会社員の皆さんや、組織を運営している皆さんの中には「どうしたらみんなが発言しやすい、コミュニケーションを取りやすい組織になるんだろう?」と悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんなお悩みを解決する「心理的安全性」という言葉をご存知ですか?
今回は「心理的安全性」のプロフェッショナルであり、学校の先生、そしてお笑い芸人である「オシエルズ」のお二人にコミュニケーションが活性化する組織づくりについてお伺いしてきました。
とある日のFledge編集部
たくみ:最近さ、コミュニティとかサロンって増えてると思わない?
おきありちゃん:あーめっちゃ思います。会社員の時にあった自主勉強会とかと似たようなことやってるのに、めっちゃ楽しそうですよね。なんでうまく行くんだろ~…
もか:うーん…やっぱり気軽にコミュニケーションが取れるかとか、そういうところじゃない?
おきありちゃん:あーたしかに。会社員だった頃に、偉い人にフランクに話しかけられると先輩に怒られたっけ(笑)自由に発言できない会議とか苦手だったな~…
たくみ:2人は「心理的安全性」って聞いたことある?
もか・おきありちゃん:心理的安全性?
たくみ:コミュニケーションとか、場づくりに迷っている人たちに注目されているキーワードらしくて、ワークショップとかも行なわれているんだって。Fledgeの読者の中には、会社とかコミュニティとかの組織を運営している人も多いだろうなって思って、今日は、そんな心理的安全性のプロを呼んでみたんだよね!
???:おじゃましまーす!
(もか・おきありちゃん:たくみさん、確信犯…)
矢島ノブ雄(オシエルズ)
「笑いで新たな価値を創造する」FUNBEST(ファンベスト)代表。オシエルズ。埼玉医科大学短期大学・非常勤講師。書籍「イラスト版子どものユーモア・スキル」(合同出版)発売中。日本即興コメディ協会代表。日本笑い学会講師。講演依頼→050-5328-7854(受付10:00〜18:00)/info@funbest.jp
野村真之介(オシエルズ)
東京学芸大学卒業。同大学教授の高尾隆に師事し、「即興実験学校」(インプロ・ラボ)で即興劇を通した表現教育を学ぶ。高校時代からお笑いを始め、学生時代はお笑いコンビ「プラスガンマ」(後にトリオとなる)として、NHKのテレビ番組に準レギュラー出演を果たす。現在、お笑いコンビ「オシエルズ」として活動しながら、インプロ(即興演劇)を通じた子どものコミュニケーション能力・表現力向上について研究している。
場づくりと即興お笑いのプロ・オシエルズさんが、Fledge編集部にやって来た!
おきありちゃん:ど、どちらさまですか?
たくみ:お笑い芸人のオシエルズのおふたりだよ!お客さんからいただいたお題でネタを作る即興お笑いのプロで、心理的安全性のプロフェッショナルでもあるんだ!
オシエルズ・野村さん:はい!即興お笑い、インプロ*で定評のあるオシエルズです!とはいっても、今日は学校で授業があってからきましたが…
もか:授業⁉ 先生もやってるんですか?そして、即興お笑いって、この場でお笑いが作れちゃうんですか?
オシエルズ・矢島さん:そうです、そうです!せっかくなので実際にやってみましょうか!
もか・おきありちゃん:え!すごーーーい!
たくみ:聞くところによると、即興で歌う漫才もできるんですよね?オシエルズさんよろしくお願いいたします!
オシエルズ・矢島さん:もちろん、もちろん!
スッ・・・(おもむろにキーボードを取り出す)
もか・おきありちゃん:やばーーーーー!本物ですね!すごいな~!改めて本日はよろしくお願いいたします。
(*) 準備なしに話しをしたり、パフォーマンスをする事、または使えるものは何でも使って、何かを作り出す事
なぜ「学校の先生」×「お笑い」を?
なぜオシエルズとして活動を始めたのですか?
オシエルズ・矢島さん(以下、矢島):もともと、野村くんの噂は聞いていました。教育関係に携わったことがある芸人さんというのは珍しいですからね。
それまで、僕自身は完璧主義な人間で「台本通りにやらないと」という考えを持っていたのですが、野村くんは即興、インプロをやっていたとのことで、僕とは違うそういう部分で刺激されたんですよね。それに、お笑いにも、教育にも真摯に取り組みたいという部分で同じだなと思って、2013年の3月にオシエルズを結成したんです。
▲「オシエルズ」活動中のお二人
もともと野村さんがインプロをやっていたんですね!
オシエルズ・野村さん(以下、野村):大学の時から、「即興実験学校」というインプロの団体に入っていて、卒業後もそのワークショップでファシリテーターをしていたんです。
コンビを組んでからは、そこにやじっす(矢島)がたまに来てくれるようになりました。そのうち、僕ら2人でもワークショップをやってみようかと、FUNBESTという個人事務所を立ち上げました。
矢島:僕の笑い×教育の研究と、野村くんのインプロが掛け合わさってFUNBESTを立ち上げ、数か月後、今中心となっているメンバーで日本即興コメディ協会を立ち上げました。だから、ワークショップや研修などはオシエルズとしてではなく、日本即興コメディ協会の活動としてやっていますね。
教育とお笑いを掛け合わせようと思った理由はなぜですか?
野村:お笑いってコミュニケーションの仕方をすごく考えるんですよね。ネタをやりながら、どう見えるかとか、お客さんに笑ってもらうためにどんなアドリブをしようかとか。そこを芸人やいろんな人たちと体験したり、シェアしたりすることにすごく興味があったんです。
それでネタをやりながら、ワークショップを通し笑いを探求する活動を言葉にすると、「教育」が合っているなと思いました。
矢島:お笑いって誰もが楽しめる反面、いじめやハラスメントにつながるといったようなマイナスな部分もあるじゃないですか。それを見て僕は「芸人としての説明責任が果たせてないからじゃないか」って思うんですよね。
でも、手品師が手品の種を明かしたらつまらなくなるのと同じで、お笑いでもタネを隠すのが美徳であり、ある意味ではタブーなんです。だけど、笑いを楽しむためにも誰かが明らかにしなければならない。それにお笑い芸人じゃない人が、それを明かしても説得力に欠ける。だから、16歳の頃からお笑いをやっている僕が「笑わせ方とか、笑いを正しく伝えなくちゃ!」と思ったんです。
【見出し】コミュニケーションを活性化させる「心理的安全性」とは?
笑いの種明かしとのことですが、ずばり、絶対うけるお笑いってあるんですか?
矢島:結論から言うとありませんね。小手先のテクニックではあるかもしれませんが…。一番重要なのは場づくりです。インプロって笑いやすい場づくりを大切にしていて、失敗しても大丈夫な空気感、心理的安全性を大切にしているんですよね。だから、インプロでは誰もが表現者になれるんです。
僕らは、ここに正解があると思っていて、教育とインプロとお笑いを掛け合わせた活動をしています。
野村:ただ、やはり企業にコミュニケーション研修にいくと「とはいえ~、なにかあるんじゃないんですか?」って1時間後に使えるような「How to」を求められることも多いんですよね(笑)でも、残念ながら、本当にないです。
矢島:芸人さんのように、この場で、このお笑いをすればうけるっていうのを知っている方はいますけどね。良い意味で自分を持っていなくて、なんとなく「この人の前ではこうであったほうが打ち解けやすいだろうな」っていうのは持っているんです。
僕らも心理的安全性を確保するために「この場で自分がどうあれば幸せなのか」を考え、感じて、ある意味では憑依させるようにしていますね。
自分を憑依させるとは、具体的にどういうことですか?
矢島:この場がどうあれば幸せになれるかの最大公約数を見抜けるかを大切にしています。
例えば、たまにライブの時に話しかけてくるお客さんっているんですけど、そういう時は他のお客さんを含めて雰囲気を悪くしないためにどう対応するかを分けています。もし、雰囲気が悪くなってしまったり、その方が他のお客さんから敵意を持たれる対象になってしまったりしたら、どんなにおもしろいネタをやっても笑える場にはなりません。
最大公約数とありましたが、階級も年齢もばらばら、共通点も特にない。そんな時は、どうやって良い雰囲気づくりをしているのですか?
野村:例えばワークショップの場合。最初に自己紹介をしてもらう時に、誰かが大きく笑ったことではなく、参加者全員がなにで笑ったかということを見ています。全員が共有したことを大切に考えて、そこに関するコミュニケーションゲームをやって全体のリアクションを良くするようにしています。
矢島:ワークショップのファシリテーターの中には、修学旅行でいうチェックポイントのようなものを設けたがる人もいるんですね。でも、インプロのワークショップで、チェックポイントを設けてしまったら、自由がなくなって心理的安全性が確保されなくなってしまいます。
だから、僕らのワークショップでは、なんとなくゴールをほのめかしつつも、ゴールにたどり着くまではちょっと失敗してもいいし、どうやってたどり着いてもいいよとしています。その方が、心理的安全性が確保された良い空気感が作れるんですよね。
逆に心理的安全性がうまく行かないとどうなってしまうんですか?
矢島:僕は教育、職場、宴会を心理的安全性のない場所としています。例えば、次のような経験はありませんか?
■教育
→「これ、わかる人?」との先生の問いに答えて間違う→クラスメイトに笑われる→間違えたくないから手を上げない→先生に「なんで発表しないの?」と言われるスパイラル
■会議
→「何か意見を発表して!」と言っても、何かと理由を付けて部下の意見が上司に採用してもらえない→誰も発表できない
■宴会
→「新人!なにか一発ギャグをやれ!」と上司に言われる→意を決して一発ギャグをやる→「やれ!」と言った上司含めて誰も見てないし、誰も笑わない
矢島:このような場所は、心理的安全性が欠如していて、笑いも起きづらく、人間関係もぎくしゃくしていることが多いんです。もちろん、教育、職場、宴会の場、すべてがこうであるわけではありませんが、なりがちですよね。
なるほど。では、矢島さんが考える心理的安全性が確保されている場所とはどういう場所なんですか?
矢島:お互いを分かり合い、共有している場のことだと思います。例えば、一言にお笑い好きといっても、ご年配の方は落語が、小学生の子は一発ギャグやリズムネタが好きな方が多いですよね?それを「おもしろくない」と跳ねのけてしまうのではなく、なんでおもしろいかをわかろうとすれば、笑えると思うんです。
だから、自分の信じている「笑い」だけをすべてだとするのではなく、「笑い」を共有すること。そうすれば、協調性が生まれ、誰がどの場所に立っても良い空気ができると考えています。
心理的安全性がない場所を良い場にするためには
心理的安全性のない会議を、ある会議にする方法はあるんですか?
野村:誰か1人が「会社の空気を良くしたい」と考えて研修を受けたり、勉強したりしてもあまり効果はありません。というのも、大切なのは複数人が心理的安全性を共有することなんですよね。
全員が腹落ちするようなところまでいかなければ、変わるのは難しいと思います。その手段として、ワークショップが有効だと思っているので、僕らは続けているんです。
矢島:僕も同意見ですね。心理的安全性がうまくいっていない中で、誰がキーマンかと考えたら、会議のファシリテーターだったり、組織におけるリーダーであることがほとんどです。理想の上司に所ジョージさんや、明石家さんまさんが挙がる理由って、彼らが遊ぶように仕事されているからだと思うんですよ。
でも、自分たちの周りを見てみると「仕事は仕事、遊びは遊び」っていう考えや、こうあらねばならないという責任感タイプの上司が多い。それで結果的に話しづらい場ができ上がってしまう。
だから、会議の場においてアイスブレイクに重きを置いたり、部下が話しやすい空気感を作り出したり、部下の意見を引き出すような問いかけをしたりした時に、初めて雰囲気が変わると思っています。ワークショップをやって終わりではなくて、内省化してもらうことが大切なんです。
野村:だから、インプロにおいて、話しやすい空気感のある場所は大事で、こういう寝そべられるような場って本当にいいんですよ。そういう意味では、えふななさんって理想的なオフィスですね。
矢島:もしよかったら、僕たちが記事…書きましょうか…?
一同:いやいやいやいや!!!(笑)
編集後記
笑いすぎてお腹が痛くなった今回の取材。さすがお笑い芸人、そして場づくりのプロであるオシエルズさんだと思いました!
さて、「心理的安全性」という言葉、皆さんはもともと聞いたことがありましたか?私自身、インナーブランディングやインナーコミュニケーションに興味があり、今回の取材で頻繁に登場した「雰囲気づくり」というのは、コミュニケーションに悩む企業の皆さんが今一度見直すべき問題なのではないかと感じました。
それに昨今ではリモートワークの企業が増えたり、チャットツールでのやり取りをすることが増えましたよね。私自身、フリーランスということもあり、複数の組織とチャットツールでやり取りをしておりますが、やはりなんでも話しやすいコミュニティとそうではないコミュニティがあると感じております。
また、SNSなどによるオンライン上のやり取りが主流になり、日々誰かが非難の対象となっているのを見ると心理的安全性が確保されていない場に触れる機会が日常の中にたくさん転がっているのではないかとも思いました。お互いの意見を尊重し、誰もが幸せで発言しやすい空気づくりについて、今一度考えてみてはいかがですか?
この記事を読んで、心理的安全性、インプロについて、もっと知りたいと感じた方は、ぜひオシエルズさんの著書やワークショップをチェックしてみてくださいね。