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「人生をかけてこの場所を守る」崖っぷちのスキー場を、街の中心地として復活させた男。

「人生をかけてこの場所を守る」崖っぷちのスキー場を、街の中心地として復活させた男。

「人生をかけてこの場所を守る」崖っぷちのスキー場を、街の中心地として復活させた男。

2020年6月、富山県で2番目に古い歴史を持つ『あわすのスキー場』は、暖冬やコロナ感染の影響を受け、運営団体が解散すると報じられました。このニュースに人一倍心を傷めた松井一洋さんは、『あわすのスキー場の復活を支援する会』を立ち上げ、クラウドファンディングで600万円以上の支援金を集めることに成功します。

松井さんが全力をかけて守っていくと誓ったあわすのスキー場とはどんな場所なのか。どんな思いを持ち、活動しているのか伺いました。

松井一洋(まついかずひろ)

富山県富山市あわすの生まれ。中高とアルペンスキーの選手として活躍。サラリーマンとして働く傍らスキーコーチやスポーツクラブで選手の育成なども行う。2020年6月からあわすのスキー場の復活を支える会の代表、NPOあわすのの監事を務める。

早期退職を決断。スキー場を守るために全力を注ぐ

松井さんは、昨年の6月にあわすのスキー場を支援する会を立ち上げたそうですが、普段はどういったお仕事をされているんですか?

松井一洋(以下、松井):それが実は、昨年末で仕事を辞めて、スキー場の復活に全力を注いでいるんです。

そうなんですか!まだお若いのに、そこまで思い切ったのはどうしてだったのでしょう?

松井:たしかに、30年来の職場を離れるのは勇気のいることでしたし、全国の同僚からもありがたいことに引き止められました。しかし、スキー場に関することはそれまで仕事と並行してライフワークとして続けてきたことです。東京勤務となった最後の4年間も、週末は地元富山へ戻り、ゲレンデに立ってスキークラブの活動やコーチをしました。体力が続く限りは、スキーに関する活動を続けていくつもりでした。

昨年の緊急事態宣言が発令されたとき、人生で初めて3ヶ月間富山に帰ることができなかったんです。時を同じくして、あわすのスキー場を運営するNPOあわすのの解散が報道され、居ても立っても居られず、支援する会を立ち上げました。その半年後、地元というスキー場の復活に情熱を注ぐことが正しい道だと考え、定年まで10年を残し、早期退職を決意しました。

松井さんご自身にとっても、あわすのスキー場はかけがえのない場所だったのですね。

松井:この場所がなくなるのは、地元の灯火が消えてしまうようなことなんです。僕は3歳の頃からあわすのスキー場に来ていて、小中高はスキーの選手として全国大会へも出場していました。僕が率いるスキークラブもあわすのスキー場を拠点に活動しています。

今は、息子たちがここを拠点にスキー選手として活動しています。閉鎖の報道が流れたとき、「お父さん、これからどこで練習すればいいの?」って言われました。それで僕は「心配するな、お父さんが残すから」って。そんな会話もありましたね。僕の家族にとっても大事な場所だったんです。

クラウドファンディング達成の秘話

その後、あわすのスキー場を支援する会の行事には200名以上が集い、運転資金を調達するためのクラウドファンディングでは、600万円を超える支援金が集まったそうですが、プロジェクトが成功した秘訣はどんなところにあったのでしょう?

松井:一番にあるのは、あわすのスキー場が60年以上も人々に愛されてきた歴史あるスキー場だということです。

今でも多くの方が「幼い頃スキーを初めてやった場所」として認知しています。「昔お父さんによく連れて行ってもらった思い出の場所です。遠いところからですが、応援しています」と県外にお嫁に行かれた方からメッセージもありました。支援する会を立ち上げて、初めて行われた「勝手に草刈り、ゴミ拾い」には、200名を超えるボランティアが集い、4ヶ月間で500名以上の方が参加してくれました。

▲草刈りのボランティアには総勢500名以上が参加。

本当は、運転資金を集めるためにすぐにでもクラウドファンディングを始めたかったのですが、私自身も週末しか富山に戻れないという状況もあり準備不足でした。しかし、結果的にはそれが、クラウドファンディングが成功したひとつの要因だったのかなとも思います。

どういうことでしょうか?

松井:半年間の草刈りなどの活動をし、最後に資金集めをしたことが、すごく良いインパクトをもたらしたんです。お金がない中でも多くの人が協力して、この場所を維持しようとしている姿が、新聞や各種メディアにも取り上げられ「この場所が地元にとってなくてはならない場所だ」というアピールにもなり、皆さんが振り向いてくれました。

あわすのスキー場を運営していく上で大事なのはどういったことでしょうか?

松井:スキー場を運営する上で大事なのは、季節や天候に左右されない施策をしていくことです。これまであわすのスキー場は、前例踏襲に基づくスタイルが19年間繰り返されてきました。この20年は温暖化が進んでいるため、当然、営業日数は短くなっています。これから先はまったく違った視野を持って運営をしていかないといけません。

大きなスキー場は、スキー以外の事業でお客さんを取り込もうとしています。我々はそこまで大きな規模のスキー場ではありませんので、ランニングコストを多くはかけられません。そこで、NPOは会員制なので、会員の数を増やすのが継続の鍵になってきます。

四季を通じたファンを取り込んで会費収入が安定すれば、冬場にまったく雪が降らなかったとしてもそこで経営ができなくなる心配はありません。なので、今後はスキー以外でどういった運営ができるか話し合っているところです。

地域に愛されて60年。今までの魅力、これからの魅力

あわすのスキー場の魅力はどんなところなんですか?

松井:非常にゆるやかなゲレンデとベルトコンベア式のリフトがあり、初心者の方でも安心してスキーを楽しむことができます。

ベルトコンベア式のリフトですか?

松井:空港の動く歩道のような感じで、スキーを履いて乗るだけなので簡単なんです。初心者向けのゲレンデは、レストラン兼多目的ハウスのすぐ横にあるので、比較的見通しが良くて、お子さんも安心して遊べます。尚且、駐車場からゲレンデもすぐ近くなんです。雪道を子どもの手を引いて歩くのは大変でしょ?うちはそういったところが、すごく使いやすくなっているんです。

▲ベルトコンベア式のリフトの利用は、初心者やお子さんでも簡単。

それと、大自然に囲まれていながらアクセスも良いんです。富山市の中心部から車で1時間かからないですし、富山空港からは40分、東京駅からは3時間半です。立山黒部アルペンルートの玄関口もすぐそこにあります。

今後新しく生まれ変わる場所として、どんな試みがあるのでしょうか?

松井:これまで冬場しかやっていなかったレストランを季節を問わずオープンしています。ここは登山ルートの入り口でもありますから、平日はトイレと自動販売機を開放して無料の休憩所といった感じで使っていただいています。

土日はレストランもオープンして、バナナジュースやカキ氷など簡単なものから提供をし始めています。この春からは、草刈り用のヤギを放牧しています。その光景を見に親子連れのお客さんも週末お越しいただいていますね。7月末までは、ヤギの名前を募集するキャンペーンをやっています。採用された方には、あわすのスキー場で使える金券1万円分をプレゼントする予定です。

今計画中なのは、コンシェルジュつきの贅沢なバーベキューです。エキスパートを呼んで、食材や調理をプロデュースしてもらえて、野菜の調理や肉を焼くときの温度のテクニックも受講をできるようなものです。富山の海の幸をバーベキューで楽しむ、なんていうのも良いかもしれないですね。

他にも、自転車好きな理事長から、マウンテンバイクのコースを作る案も出ているし、湧き水があるので、それを凍らせてかき氷をやるとか、レストランのある多目的センターをセミナー用に貸し出したりすることも考えています。

▲レストラン『ミレット』の入っている多目的センター。

ここの良さは一度来てもらえればわかってもらえるはずです。季節を問わず足を運んでいただける仕組みをつくり、NPOの会員になりたいという人たちが増えて、ゆくゆくは理事メンバーがいなくても会員の中で、企画や運営ができるようになっていくと良いですね。今年はトライアンドエラーの年。方向性を決めて、来年度以降で精査していければと思います。

未来の街づくりの拠点となる場所へ

あわすのスキー場を地域にとってどのような場所にしていきたいか、教えてください。

松井:あわすのスキー場を拠点として発信していくことで「あわすのに住んでみたい」、「ここで何かを始めたい」という思いを持つ人がひとりでも多く出てきて、それを現実化していけたらと思います。

ここで生まれ育ったおばちゃんが「スキー場がただの雪山になるのが不安だったけど、年間通して賑やかになるのはとてもうれしい」と言ってくれました。地元の人たちも、お客さんとのつながりができることを喜んでくれています。僕の最終目標は、ここが地域の活性化のための場所として存続していくことです。そういう思いで会員になってくれる人が増えるとうれしいですね。

今、温暖化でスキー業界はどこも大変です。ランニングコストもかかるスキー場の運営を支えていくのは、ひとりの力では無理なんです。でも、みんなの力が集結すれば残せます。“みんなで守る、みんなの場所”それが僕があわすのスキー場を支援する会を立ち上げたときのテーマでした。

これからのあわすのスキー場は、単なる冬場の観光地ではありません。一年間通して、みんなで守っていく、ここに来るとみんなに会える。そんな場所になっていくといいですね。

また来月の頭には、草刈りのイベントがあります。会員の人たちがユーザー目線だけでなく、自らの手であわすのスキー場を存続させていく、という展開をこれからも継続していけたらと思います。

松井さん、ありがとうございました!

取材を終えて

「よく声を挙げてくれた」と感謝されるたび、行動して良かったと心から思う、と語る松井さん。あわすのスキー場は、ずっと昔から地元の人々を暖かく見守ってきた場所であり、その存続は誰もが望んでいたことでした。民意の代表として立ち上がった松井さんの思いは、地元を越えて全国のファンをつくり、あわすのスキー場は人々の集う街の中心地として発展を続けていきます。

▼あわすのスキー場

http://awasuno.com/