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「仕事はボランティアの延長」広島で動物たちの“命”をつなぐ『ピースワンコ』の仕事

「仕事はボランティアの延長」広島で動物たちの“命”をつなぐ『ピースワンコ』の仕事

「仕事はボランティアの延長」広島で動物たちの“命”をつなぐ『ピースワンコ』の仕事

―犬は心の癒し―ストレス社会を生きる現代人は、動物の存在をますます必要としているのではないか。ペットを飼っていなくても、家に帰ればネットでワンコたちの愛くるしい動画を見て癒やされる…。私自身そんなひとときを楽しみにしているひとりである。一方、その裏では全国各地で犬や猫の殺処分が行われている。今回は『ピースワンコ・ジャパン・プロジェクト』(運営は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン)で、動物たちの保護活動をしている安倍さんの仕事について話を伺った。

安倍誠(あべまこと)

特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン 国内事業部 ピースワンコ・プロジェクト シェルターマネージャー。広島県神石高原シェルターにて保護犬の飼育、殺処分対象となった犬の引き取り業務などを行う。

『ピースワンコ・ジャパン』って?

川西:今日はよろしくお願いします!おっ、周りにはたくさんのワンコがいますね。

安倍:そうなんです、業務が終わってからも犬と触れ合ったりしているので、ほぼ一日中犬に囲まれていますね。

川西:普段の業務は具体的にどんなことをしているのですか?

安倍:ピースワンコ・ジャパンは、世界各地で難民や被災者を支援する国際協力NGOであるピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が国内で行っている事業の1つとして殺処分を対象とする犬の保護・譲渡をおこなう事業です。
私はプロジェクトのシェルターマネージャーという立場で、犬の管理、スタッフの管理また現場業務として、攻撃性がある犬が収容される犬舎の責任者も兼任しています。基本的には、広島県神石高原にあるシェルターにて保護犬の飼育をしていて、定期的に県の動物愛護センターに足を運び、殺処分対象となった犬の引き取り業務なども行っていますね。

川西:殺処分…。街頭のボランティア活動などではよく耳にしますね。どういった現状なのでしょうか?

安倍:2011年、ピースワンコ事業の本拠地である広島県は、犬・猫を合わせた殺処分数が8,340頭(犬2,342頭、猫5,998頭)にのぼり、全国ワーストを記録していました。その処分の方法は、動物愛護センターでドリームボックスと呼ばれる処分機の中に二酸化炭素を注入する窒息死によるものです。
私たちピースワンコ・ジャパンでは、2016年4月から広島県内で殺処分になる犬を全て引き出すというチャレンジを行っています。以降、1000日間が経った現在も殺処分対象犬を全て助け出し、広島の殺処分ゼロを維持しています。

川西:すごい!殺処分ゼロがもう3年間も維持できているんですね!

安倍:日本中の支援者様や協力者様の支えにより、人員、施設などの資源を充実させることができたおかげです。

川西:そういえば、ふるさと納税とも連携もされていますよね?

安倍:元々、町内の野良犬・捨て犬の全頭保護などで町と連携関係を築いていたこともあり、更に町と連携し、ふるさと納税のNPO指定寄付を活用しました。このサポーター制度が充実したことにより、今まで5000頭以上の犬を保護してきました。このプロジェクトは犬の為でもあり、人の為でもあります。「殺処分をなくしたい、犬を助けたい」という支援者様の思いも叶えていきたいと考えています。

「UターンからのIターン」広島で“命”と向き合う仕事に就く

川西:安倍さんは元々犬がお好きで、今の仕事を始められたんですか?

安倍:いえ、元々は大学卒業後、食品製造販売会社に就職し主に営業をしていました。

川西:そうなんですか!!営業をされていたとは、意外です。

安倍:勤務地である東京の新宿は、私の故郷の北海道とはあまりに違う環境でした。そんな中、利益を追求し得意先との商談を重ねる仕事に嫌気が差し、充実感を得ることはできない日々が続いていました。
そして、昔からの夢であった“地平線の見える大地で大好きな馬と暮らしたい”という思いが募り、北海道へUターンしました。そこから、乗馬インストラクター、競走馬の育成繁殖を経験し、今に至ります。乗馬の施設、競走馬の牧場へと転職し、念願であった馬との生活を送ることになり充実した時間を送っていました。

川西:元々は馬が大好きだったんですね!そこからなぜ、犬や猫の保護活動をするようになったのでしょう?

安倍:ある日、可愛がっていた馬がウォブラー症候群という疾患にかかり、診断の結果、日常生活には支障はないが、競走馬としての競走能力はないと判断され、注射での処分が決定しました。私の腕の中で最期を遂げた愛馬を見て、世の中には生きたくても生きれない命がいることを強く感じました。悲しさと同時に「人間の都合で処分になる命を助けなければいけない」と使命感みたいなものが湧き出しました。しかし、馬に纏わる動物福祉の問題を解決することは非常に難しく、また当時、地元の犬猫保護団体にボランティアとして通っていたこともあり、まずは日本人にとっては身近な存在の犬や猫の動物福祉の問題から解決を目指し、いつか馬などの他の動物にも繋げたいと考えるようになりました。

川西:ピースワンコ・ジャパンに出会ったきっかけは何だったのですか?

安倍:日本各地で動物保護団体や個人の活動家の訪問などをしている中で出会ったのがピースワンコ・ジャパンでした。殺処分問題という社会問題を本気で変えようという姿勢に共感し、訪問後、数週間後には入職して働いていました。入職し5年たった今も感覚としてはボランティア活動の延長上です。好きなボランティア活動をしていたら、気づいたらそれが仕事になっているといったところですね。

「犬を助けたい」全国から若者が集う職場

川西:ピースワンコ・ジャパンの活動の様子の動画を拝見して、若い職員の方が多いのがとても印象的でした。実際にはどんなスタッフさんが働かれているんですか?

安倍:スタッフは日本中から集まっています。20代の女性スタッフが大半で、現在34歳の私は年長組になりますね。

川西:34歳で年長なんですね!皆さんどんな理由でこちらで働かれているのですか?

安倍:新卒で入社したばかりの20代前半の職員ですら、「殺処分をなくしたい、犬を助けたい、社会貢献したい」と高い志を持って働いています。その一心で親元を離れ、田舎に移住しているので感心するばかりです。自分がその年の歳の時は自分のことしか考えず生きていましたから。年齢は違えど同じ志を持ったスタッフと同じ方向を向いて仕事をできることは本当に嬉しいことだと日々感じています。

川西:てっきり地元出身の方が多いのかと思っていましたが、そんなことないんですね!

安倍:遠方から移住する職員も多いので、一人暮らしが不安な場合は社宅やシェアルームを提供したりもしています。一番近い街である福山市まで車で30分くらいかかるような山の上の職場ですが、実は寂しくないんですよ。

川西:最近では若者の田舎暮らしも話題となっていますもんね。

安倍:メインの施設のある、神石高原町から「移住者が増え、経済も成長して嬉しい」という声もあります。神石高原町は、標高約500mの中国山地に位置していて、夏でも高原特有の冷たく心地よい風が吹き、夜は満開の星空を見ることが出来ます。特に7、8月の星は本当に綺麗ですよ!

「殺処分ゼロ」広島の青い空を日本中に広げたい

川西:広島での殺処分はゼロを達成し、維持していますが、これからの活動の目標はありますか?

安倍:殺処分という社会問題を解決したいという強い思いをもって働き、気づけば殺処分機の稼働が止まり1000日が経っていました。本当に気分的なものなんですが広島の空の色が青く明るくなったと日々感じているんです。今は、広島県内の殺処分ゼロを永久に維持し、日本中に広げたいと考えています。

川西:仕事をしていて大変なことはどんなことですか?

安倍:私たちの団体が保護する犬は処分の対象犬。つまり、野犬や攻撃性のある犬、虐待されていた犬、病気を持った犬や大きな外傷を負う犬、そういった管理が難しい犬たちです。中には最善の治療を行い看病しても亡くなる犬もいます。最後まで看取るのも私たちの責任です。スタッフの誰もが涙を流した経験があると思います。
そんな時でも、私たちの横には沢山の犬達がいます。どんなに困難な状況の犬でも前を向いて一生懸命生きようとしています。動物は本当に強いです。傍から見ればどんな絶望的な状況でも、犬は絶望と思っていないですからね。そんな風にいつも逞しく生きる姿から自分も、元気や勇気をもらっています。

川西:活動を通して、知ってほしいことはどんなことですか?

安倍:全国には、まだまだ殺処分されている犬や猫がたくさんいるのだということ、あとは、譲渡センターの存在も知ってもらいたいですね。今は全国に7箇所の譲渡センターがあり、そこには健康状態も良く、人に慣れている子犬もたくさんいます。

川西:譲渡センターの存在、私もよく知らなかったです!

安倍:譲渡センターでは、譲渡会というイベントをやっていて犬とふれあう機会もたくさんあります。犬を迎え入れたいという方には、何回か通ってもらい、お宅訪問もして色んな条件に合うかを考慮した上で、お渡ししています。

川西:譲渡には、そこまで丁寧な流れがあるんですね。

安倍:ペットショップと同じでは意味がありません。再び保護されることのないように、飼育のことや、脱走のポイントがないかをしっかり調べます。譲渡した先で、犬が幸せになっていく姿を見ると、本当に嬉しくなります。愛護センターの処分の前で怯える子たちも、命がつながればどの犬も必ず幸せになれる、だからこそ助けたいと思っています。

「仕事はボランティアの延長」犬にも、楽しさは伝わる

川西:安倍さんにとって働くとはどんなことですか?

安倍:現在の仕事に就く前は、休日になると地元の動物保護団体でボランティア活動を行い、心も体もリフレッシュして、「また仕事を一週間頑張るぞ」という感じだったのですが、今の仕事に就いてからは、毎日自分の好きなボランティア活動しているという感覚をもっています。
勿論休日もしっかりあるのですが、休日にも犬と遊びに職場へ向かったりと、良いのか悪いのかわからないんですけどONとOFFの境界線がない状態ですね。大変なことも勿論あるんですけど、やっぱり毎日楽しいです。仕事の上での目標が、人生の目標と同じです。こんな仕事に出会えた自分は幸せ者だと感じています。

川西:毎日の仕事が楽しくなるために何かしていることはありますか?

安倍:実は、朝礼の際に一言ですが「今日も元気に楽しんで頑張っていきましょう!」を毎日合言葉として話しています。このプロジェクトの上でも、人が楽しければ周りの人にも伝染し、犬にも伝染し、職場が良い雰囲気になったりもします。それがプロジェクトを進ませる原動力になったりもしますので、とにかく『仕事を楽しむ』ということを毎日のテーマにしています。
日本人であれば、一日の活動時間の大変の時間を仕事に費やしていますよね。大半の日本人が60歳過ぎまで働くわけです。人生の時間を無駄にさせないためには、大半の時間を費やすその仕事を楽しむこと。大変なことであるのかもしれないですけど、自分自身の心の在り方ひとつで可能だと思うんですね。そんな思いで、大変なことがあっても楽しもうと心がけています。人生一度きり。楽しんだもの勝ちです。

取材を終えて

犬や猫は人間を癒やす“ペット”である以前に、紛れもなくひとつの“命”である。そんなことに改めて気付かされた今回の取材。動物たちの幸せを心から望み、そのために日々活動をする安倍さんの言葉には何の迷いもなく、真っ直ぐで力強い印象を受けました。青く明るい広島の空がいつか全国に広がり、世界から悲しい動物たちがいなくなることを願います。