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働き方の“OS”を変えるのが本当の働き方改革 ── ジャーナリスト・白河桃子

働き方の“OS”を変えるのが本当の働き方改革 ── ジャーナリスト・白河桃子

働き方の“OS”を変えるのが本当の働き方改革 ── ジャーナリスト・白河桃子

「働き方改革実現」は、今の日本の重要課題。

政府は働き方改革実現会議を発足し、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の導入などを目指し、2019年実現を目処に、実行計画をまとめています。

「働き方改革」連載第2弾である今回は、少子化ジャーナリスト・作家・相模女子大学客員教授、そして政府の働き方改革実現会議 有識者議員の白河桃子さんにお話を伺いました。

白河 桃子(しらかわ とうこ)

少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授。チーム育児チーム稼ぎの社会目指します。ライフキャリア、女性活躍、働き方改革などについて発信中。 著書に『御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社』 (PHP新書)、『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(毎日新聞出版)など。

新しいイノベーションは“古いOS”には乗らない

政府が主導する働き方改革の中でも、特に「長時間労働の削減」に力を入れて推進されています。その一番の理由は何なのでしょう。

白河 桃子(以下、白河):長時間労働を基本にした働き方が、もう今の時代には合わなくなっているからです。昔と今では仕事の“競い方”が大きく変わりました。昔は「時間をかければかけるほど良い」とする考え方がありました。いかに業務効率を上げるかというところに成果の重点を置いていたからです。

例えば、鉛筆を製造する会社があるとします。1時間に10本鉛筆を作る人と、14本作る人がいるとして「どちらの方が業務効率がいい?」と聞いたら、どうですか?

間違いなく14本の方ですよね?

白河:そうです。しかし現在は業務効率のような単純なところを競うのではなく、いかに「新しい付加価値があるもの」を生み出せるかという勝負になってきています。鉛筆を1時間に何本とか、そういうところでは測れなくなってきているんです。

それだけではなく、今までのように「時間をかければ良い」というようなビジネスモデルのままにしておくと、新しいイノベーションが入ってきても対応できません。

新しいイノベーションですか?

白河:ある運送会社の例で言うと、Amazonという新しいイノベーションが入ってきたとき、それを支えているのが加重労働やサービス残業のような日本の古い働き方だったんです。

そのままだと明らかに法律違反ですし、Amazonという新しいイノベーションが古いOSに乗らなかった分かりやすい例です。

今までは「徹夜も辞さず」のような体育会系の働き方をしていたとしても、時代が変わることで確実に加重労働になっていきます。全てのビジネスに、多かれ少なかれそういうことは起きていると思いますね。

「生産性」と「業務効率」は全くの別物

白河桃子▲ITmedia ビジネスオンラインから提供

長時間労働=生産性が上がることには繋がらないんですね。

白河:みなさん誤解しがちなんですが、生産性と業務効率改善は全くの別物です。業務効率改善というのは、無駄な仕事をやめて、効率を改善するというだけのこと。例えば、無駄な会議を削るだけでもだいぶ変わります。

しかし、生産性をあげるというのは、本当に儲かる仕組みとか、価値のある商品を生み出すということですよね。それには先ほども言ったように、イノベーションが必要になってきます。「業務効率改善」から「生産性をあげる」という部分に到達するまで、もう一山あるんです。

先ほどの鉛筆の例は、まさに業務効率だけのことですね。

白河:ビジネスモデルが古いと、どれだけ制度を入れても結局は頭打ちになってしまいます。現在のまま働き方改革をしても現場が疲弊するだけで止まってしまうなら、ビジネスモデル自体を変えなければいけないんですよ。

2000年前後くらいからサプリのWEB通販を始めている、ある老舗の企業があります。WEB通販は今では一般的ですが、当時はその先駆け的な存在でした。その会社は、それまでは営業が薬局などに出向いて直接売っていたんですけど、ダイレクト通販に移行してからは人件費が減り、ホームページなどwebマーケティングにお金をかけられるようになったんです。

始まりは「店頭で売れなくなったからダイレクト通販にしてみよう」という、どちらかというとマイナス向きな始まり方だったんですけど、危機感が功を制し、ビジネスモデルを変えたことにより成功した良い例です。

「根性論では成功しない」を体現する、働き方改革成功企業

「働き方改革」に取り組まれている企業の中で、特に印象的な事例について教えてください。

白河:大手食品メーカー、「味の素株式会社」の取り組みは驚きました。現在の社長である西井孝明さんが就任してからなのですが、現在7時間20分勤務で16時半退社という働き方をされています。さらに、これを限りなく7時間勤務に近づけようとしています。

所定労働時間が短くなりお給料自体は変わらないから賃上げになります。それに加えて、テレワークでどこでも仕事ができるので、16時半に退社したからといって仕事に支障が出るわけでもない。さらにコアタイムなしのスーパーフレックスや時間有給などが導入されています。これらを使うと、ほとんど時短を取らなくてもいいんです。

西井社長に「なんで皆さん16時半に帰るんですか?」と聞いたら「全員が帰れば、保育園にお迎えに行く人も後ろめたくなく働けるでしょ」と言っていました。

それはすごいですね!

白河:「お母さんとか、一部の人だけが特殊な働き方をするのはダメ。本当のダイバーシティは日本的な働き方では実現しない」とおっしゃっていて、ここまでやる社長って本当に珍しいなと思って私も驚きました(笑)

「働き方改革」が成功する会社は、他の会社と何が違うんでしょう?

白河:経営者の覚悟に現れているか否かなのではないかと思いますね。

単に「働き方改革しますよ」と号令をかけるだけではなく、現場の業務効率改善をうながす仕組み、最終的意は評価、報酬の再設計にまで及ぶのが本当の働き方改革です。上の人間から「この仕事は無駄だからやめよう」と声をかけたり、社長が取引先に「働き方改革のプロジェクトに協力してください」と伝えるのも大事ですね。

先ほど話に出た味の素さんも、働き方改革を実践する前に主要な取引先と面談をして、「なぜこんなことをしているのか」をしっかり説明して、ぜひ一緒にやっていきましょうくらいのお声がけをしているんですね。

取引先の巻き込みと成果報酬の再設計この二つが入ってない働き方改革はいずれ形骸化してしまいます。ただの根性論のようになってしまう。今、「働き方改革」の表面上のところだけをやっている企業が多いので、そういうところは失敗しますし、下手したら売り上げも落ちてしまいます。

日本の働き方改革は、世界で例がない事例

これまでの日本の働き方は、特にどのような点が問題だと思われますか?

白河:「人権」が全く配慮されていない点ですね。労働を考えたとき、海外では必ず人権が配慮されます。ヨーロッパでは特に顕著ですし、アメリカは労働組合が強い。その一方で、日本は人権というものがほとんど意識されないし、全く議論されません。

労働者が健康に生きる権利、しっかり寝る権利、プライベートライフを確保する権利。そういった権利に関して、全く配慮がない先進国って珍しいんですよね。いろんな国からヒアリングが来るほどです(笑)

それほど珍しいんですね…。

白河:あとは、「一度会社に入ったら一生養います。その代わり長時間労働も転勤も従ってください」という“無限定型メンバーシップ雇用”も日本特有のもの。そのため、人権を無視した働き方に繋がっていってしまったのではないかと思います。

しかし、そこで経済的な合理性がないなと思うのは、お金のもらえない普通のサラリーマンが過労死寸前まで働いてしまうこと。これは異常な状況で、お金と労働が全く見合っていないのです。フランスは35時間労働と言いつつも、エリート層はすごく働いていますし、それに見合ったお金をもらっています。

なるほど。白河さんは、今行われている働き方改革をどのように捉えられていますか?

白河:経営者にとっては経営課題であり、個人にとっても、自分の生き方を考え直すきっかけになる、そういうつもりで考えていただけたら良いなと思います。

働き方改革は、ビジネスモデル自体を変えたり評価制度まで手を加えないと本当の実現性のある改革にはなっていかないんです。生産性が悪い働き方やビジネスモデルを辞めて、本当のダイバーシティを目指す決意が現れるべきなのではないかと思いますね。

先ほども言いましたが、日本にイノベーションが入ってきたとして、それを支えられるOSではなくなっています。古いOSを変えよう、というのが「働き方改革」の本質だと思いますね。

ありがとうございました。

次回予告

今回は「働き方改革」の全体像について伺いました。全体像を捉えておくかそうでないかで、働き方改革への意識や取り組む姿勢は大きく変わって来ます。

後編では、「女性の仕事を犠牲にする家庭のあり方は、もう成り立たない」についてお届けします。

▼興味を持たれた方はこちらをどうぞ!

白河 桃子 著
御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社 (PHP新書)