってもOK)
・完全リモートワークに対応した就業規則の変更 など


── つまり「リモートワーク」や「副業」に限った話というわけではなく、シックス・アパートさんの働き方に関する取り組み全体を「SAWS」と位置づけていると。

作村:そうですね。さらに、もっと根本的なところでいうと、最近ではブラック企業や長時間労働といった問題がありますが、日本のことをあまり知らない外国人の方にその話をしたとしたら、「働いている時間が長いんだって?へー。じゃあ残業代がいっぱいもらえてハッピーだね!」って思うはずなんですよ。

でも現実には残業代の不払いの問題があったり、もっと複雑で深刻な状況になっている。何でこんなに働いているのにハッピーになっていないのか?という点に対して、本当はもっと突き詰めて考えるべきなんですね。

── 確かに…。働き方に関しては、もっと根本的な所から考え直すべきだと。

作村:似たような話としては、学生時代の「英語の学習」があります。私たちは、中学・高校と6年間もマジメに英語を勉強しているのにも関わらず、ほとんどの人が喋れるようになっていません。

この現状に対して、教育の分野では2020年に向けて、きちんと英語を話せるようにするために、学習内容を根本的な部分から変えようとしているようです。

私たちの働き方に関する取り組みも同じで、「根本的にやり方が間違ってるんじゃないの?」というある種の「現状否定」からスタートしているんですね。

「メーカーであること」「明確なゴールを定めていないこと」働き方改革を続けられる2つの理由

── なるほど。確かに現状の働き方というと、多くの企業が課題を感じている一方で、「働き方改革なんてやってる場合じゃない!」というような会社が圧倒的に多いと思うんです。そういった会社と先進的な取り組みをされているシックス・アパートさんとは何が違うと思いますか?

作村:それには2つ理由があると思っていて、1つ目はシックス・アパートが「メーカーである」ということですね。

お客様側の個別の事情に経営が左右されることが少ない業態ではあるので、基本的には自分たち主導で仕事をしています。働き方に関しても自分たちで決めやすい部分はあると思っています。だからこそ、私たちが先頭を切って取り組み、発信していかないといけない立場にあるという認識を強く持っています。

2つ目の理由としては、SAWS自体にあまり「明確なゴールを定めていない」という点です。

さきほどのリモートワークに関しても結果的に今そうなっているだけで、別にリモートワークをやりたいからやっているというわけではないんです。副業の話もそうですが、「みんなで副業を始めて色んな経験を積んでいこう!」なんて社内で一言も言われたことないですしね。

「手段」や「意識」は二の次で、重要なのは「メカニズム(仕組み)」です。この「メカニズム」に関しては、可能な限り私たちが取り組んできたノウハウを汎用化して、今度は違う会社・業界でも通用するノウハウにしていきたいと考えています。

より多くの企業にこういった取り組みを広げていきたいですし、私たちとしても「先進的な働き方をしている企業」としての認知度を高めていきたいという想いがあります。

そういう意味でも、最初からこうしようって決めてしまうと、うちの会社、あるいは同じ業界でしか使えない内容になってしまいますので、あえて明確に対象や答えを出さないことにしているんです。


▲3つの思い(SAWS - Six Apartらしいワーキングスタイルより)

SAWS導入後に表れた社員の内面的な変化

── 御社が働き方に関してどのように考えているのかが伝わってきました。それでは具体的にSAWSを導入する前後で、どのような変化があったのか教えていただけますか?

作村:実はですね。SAWS導入以前からリモートワークを中心に少しずつ取り組んできたというのもあって、いい意味で「何も変わっていない」と思っているんです。

── ん…?そうなんですね!?

作村:はい。もともと朝早く会社に来たり、夜遅くまで会社に残って仕事をしているということを全く評価しない会社なので、それがリモートワークになったところで評価の軸は何も変わりません。

最初の頃こそ、Slackで「仕事始めます!」「終わります!」みたいなやり取りもあったんですが、段々とそのやり取りも減ってきたので、働いている姿では評価しないよというのが自然と浸透してきたのかなと思っています。

── 先ほどサラっとおっしゃいましたが、「出社が前提」から「リモートワークが前提」に働き方が変化したにも関わらず、社内では特に大きな変化がないというのは凄いなと思ってしまいます…。

作村:確かに、目に見える部分での変化は「ない」とお伝えしましたが、社員の内面の部分では確実に変化が起きているはずなんです

というのも、以前は朝会社に出社して、夜まで仕事をすることでどこか安心できる部分があったと思うんですね。「◯◯さん頑張ってるね!」という評判が社内や上層部に伝わっているのも何となくわかるので、経営者や上司の目の届く範囲で頑張ってる姿を見せていれば一定の評価を得ることができる…。

一転して、そういったものがなくなった時、果たして自分がどう評価されるのかという不安は誰しも内面に生まれていたはずなんですよね。

── それ、私もリモートに切り替えた身なので凄くわかります(笑)

作村:でも、これはもう慣れるしかない(笑)ある意味、ここの部分の変化が本当の「働き方改革」なんじゃないかと思っています。

企業としてというよりも、社員一人ひとりが心を入れ替えて「本当の意味での成果主義」に変わっていく時期に、もう差し掛かっているんじゃないでしょうか。

社内を意味もなく小走りするような「働いているふり」が評価されるようなことは、今後100%あり得ないので(笑)色々とプレッシャーが高まった部分はあるんですが、でもその分、私自身も以前よりずっと動きやすくなったと感じていますし、それが本来の健全な姿だと思うんですよね。

仕事としてやっている以上は“勤勉な社員”であることは重要ではなくて、何らかの形で事業に貢献していること、またそのために活動することの方が大事ではないでしょうか。

── 今までの「働きぶり」を評価していた時代から、一気に完全な「成果主義」へと切り替わるとどこかギャップというか、ドライなんじゃないかという印象を与えかねないと思うんです。ただ、こういう文脈の中で「社員が自然と気づいてく」というのが一番健全で、あるべき姿と言えそうですね。そもそも仕事って、本来そういうことだよね?という。

作村:そうなんです。とはいえ、さきほど「本当の意味での成果主義」とお伝えしたように、私たちの会社は「0か100か」といった完全成果主義というわけではありません。誤って伝わって欲しくないので、極力「成果主義」という言葉は控えるようにしているんですが…(笑)

結果としてのアウトプットだけじゃなく、その過程も見られていますし、評価の仕方というのは、リモートワーク云々に関わらず、今後も社内で改善してくべき内容だと認識しています。

「新しい働き方」で活躍できる人の条件


▲取材側のリクエストにも笑顔で快く対応いただいた作村さん

── それでは最後に、シックス・アパートさんのような「新しい働き方」を実践されている企業だからこそ活躍できるという条件について教えてください。

作村:自分のやりたいことをまな板にして、世間のニーズをうまくさばけるような人はどこでも活躍できるでしょう。裏返して考えると、新しい働き方の台頭によって、これまで活躍できなかった、「はみ出し者」や「アウトロー」のような“特化型”の人たちが活躍できる時代になってくると思います。

次に、新しい働き方の環境でうまく活躍できない人も、これまた切り捨ててはいけないと思っています。私もどちらかというと「はみ出し者」なのでよくわかるんですが、特化型の人間は「これはできても、これは全然できない」という人たちなので、その人を手助けする人というのも重要な存在になってきます。

全員が「4番でエース」という人たちだけだったらチームは破綻してしまいます。なので、新しい働き方で活躍する人と、今までの働き方の方が力を発揮しやすい人が、きっとお互いにうまく支え合って価値を生み出していくような時代になるはずだと思っています。

おわりに

今、「リモートワーク」や「複業」を半ばなし崩し的に始める企業も少なくないですが、そこは以前から試行錯誤を繰り返して現在に至っているシックス・アパートさん!

表面的な部分や細かい枝葉の話に終始するのではなく、働き方の根本的な問題に対する分析や、本質的な制度設計に至るまで、鋭い洞察力と深い思考が積み重なってできているのだなと感じさせられました。

また今回のお話を伺う中で、実際に導入するか否かは別としても、「今、こんな制度を考えているんです!」「こんな仕組みってどうですかね?」と数え切れないほどのアイディアが出てきたのがとても印象的で驚きました!

また近々作村さんの口から新たに「革新的な取り組み」が発表されるのも時間の問題ですね。

さて、次回はそんな先進的な働き方を実践しているシックス・アパートさんで実際に働いている社員の方2名のお話を伺っています。

⇛ 長野からのリモートワークに、ドローンの副業。SAWS(サウス)が与えた選択肢 ── シックス・アパート

第1回
静かに、けれど確実に社員の内面を変えた。シックス・アパート「SAWS(サウス)」の効果
第2回
長野からのリモートワークに、ドローンの副業。SAWS(サウス)が与えた選択肢 ── シックス・アパート
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