【SHORT STORIES】Steven is Steven

【SHORT STORIES】Steven is Steven

世界一周を始めて迎えた初めての週末。
金曜日の夕方17時に仕事を終えたひろみさんの帰宅を待って、友人のゆうちゃんと私は、マッカレンから車で1時間半程のメキシコ湾沿いの街、コーパスクリスティに向かった。土曜の昼には、その街のバイクショップで働く日本人の方にインタビューすることになっている。

実はその街には、ひろみさんのフィアンセ、タイラの実家もあり、金曜の夜はそこで寝泊まりさせてもらうことになっていた。

テキサスの広大な大地に沈みゆく太陽と牛たち(テキサス、マッカレンは人口より牛の数が多いらしい(笑)!?)を横目に、車の中ではとめどなくおしゃべりをし、あっという間に彼の実家に到着した。

***

タイラは私たちが到着するや否や、すぐに夕食の準備をしてくれた。

4人でダイニングテーブルを囲んで、夢中でチキンのクリームパスタを頬張った。あまりの美味しさに、普段あまりパスタを食べない私もおかわりしてしまった。

ご飯はやっぱり誰かと食べるから美味しい。

一人旅をしていると、もちろんご飯を一人で食べることが多い故、誰かと食べるご飯の美味しさを改めてしみじみと感じる。ご飯の美味しさの半分は、楽しさでできていると思う。

ちょうど夕食を食べ終わった頃に、彼の友人であるマーティンとスティーブンが「Hey!!」と言いながら片手にビールケースを持って現れた。これからスティーブンの誕生日会が始まるようだ。

「Happy Birthday〜!」の掛け声で誕生日会がスタート、みんなでビールを片手に立ったままおしゃべり。必死に英語の会話に耳を傾けたが、半分以上は理解できていない。ひろみさんが通訳をしてくれるのでとても助かった。

 英語の話せない私とゆうちゃんに気を遣ってくれたのか、しばらくしてトランプゲームが始まった。ババぬき、スプーンズ、ブーシット。他にも幾つかゲームをしたが、一番わかりやすくて、一番盛り上がったのがスプーンズだった。

まずはテーブルの中央に参加人数より1本少ないスプーンを並べる。手持ちのカードは4枚。1枚ずつ不要なカードを隣の人に回していって、同じ数字のカードが手元に4枚揃ったら、スプーンを取る。誰かがスプーンを取ったら、自分もすぐに取らなくてはいけない。スプーンが1本足りていないので、取れなかった人がアウト!

単純で言葉がわからなくてもギャーギャー盛り上がるゲームだった。近隣住民に迷惑にならないかと心配になる程、盛り上がった。

そんな中、ふと気がつくとスティーブンが携帯をじーっと眺めて居る。みんながギャーギャー言っているのも耳に入っていないのかと思うくらい静かに携帯を見つめる。何をしているのかと覗いてみると、ただただfacebookに夢中なようだ。

しばらくすると、またスティーブンの姿が見当たらない。トイレに行ったのかと思っていたが、トイレにしては長すぎるほど戻ってこない。

ガチャっ。

玄関の扉が開いたと同時に、トルティーヤチップスとサルサソースを嬉しそうに抱えて入ってきたスティーブンがいた。100メートルほど先の自宅まで、それを取りに行っていたのだという。

なんとマイペースなのだろう。マイペース過ぎて微笑ましい。そんな姿が面白くて、ゆうちゃんと目を合わせて微笑んだ。


▲テキサス発祥のWhataburger

翌朝、みんなでテキサス名物のWhataburgerで昼食をとりながら、昨晩の楽しかった思い出を振り返っていた。

スティーブンの話になったので、私とゆうちゃんで、「スティーブンはとってもマイペースなんだね♪」とタイラに言うと、彼はちょっと分からなさ気に首を傾げた。そう、マイペースは和製英語で、英語自体にもそれを表現する単語は存在しないのだ。

ひろみさんが、どう言ったことがマイペースだったのか必死に説明してくれた。それを聞いて彼はこう言った。

「Steven is Steven.」

マイペースというのは、協調性を重んじる日本だからこそある言葉なのだと、その時私は思った。個を大事にするアメリカには、ペースが人のだとか自分のだとか、そんな概念は存在しない。

「マイペースに世界一周しよう」
そんな風に思ってスタートしたが、なんかちょっと違う気がしてきた。

さて、いよいよインタビューの時間だ。
>>> テキサス、コーパスクリスティで働くトライアスリート山村勇騎さんへのインタビューはこちら

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