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企業が取るべきメンタルヘルス対策と産業医の活用事例 ── 産業医 山越 志保先生

企業が取るべきメンタルヘルス対策と産業医の活用事例 ── 産業医 山越 志保先生

企業が取るべきメンタルヘルス対策と産業医の活用事例 ── 産業医 山越 志保先生

「産業医の上手な使い方」をご紹介

産業医 山越志保

関矢:「産業医を選任したものの、具体的に何をすれば良いのかわからない」という人事・労務担当者の悩みを耳にします。メンタルヘルス対策の足がかりとして、何をすれば良いのでしょうか?

山越先生:組織構成によって変わりますが、年代ごとにケアしておきたいポイントがあるので、傾向をご紹介します。

【50代以降】役職についている人が多いため「ハラスメントをしない」ための予防策を。「10年前、20年前には普通のことでも、今はハラスメント」になることはたくさんあります。

【30代~40代】プレイングマネージャーが多い年代。組織によっては、この年代の管理職に仕事が集中しやすいので、過重労働になっていないか確認します。特に、成績が良いチームほど、リーダーにもメンバーにも負荷がかかりやすいので、不調者がいないか注意して見た方が良いでしょう。

【20代】学生時代と違って、気の合う人だけといられるわけではないので、会社の人間関係のあり方について新入社員研修などでフォローしたいですね。

関矢:産業医を上手に活用している会社の事例があれば、ぜひ教えてください。

山越先生:大手企業の子会社の例をご紹介します。そちらは、一つひとつの事業場は50名に満たないので、本来ストレスチェックの義務はありません。
しかし、各拠点の方が狭い人間関係のため、かえってストレスを感じることも多いのではないかと考えて、全国の拠点でストレスチェックを行いました。そして、ストレスチェックの実施時期および面談時期だけ産業医と契約したのです。

ストレスチェックの結果、高ストレス者が出なければそこで終了。高ストレス者が出た場合は、すべての面談が終わるまで産業医との契約を続行するという、無駄のない体制です。産業医としても、非常に理にかなった方法だなと感じました。

産業医がいなくてもできるメンタルヘルス対策とは?

関矢:産業医の選任が義務付けられていない中小企業やベンチャー企業の人事・労務担当者は、メンタルヘルス対策を行う場合、どのような点に気を付ければ良いでしょうか?

山越先生:まず、人事・労務担当者が、メンタルヘルス対策に関する研修を受けるところから始めても良いかもしれません。
東京産業保健総合支援センターでは、人事・労務・衛生管理者向けにさまざまな研修を開催しています。労働安全衛生法に関するものから実践的職場復帰支援まで、会社のニーズや段階に合わせて、賢く利用してみてください。労働者健康安全機構でも、治療就労両立支援モデル事業の一環として「両立支援コーディネーター基礎研修」を実施しています。

また、人事・労務担当者として相談を受けているうちに、自分自身がメンタル不調に陥ってしまうことがあります。優しくて真面目な性格の人ほど、休職者や退職者が出た際に自分を責めやすいのです。そこで、人事・労務担当者自身も、ぜひメンタルセルフケアを取り入れて欲しいと思います。

関矢:メンタルヘルス対策の社内研修を行う場合、誰向けにどのような内容にすれば良いでしょうか?

山越先生:産業医を選任している、していないにかかわらず、「メンタルヘルス対策の要は上司」と言えるくらい管理職が果たす役割は大きいので、管理職研修がおすすめです。
ハラスメント防止のためのガイドラインの共有から、部下とのコミュニケーションのとり方まで、押さえておきたい内容は多岐にわたります。

最近では少なくなりましたが、中には「部下は、上司の背中を見て仕事を覚えるものだ」と考えている年配者もいます。そうした上司に対して、部下が相談したくてもできない状況になる前に、人事・労務担当者としては先にフォローしておきたいものです。

関矢:メンタルヘルス対策を行ううえで優秀な上司とはどんな上司なのでしょうか?

山越先生:マネジメント能力の高い上司は、部下のことをよく見ていると思います。まず、勤務時間。労働時間の長さは数字として確認できるので、過重労働になっていないか客観的に状況を把握できます。
また、遅刻や早退が増えるなど勤怠が乱れるのも、メンタル不調の兆候のひとつです。いつもと違う様子が見られたら、部下に「顔色が悪いけれど、何かあった?」など、声がけをするだけでも、部下は相談しやすくなります。産業医がいる会社でも、メンタル不調者の初期対応は上司が行うことが多いので、上司の力量によって、どうしてもその後の状況に差が出ることはありますね。

他にもメンタルヘルス対策の有効な手段の一つに「採用」があります。社風に合う人を採用することは、メンタルヘルス対策としても非常に重要です。大企業の場合は、拠点や部署によって雰囲気が変わりますが、社員数が少ない中小企業やベンチャー企業の場合は、社風に合う人を採用することが、円滑なコミュニケーションを生み、メンタル不調者を出しにくくすることに直結するのではないでしょうか。

関矢:採用の段階からメンタルヘルス対策を意識することも重要なんですね!
最近では働き方改革の影響でリモートワーク制度の導入を行う企業が多いですが、このように働き方の仕組みを変えることによって、メンタルヘルス不調者を減らすことはできるのでしょうか?

山越先生:リモートワークという選択肢が増えることは、社員にとって権利や自由が増えることなので良い面もありますが、一方でコミュニケーション不足になりやすい点が気にかかります。直接会って、顔色や声の調子なども含めた非言語コミュニケーションは、メンタルヘルス対策を行ううえでとても大切ですから。

しかし、社員が状況に合わせて選ぶことができる制度を揃えておくことは、メンタルヘルス対策として大きな意味があります
ライフイベントによって、今まで通りの生活が送れない時期に休職制度や時短勤務、育休、リモートワークなどの制度を活用すれば、キャリアに穴をあけずに済みます。社員が選べるオプションを増やすという視点で制度をつくると良いのではないでしょうか。

関矢:今からでも実践できそうな、ためになるお話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました!

 (文:松山あれい)