「オフィスにいる人をマイノリティに」──。リクルート・林宏昌さんが伝えるリモートワーク導入に必要なこと

「オフィスにいる人をマイノリティに」──。リクルート・林宏昌さんが伝えるリモートワーク導入に必要なこと

「オフィスにいる人をマイノリティに」──。リクルート・林宏昌さんが伝えるリモートワーク導入に必要なこと

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野澤 健(のざわ たけし)

企業や自治体などに向けてCSR、サステナビリティに関する各種業務を行うエコネットワークスに大学在学中から関わり、卒業と同時に正式に参画。国内外の幅広い社会課題にアンテナを張り、CSR・サステナビリティ関係の調査・分析、ステークホルダーダイアログのファシリテーション、プログラムの企画・運営支援などを担当。2011年取締役就任、2016年より現職。

林 宏昌(はやし ひろまさ)

2005年、リクルート入社。住宅領域の新築マンション首都圏営業部に配属。優秀営業を表彰する全社TOP GUN AWARDを、入社4年目と5年目に連続受賞、6年目でマネジャーに昇進する。入社8年目に社長秘書を務め、2014年に経営企画室室長、2015年4月より広報ブランド推進室室長兼「働き方変革プロジェクト」プロジェクトリーダー、2016年4月ワークスタイルイノベーション 働き方変革推進室室長に就任。現在はエバンジェリストとして活動。

この記事のポイント!

リモートワーク導入の秘訣は…
・あえてオフィスにいる人が少数派になるような環境をつくる
・導入前に、チャットなどオンラインでのコミュニケーションに慣れておく
・業務フローを見直して、働き過ぎを防ぐ


政府が推進する「働き方改革」の有効な手段として注目されるのが「リモートワーク」です。オフィスに出勤し職場で顔を合わせるという従来の働き方と違い、場所を選ばないので育児や介護と並行して仕事ができるほか、通勤のストレスからも解放されます。

しかし「セキュリティ面が不安」「サボっているのでは」といった反対意見は根強く、普及には未だハードルが高いのが現状です。

では、リモートワークをうまく導入するにはどうすればいいのか。そんな疑問に答えるセミナーが9月8日、品川にあるコクヨ東京ショールームで開催されました。

セミナー:「リモートワーク導入担当者向けセミナー『ライフとワークの質を高めるリモートワークの始め方』」

主催:やつづかえり・・・「くらしと仕事」の編集長。働き方に関する記事を配信。
野澤健・・・エコネットワークス代表。オフィスを持たず、全従業員がリモートワークを行う。

目的:リモートワークの考え方を広めること。

ゲストスピーカー:林宏昌・・・リクルートホールディングス働き方変革推進部エバンジェリスト。リモートワーク導入について、会社視点での考え方をシェア。

野澤「『暮らす』と『働く』を大切にしながらベストパフォーマンスを発揮できるようにする」

セミナーは、第一部と第二部で構成され、参加者同士のグループワークも行いました。第一部のテーマは「リモートワークで得たいものを考える」。

野澤さんが、社員もプロジェクトに関わるフリーランサーも全員がリモートワーカーという自社の状況を説明し、「それぞれが『暮らす』と『働く』を大切にしながら、その時々でベストなパフォーマンスを発揮できるよう、一人ひとりが自らの働き方をデザインすること」という同社の考え方を話しました。

昨年はこの考え方とそれを実現するためのノウハウを「暮らしと仕事の質を高めるためのリモートワーク推進BOOK」という冊子にまとめて広く公開もしています。

次に、参加者同士で「ライフとワークの質を高めるリモートワークの始め方」をテーマに、普段のワークスタイルや自身のリモートワーク願望などについて意見交換をしました。

その後の全体発表では、「定期的にリモートワークの日をつくりたい」と回答する人が多く、「ほぼリモートワークのみにしたい」は少数。

オフィスとリモートワークを組み合わせた働き方を望む人が多いことがうかがえます。「軽井沢に家を買い、そこで仕事をしたい」という希望も聞かれました。

▲進行を務めたやつづかさんの質問に応える参加者の皆さん 

オフィスにいる人がマイノリティになる環境づくりを

第二部のテーマは、「リモートワーク導入の課題と解消方法を考える」。リクルートホールディングス働き方変革推進部 エバンジェリストの林さんが登壇。

主催のやつづかさんと野澤さんが林さんにインタビューをしながら、参加者からの質問に適宜答えていくという方式で進められました。

リクルートホールディングスでは、2016年1月から雇用形態に関わらず全従業員を対象に上限日数のないリモートワークの導入を開始。都内近郊に約35か所のサテライトオフィスがあり、場所にとらわれない働き方を実践している。

2015年4月に、林さんの主導で「働き方変革プロジェクト」が発足。リクルートホールディングスでは同年6月から週に3日以上のリモートワーク実証実験を行った。


参加者:「実証実験の評価基準は何ですか?」

林宏昌(以下、林):優秀な人材のリテンションと、外部からの優秀な人材が採用に繋がるかどうかです。

参加者:「週3日以上のリモートワークを条件に実験を行った理由は?」

林:金曜日にやろうなど週に1日ではなく、週の半分以上のリモートワークが必要で、オフィスにいることをマイノリティにする環境が大切だからです。

野澤健:「結果はどうでしたか?」

林:実験後に取ったアンケートで、「今後も自社で働きたい」と答えた人が実験前より増えました。

オフィス面積を減らし、コストカットを実現

参加者:「生産性は上がりましたか?」

林:実証実験では検証していません。しかし実験後に行ったアンケート結果では、半数以上が「上がった」と回答しました。その理由は、「集中して作業ができた」(約5割)「通勤・移動時間が削られた」(約3割)でした。

「集中できた」が1位だったことは意外でした。ここで疑問に感じたのが、「オフィスの役割は何か」ということでした。出社しない人が増えれば、オフィススペースが削減でき、コストを抑えられます。そこで、固定席をフリーアドレスに変えたり、本社の面積を削減するなどを実践した結果、大幅なコスト減となりました。

サイバーオフィスファーストという考え方



参加者:「個人だけでなく、会社である以上は組織としての生産性を上げる必要はありますよね。その点はどうでしょうか?」

林:そこはポイントですね。でもリモートワークが先にあってはいけません。これは実証実験をやってみて感じたことですが、対面でのコミュニケーションが当たり前の環境でいきなりリモートワークを導入すれば、生産性が落ちるのは当然です。

まずは物理的対面が当たり前の環境を変えることが重要だと考え、社内でのコミュニケーションをチャットに置き換えました。すると、「アポの準備時間が約3割増えた」「会議時間を約3割減らした」のほか、7割が「以前よりコミュニケーションに満足している」と答えており、コミュニケーションの環境が変わりました。

つまり、コミュニケーションスキルが上がっているので、オフィスに行く必要がなくなるんです。オンライン上にオフィスを作るサイバーオフィスが先で、リモートワークは後だったと、今振り返れば思います。

働き過ぎは、業務フローを見直せば防げる

参加者:「リモートワークではどこでも仕事ができる反面、働きすぎの問題はないのでしょうか?知り合いで、いつもパソコンの前にいて午前6時から午後10時まで働く人がいます」

林:弊社では労働時間をモニタリングし、労働時間マネジメントの注意喚起を行い従業員の働き過ぎを防いでいますが、業務フローの見直しをしないと意味はありません。「夜8時に消灯」「PCを起動できないようにする」といった対策を取るケースがありますが、業務の見直しをしない状態では持ち帰り残業が増えるだけでしょう。

バラバラの働き方の自由を認めつつ、事業の成績を上げる

参加者:「社風はどのように変わりますか?」

林:僕らは「こうしなさい」という指示はしません。文化を変える気はないし、変えてはいけないでしょう。ひとりひとりがイキイキと生きられるような働き方をすればいいと思っています。オフィスに来たいのであれば来ればいいんです。

大切なのは、個人がどういう働き方をしたいのかということ。バラバラの働き方の自由を認めつつ、事業の成績を上げるやり方を見定めるのが働き方変革推進部の役割だと思っています。

リモートワークと聞くと、自宅で一人で働くイメージが強いですが、そうではありません。たとえば新卒採用の部署であれば、綺麗なオフィス内で企画を考えるより、大学の学食に行って働いてみてもいいですね。大学が許可するかは別ですが(笑)

また住宅領域の仕事の場合、ある街にマンションが建つのであれば、その街で1週間働いてみるのもありですよね。

イベントに参加してみて

「サイバーオフィスファースト」という考えには、参加した皆さんは納得した様子でした。いきなり「リモートワークをやるぞ!」と言われても、対面でのコミュニケーションが当たり前の職場では、チャットやメッセンジャーでのやりとりに急には適応できず、戸惑うのも当然です。

筆者も最近、働き方を出勤から在宅へ変えた経緯があり、まず会社にいる時から少しずつオンライン上でのコミュニケーションに慣れておくことは必須だと改めて感じました。

また、オフィスにいる人が少数派の環境をつくることも目からウロコでしたね。会社全体でリモートワークをうまく導入するには、きちんとしたステップを踏むことが重要。今回のセミナーのように、リモートワークの考え方がもっと社会に浸透し、多くの人が、より自由な環境で働けるようになるといいなと思います。

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