<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=1176794389076832&ev=PageView&noscript=1" />

“ある3つのコト”を改善すればメンタル不調が解決する!? ── 産業医 尾林 誉史先生

“ある3つのコト”を改善すればメンタル不調が解決する!? ── 産業医 尾林 誉史先生

“ある3つのコト”を改善すればメンタル不調が解決する!? ── 産業医 尾林 誉史先生

長時間労働はどのようにして健康に害を及ぼすのか

産業医 尾林誉史

関矢:尾林先生が会社員だった時、長時間労働についてどうお考えでしたか?

尾林先生:当時は世の中的にも長時間働くことが当たり前で「長時間 = 悪」という認識はなかったんですよね。働いてなんぼみたいな時代でした(笑)
ただ、ちょうど潮目が変わりつつあって、うつ病が少しずつ言われ始めていた時期でもあったんですね。
その時期には僕自身、部下を抱えていたので少ない時間でも小まめに面談をして話を聞いてましたが、思い返してみると、3要素のどこかで不全感や納得のいかなさを感じていた人たちの悩みを聞いていたなと。仕事に対してストイックだったり、人間関係で悩んでいて胃が痛いと言っている人がいたり、みんな漏れなく長時間労働者でしたね。

関矢:ただ、中には「好きで長時間働いてるから働き方改革は迷惑だ!」って方もいらっしゃいますよね。

尾林先生:実は僕も月の残業時間が45時間超えたら長時間労働と見なす、ブラック企業!みたいな考えにはあまり賛成していません。仕事上どうしても忙しい時期はあると思うので、3ヵ月くらいのスパンで見た方がいいんじゃないかなと。例えば、「今月はめちゃめちゃ忙しいけど、乗り越えれば休みが待ってる!」とか。バランスが取れていることが大切だと思います。

ですが、長時間労働が続くのは良くないです。長時間労働を2~3ヵ月続けると身体症状が現れることがあります。

関矢:それは好きで長時間仕事をしていてもですか?

尾林先生:好きでしていても症状は出てきます。体調不良だけではなく、会社にいる時間が長いわりに仕事が進んでいない、いわゆる「思考制止」という状態、うつ病の一症状が出てきます。これが生産性を下げる原因でもあるんです。

本人にとっても症状が出るのは不快ですし、会社にとっても生産性が下がるので良いことはないですよね。調子が悪いなと思いながら長い時間働くより、一旦基礎体力を回復した方が働く人は仕事にしっかり向き合えるので、会社にとってもいいですよね。

好きで長時間労働をしている人が気を付けること

関矢:好きで長時間働いている人が体調を崩すところをたまに見かけるのですが、そういう人が身近にいた場合、どのように声をかければいいのでしょうか?

尾林先生:身近な人に「長時間働くのやめなよ」と言われても届きにくいんですよね。本来ならば、そういう時にこそ産業医や専門的な方に診てもらったほうが良いです。
医療やメンタルに対して専門的な人に、体に出ている症状が今後悪くなっていく可能性があると言われると納得されることが多いですよ。

ただ、産業医を導入されている企業さんばかりではないですし、診てもらう機会をつくらない方もいらっしゃると思います。その場合は、自分だけの問題ではなく周囲にも悪影響を及ぼす可能性があると理解してもらうことですね。あなたが万が一倒れて、その時に持っていた業務を周囲の人にスライドさせて、それが原因で大変になって、メンタルを崩す人が出てくるかもしれない。それは、結果みんなが不幸になり兼ねないですよと伝えることも大切ですね。

関矢:好きで長時間労働をしている人が周りの人を巻き込んでいるケースはありますもんね…。

尾林先生:一番厄介なのは、いくらでも働けてメンタルヘルスとは対極にいるような方が上職に立ってしまった時です。特に経営者の方は長時間労働でバリバリ仕事してきた方が多いと思いますが、メンタル問題で痛い目に遭っている方は物凄く理解が良いです。メンタル問題を放置したことで、訴訟を起こされてしまったとか、裏切られてしまったとか実際にあります。
人それぞれ許容できるキャパシティやストレス耐性も違うので、自分のやり方が全て正しいと周りに強制するのは危険です。上に立つ人ほど、特に意識した方がいいと思いますね。

メンタルヘルスケアで意識すべきこと

産業医 尾林誉史

関矢:最近では、長時間労働の問題やそれに伴ったメンタル問題などの改善のために働き方改革に取り組んでいますよね。この国の掲げている施策は、産業医の視点から見て本当に意味のあるものだと感じますか?

尾林先生:施策として及第点には達していないと思います。長時間労働だけで罰則を科すとか、ストレスチェックを行えばメンタルヘルスの予防になるとか、全部おかしいんです…。高ストレス者だと思われると面倒だから嘘をつく人もいるんじゃないかなと。
でも、何もやらないより、何か始めることで問題意識は高まります。メンタルヘルスに向き合っていく時代だと問題発起をしているという意味では悪くないと思います。
ただ、万全かと聞かれると全く持って万全ではないです。

関矢:今は未完成な部分はあるものの、今後さらに世の中が働く一人ひとりのメンタルと向き合っていくと思います。一方で産業医さんや、ストレスチェックを導入する余裕がないような会社もありますよね。

尾林先生:その場合は、企業と働く社員のみなさんの総力戦なんですよね。特に経営者や上職につくような立場の意識がすごく大事です。いくら働いても寝てなくても大丈夫な強い人でも、3要素が慢性化・蔓延化してしまうとメンタルを崩す場合もあります。

関矢:慢性化・蔓延化しないためには何から意識して取り組みを進めていけばいいのでしょうか?

尾林先生:3要素の中で一番メスを入れやすいのは「長時間労働」。定量化できるので「何時までに終わらせよう」と目標を明確にできますし意識しやすいです。
次に「働きがい」。仕事内容がミスマッチだと感じた場合、上職の方に相談できる環境なら、しっかり伝えることで改善できる可能性が高いです。
一番難しいのは「周囲の支援」ですね。特定の人とそりが合わない、相談しにくいなど、下手したら個人の好き嫌いの問題にもなりかねないので、非常に改善しづらいです。だからこそ、意識改革が非常に重要になってきます。円滑に業務を遂行していくのは、円滑な人間関係があってこそなので、「自分一人で仕事をしている」と思わないことが大切です。

関矢:働く一人ひとりが周りの人のことを考えて、相談しやすい環境や仕事が円滑に回るような環境を作るという意識を持つことが必要なんですね。

尾林先生:そうですね。バリバリ働ける強い人だけが生き残る市場原理は、もう古いですからね。そういう人が目立つ会社は、他の方たちに悪影響を及ぼしてしまって生産性も上がりません。それは結果、会社が沈み行ってしまうので、会社全体の環境、特に相談しやすいなどのソフト面を変えていくことが必要です。

例えば、身近に明らかにつらそうな方がいた場合、「最近しんどそうだけど、追い込まれてない?」「つらそうだけど無理してない?」と聞いてあげるだけでも意味のある行動だと思います。この一言で本当につらい人であれば男女問わずワッと泣き出してしまうこともあって…。話してみないと分からないことが多いので、色んな人をいかに巻き込むか、腹を割って話すかが重要ですね。

また、今置かれている環境や仕事内容がミスマッチだと感じても相談できないような環境なら、向いていない会社にしがみつくより、転職したり、一旦休職したり、別の選択肢を考えることも大切かもしれません。

関矢:自分が本当につらい時に、「これは甘えなのかな」と考えてしまい、人に相談すべきか分からなくなる時があると思います。
自分がどういう気持ちになった時に相談すればいいのか、判断基準をどこに定めればいいんですかね?

尾林先生:「甘えなのかな」と考えている時点で、予備軍の可能性が高いです。他者への配慮ができる人、責任感の強い人ほど、このような気持ちに至った時点で、黄色信号だと思っていいでしょう。周囲にアラームをあげるのが上手くない人が多いので、このような気持ちに気付いた時点で、判断基準を満たしていると思ってよいと考えます。

自分でもできるメンタルヘルスケア

関矢:最後に、働く人が自分自身でできるメンタルヘルスケアを教えてください!

尾林先生:体を動かすことは大事ですね!ストレッチするだけでもいいので。
ストレッチは筋弛緩法といって、自律神経を副交感神経優位(※)してくれます。なので、僕は毎日ストレッチポールで15分くらい肩甲骨を伸ばして音楽を聴きながらリラックスしたり、長時間座り仕事をしてる日には足首を回したりしてますね。

あと、認知行動療法といって、「ものの見方」を変えてストレスを極力減らすこともメンタルヘルスケアになります。
例えば、朝、廊下ですれ違った職場の人に「おはようございます」と声をかけて無視されてしまった時、関矢さんならどう感じますか?

(※)副交感神経優位とは…心身を休めて回復させる神経が優位であること。リラックスしている状態。

関矢:私が何か悪いことをしたんじゃないかと考えてしまいます…。

尾林先生:そういう方が多いですね。悲しくなったり、人によっては「無視されてムカつく!」と腹が立ったりする。このように、自己肯定感を下げたり、相手への陰性感情を抱くような考えをしてしまうとストレスが溜まってしまいます。

なので、認知行動療法的には「声かけちゃいけないタイミングだったかな」「聞こえなかったのかな」と思って終わらせるんです。これだけでもストレスが溜まらなくなります。気にしちゃいけないと思い込むところからスタートしますが、慣れてくると自動思考で回るようになります。
特に真面目な方ほど相手の言動や行動を気にしてしまいメンタルを崩されるので、職場での意見の相違などでも気にしない意識が大切ですね。

関矢:実践してみます!貴重なお話ありがとうございました。