働く女性の“メンタルヘルス対策“とは? ── たわらクリニック東京 後藤 牧子先生

働く女性の“メンタルヘルス対策“とは? ── たわらクリニック東京 後藤 牧子先生

働く女性の“メンタルヘルス対策“とは? ── たわらクリニック東京 後藤 牧子先生

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働く人がより自分らしく働くために一番必要と言っても過言ではないのは「健康」。そこで、企業への産業医サポートサービスを手掛ける株式会社エムステージとのコラボ企画を始動。同社から3人の産業医の先生をご紹介して頂き、「働く人の健康」についてインタビューを実施。

3人目の今回は、長年産業医を務め、現在は都内の心療内科・精神科のクリニックに勤務する後藤 牧子先生に「働く女性と健康」をテーマに、エムステージ広報の関矢 瑞季さんと共にお話を伺ってきました。
働く女性自身が、過労死や仕事が原因によるメンタルヘルスの不調を防ぐために気を付けるべきポイントは、何なのでしょうか?

第1回
仕事が原因で病気にかかりやすい人と病気にかかる3つの原因
第2回
国と企業、それぞれが取る労働者の健康対策とは?
第3回
企業が取るべきメンタルヘルス対策と産業医の活用事例 ── 産業医 山越 志保先生
第4回
“ある3つのコト”を改善すればメンタル不調が解決する!? ── 産業医 尾林 誉史先生
第5回
働く女性の“メンタルヘルス対策“とは? ── たわらクリニック東京 後藤 牧子先生

後藤 牧子(ごとう まきこ)

大分県出身。産業医科大学医学部卒。 産業医科大学付属 病院、九州労災病院、大手企業産業医等を経て、平成27年10月より、たわらクリニック東京勤務。

インタビュアー 関矢 瑞季(せきや みずき)

株式会社エムステージ 広報・人事担当。 慶應義塾大学を卒業後、子供服会社・出版社を経て現職。2017年6月に入社後広報部門の立ち上げを行い、10月より人事を兼任。医師の働き方から日本の医療問題、そして企業での健康的な働き方まで情報発信を行っている。

女性がメンタルヘルス不調を発症しやすいポイント

関矢 瑞季(以下、関矢):メンタルヘルス不調の原因は、男性と女性で違うのでしょうか。産業医として相談にのって来られた中で実感していることはありますか?

後藤 牧子先生(後藤先生):産業医として相談にのってきた経験をもとにお話しすると、相談内容に男女の差はそこまでありません。悩む内容は、男性も女性も大きく変わらないという印象です。

とは言え、女性がメンタルヘルス不調を発症しやすいポイントはあります。
以前に比べてキャリアを積んでいる女性が増えてきていますが、そういう女性は頑張り屋さんが多く、終電まで働くなど長時間労働を厭わない人が多い。でも、男性と比べると女性の方が体力的に不利なのです。ホルモン周期の問題が絡んでくるのも辛いところ。生理痛やPMS(月経前症候群) の辛さは、なかなか男性には共感できませんよね。

しかし、頑張り屋さんは大変な状況に陥っても、「○○さんは出来ているんだから、私ももっと頑張らなくちゃ」とか「ここで弱音を吐いたら、これまでのキャリアが台無しになるんじゃないか…」と、更に頑張ってしまいやすい。そして、結果的にメンタルヘルスの不調を招くのです。

関矢:ストレスチェックで判明した高ストレス者の面談でも、そうおっしゃる方が多いということでしょうか?

後藤先生:はい。高ストレス者という結果が出ていても、本人は「辛いと言うことは甘えなんじゃないか、もうちょっと頑張れるんじゃないか」と考えている人が多いですね。そういう人は「自分の限界がわからない」と言います。

うつ病になった時の男女の違い

関矢:2014年の厚生労働省の「患者調査」によると、気分障害の患者数は男性に比べて女性が約1.8倍という数値が出ています。しかし、2015年の厚生労働省の「自殺対策白書」では男性の自殺者数は、女性の2.2倍となっています。女性はうつになっても自殺しにくいのでしょうか?

後藤先生:一概には言えませんが、男性は一人で抱え込んでしまう傾向が強いのに対して、女性は友達など周囲の人に自分の気持ちを話すことが多いと感じます。そこで、自殺という最終的な選択を迫られる前に、何らかの解決手段を取れるのかもしれません。女性は、「おしゃべり」や「食べる」ことなどで、ストレス発散できる人が多いのも特徴でしょう。

一方で、「食べる」ストレス発散から過食嘔吐(※)などの摂食障害に繋がる人が多いとも感じています。男性ではほとんど見られませんが、女性の患者さんは非常に多い。摂食障害であることを告白できない人がたくさんいることを考えると、その数は相当だと思います。

(※)過食嘔吐とは…通常の量よりも明らかに多い食物を摂取し、自己誘発性嘔吐(指を口の中に突っ込んだり、水を大量に飲んで吐き出す等)をする行為のこと。

関矢:そのほかに、うつになったときの男女の違いはありますか?

後藤先生:うつになったとき、女性は「落ち込む」「不安」といった、自分の感情の変化で気づくことが多いのに対して、男性は「頭痛がする」「動悸がする」といった身体的な変化で気づくことが多いようです。
また、女性は、生理周期の乱れから身体やメンタルヘルスの不調に気づくことも多いですね。

女性がメンタルヘルス不調に陥るタイミング

関矢:女性は結婚・妊娠・出産・育児とライフイベントが多いですよね。そんな中でメンタルヘルス不調が増えやすいのはどのタイミングなのでしょうか?

後藤先生:育休(育児休業)後は立場も体力も変化していて戸惑う人が多いようです。育児中の働く女性は、「子育ても仕事も頑張る」という姿勢の人が多く、例えば知り合いの 時短勤務のママは、保育園に子どもを送ってから出社まで、そしてお迎えに行くときもずっと走っています。出産前と比べて、圧倒的に時間が足りない生活です。

そういうギリギリの生活をしていても、周囲から「時短勤務だから楽で良いよね。その分、私たちにしわ寄せが来ているのに」という目で見られることがあります。そうした孤独感はメンタルヘルス不調に繋がりやすいですね。
職場としては、日ごろから風通しを良くすることを心がけて「お互い様」の雰囲気をつくっておくことが、予防のひとつになるでしょう。

そのほかにも、育児休業後の一気に負荷が増した状況の中、パートナーや両親のバックアップ体制がないなどで孤独感が募ってくると「なんで私ばっかり」「誰にもわかってもらえない」という気持ちになり、そこからメンタルヘルスを崩すこともあります。
女性はライフイベントの影響を受けやすいので、環境が変わったときに負荷がかかっていないか、自分自身も周囲も気を付けたいですね。

関矢:メンタル不調が出やすい年代はありますか?

後藤先生:女性の場合、更年期の影響は大きいですね。早い人は、30代後半からさしかかると言われています。終わりは、だいたい50代前半です。
特に体調の分岐点となるのが、40歳頃。婦人科系疾患にかかる人も増えます。

都市部だと、40代は育児の真っ最中。しっかり稼ぎたい思いもあって管理職に就いたものの子どもの目が離せないなど、キャリアと育児のバランスがとりづらい年代でもあります。
昔の女性と比べると、今の働く女性は「やることが多い」と言えるでしょう。そこで、昔の常識にとらわれて、自分を責め過ぎないことが大切です。

また、これは男女問わず言えることですが、不規則な勤務体系の人は年齢を重ねるごとに、ライフサイクルの適応がどんどんストレスになってきます。昼に寝ることの難しさ、睡眠のリズムを変えることの難しさが顕著になるのです。50代以上で交代勤務をストレスなくこなせる人は珍しいのではないでしょうか。

メンタルヘルス不調に陥りにくい職場の特徴と働き方

関矢:働く女性がメンタルヘルスの不調に陥りやすい職場、陥りにくい職場の特徴はどんなものでしょうか?

後藤先生:男女限らず当てはまりますが、メンタルヘルス不調者が多い職場の特徴として「残業が多い」「有給休暇がとれない」といった過重労働の常態化が挙げられます。

女性にフォーカスして言えば、「育休を取りにくい」「マタハラ(マタニティハラスメント)がある」「セクハラ(セクシャルハラスメント)がある」職場は、メンタルヘルス不調者が出やすい傾向にあると言えるでしょう。こうしたハラスメントは上場企業でも聞く話ですが、どちらかというと中小企業で起きやすいと感じています。

反対に、育休を取りやすく、マタハラ等がない職場はメンタルヘルス不調者も出にくいでしょう。女性の経営者や役職者がいる企業は、企業自体がそうしたイメージづくりに積極的な場合が多く、比較的マタハラが起きにくいのではないでしょうか。
また、ロールモデルとなる存在があることで「私もああなりたい」「いや、私はもっとこうなりたい」と、働く女性としてビジョンを描けることも大きなメリットだと思います。

関矢:最近では働き方改革の影響で多くの企業が「副業解禁」を始めていますよね。このように働き方が自由になることでメンタルヘルス不調者は減ると思いますか?

後藤先生:人の悩みは尽きないので、悩みの種類が変わることはあっても、数が減ることはないのではないかと思います。むしろ、心療内科や精神科へのハードルが下がって来ている分、全体として患者数は増えるのではないかと考えています。
自由な働き方は、その分責任も伴いますから、職や収入に対する不安を抱える人が増えるかもしれません。

しかし、自分が心からやりたいことをすることは、メンタルヘルス不調の予防策として有効です。「やらされている」と思うことがうつに繋がりやすいので、同じように大変な仕事でも「自分で選んでこの仕事をしている」という意識があれば、うつにはなりにくいはずです。

関矢:嫌々仕事をしているのと、進んで仕事をしているのでは心の持ちようも変わってきますもんね。

メンタルヘルス不調の予防策

関矢:働く女性が心得ておきたいメンタルヘルス対策のポイントを教えてください。

後藤先生:まず、男女の身体の違いを受け入れることだと思います。特にPMS(月経前症候群)のように、生理前に身体の不調を感じる人は多いようです。身体が重くなったり、過食気味になったり、気分のムラが出たり…。
そういったことを「自分の甘え」と受け取るのではなく「自分の身体からのサイン」として受けとめることで、自分自身を必要以上に追い詰めなくなるのではないでしょうか。

また、男女問わず言えることですが、「切り替え上手」になることが大切かもしれません。気分転換を上手にできることですね。
そういう意味では、女性が好きな「自分にご褒美」は良い気分転換になるはずです。女性の場合、ケーキひとつや良い香りの入浴剤、いつもより良いランチなどでも、十分ご褒美になることが多いのですが、そうした日常の中での「ちょっと特別」を作ってあげることは大切です。

あとは、他人に対してどれだけ心をオープンにできるかも大事でしょう。本当に辛いときに「助けて」と言える、しなやかな強さがある人はうつに対しても強いですね。

関矢:貴重なお話ありがとうございました!

(文:松山あれい)

第1回
仕事が原因で病気にかかりやすい人と病気にかかる3つの原因
第2回
国と企業、それぞれが取る労働者の健康対策とは?
第3回
企業が取るべきメンタルヘルス対策と産業医の活用事例 ── 産業医 山越 志保先生
第4回
“ある3つのコト”を改善すればメンタル不調が解決する!? ── 産業医 尾林 誉史先生
第5回
働く女性の“メンタルヘルス対策“とは? ── たわらクリニック東京 後藤 牧子先生
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