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自分らしく生きるためにやってきた。神山町を守るために始めた「神山しずくプロジェクト」──キネトスコープ社

自分らしく生きるためにやってきた。神山町を守るために始めた「神山しずくプロジェクト」──キネトスコープ社

自分らしく生きるためにやってきた。神山町を守るために始めた「神山しずくプロジェクト」──キネトスコープ社

関西の企業で初めて徳島県神山町にサテライトオフィスを開設し、同時に移住もしているキネトスコープ社代表の廣瀬さん。今回はサテライトオフィスを開設した経緯や、政治家の小泉進次郎さんにも一目おかれている「神山しずくプロジェクト」についてお伺いして来ました。

廣瀬 圭治(ひろせ きよはる)

1972年11月生まれ。キネトスコープ社代表兼アートディレクター・デザイナー。 2005年にキネトスコープ社を大阪で創業。企業のブランディングやWEB制作を手がける傍ら、理想の働き方を追求するため、2012年11月徳島県神山町にサテライトオフィスを開設。家族と共に移住し、現在は本社も神山町に移転している。特定非営利活動法人グリーンバレー理事も兼務。

【神山町】
人口:5,654人(推計人口、2017年1月1日)
・・・町面積は、徳島県内24自治体の中で9番目に大きい173.30k㎡、町の中央を東西に横断する鮎喰川上中流域に農地と集落が点在し、その周囲を町域の約 86%を占める300~1,500m級の山々が囲む。年平均気温は14℃前後、年間降水量は2,100mm前後。地区によっては冬に数センチの積雪があります。
引用元:神山町公式ホームページ

ステップアップするために決断した、神山町への移住とオフィス開設

──まずは廣瀬さんが「地方で働く」ことに興味を持ったキッカケを教えて下さい。
20代前半に当時勤めていた会社を辞めてバイクで地方を中心に放浪生活をしてたんですが、そこで一次産業や田舎、地方の人の良いところなど、自分の知らなかった世界を知れたことが最初のキッカケですね。

──田舎や地方の良さとはどういった点でしょうか?
コミュニケーションの部分が大きいですが、すごく暖かい人達が多いですね。実は、お金や利便性って大した問題じゃなくて、それ以上に「地方はこころが豊かになれる場所だ」って感じたんです。将来はこういった場所で生活したり働くことが理想だと思いました。

──それが「地方で働く」という考えの原点なんですね。神山町を知るキッカケって何かあったんですか?
2012年3月に東京のミッドタウンでマチオモイ帖という企画があって、そこにダンクソフト副社長の渡辺さんもいらしてたんですね。徳島の神山町でサテライトオフィスの実験実証してるというお話を聞きました。正直聞いたこともなかった場所で、本当どこそれ?って感じだったんですが、地方や田舎に興味がある自分としても気になってしまって(笑)すぐ神山町をネットで調べました。

──そこから実際に神山町に行かれたんですか?
まず問い合わせを入れてみたんですが、NPO法人グリーンバレー(以下、グリーンバレー)理事長の大南さんとお話することが出来て、せっかくだったら神山町を見に来ませんかと言って頂けたので、2012年の4月下旬に実際に神山町を見に行くことになったんです。

──大南さんとはどういったお話をされたんですか?
大南さんからは神山町を将来どのようにしていきたいのかを伺って、その中で現在コワーキングスペースとして運営しているコンプレックス神山の企画を聞きました。

すごく魅力的な企画だったので僕にも何か出来ないかと思って。IT関係の方だけではなくデザイナーやクリエイターも含めた他業種もいた方がイノベーションが起きやすいと思ったので、是非コンプレックス神山の立ち上げに参加させていただけないかとお願いしたんですよ。

──廣瀬さんもコンプレックス神山に携わっていたんですね!ちなみに当時、関西方面から神山町にサテライトオフィスの開設を検討している会社ってあったんですか?
なかったですね。当時はダンクソフトさんとsansanさんくらいだったと思います。全部東京方面の会社だったので、大阪のサテライト1号になりたいという話をしていたところ、神山町の世話役をやってくれているグリーンバレーの岩丸さんと大南さんから同時に「廣瀬さんに最優先で紹介したい物件がある」って連絡をもらったんですよ。そこで初めて『移住してみない?』って言われました(笑)

──お二人から同時に移住の提案だったんですね!
そうですね。でも、将来的には田舎でのんびり豊かに暮らしながら働きたいと思ってたので、割とすんなり受け入れられましたし、実際に神山町を見に行ってみたら、この大自然の中で生活できて、インターネットの環境も抜群だったので、理想としていた働き方がここならできるなと。なのでサテライトオフィスを開設することが目的ではなく、移住前提で自分が想い描いていたことを、どうやって神山町で実現していくかということを考えていましたね。

──廣瀬さんはご結婚もされているかと思いますが、奥様の説得とかって大変でしたか?(笑)
その質問はね、神山町に来たときは本当によく聞かれた質問なんだよね(笑)
もともと僕には田舎暮らしのビジョンがあって、妻にも共有していましたし、自分よりも子供のことを考えると都会ではなく田舎に身をおくほうがいいかなって。仕事ではなく生活として考えた上で判断したので家族も納得してくれましたよ。

田舎に行くことってみんなワークアウトのイメージを持っているんだと思いますが、僕からすると田舎に来ることは自分のやりたいことを実現させるためのステップアップなんですよね。

──確かに廣瀬さんのお話をお伺いしていると、ステップアップするために神山町に来たんだと感じますね。

神山町の水を守りたいという想いから始めた「神山しずくプロジェクト」

──キネトスコープ社さんでは、現在どういった事業をされていらっしゃるんですか?
HP制作や映像制作を含むデザイン事業と、「神山しずくプロジェクト」の運営をしています。

「ニャー!!」(三毛猫のしずくちゃん、トラ模様のさすけちゃんが取材に参加w)
キネトスコープ社の社員? うちの社員です(笑)

──いま取材にも参加してくれてますしね(笑)ちなみに「神山しずくプロジェクト」はどういったプロジェクトなのでしょうか?
神山町の「水」を守るプロジェクトで未来に一滴の水でも残していきたいという想いで始めたんですが、もともと資材として植えた神山町の木の使い道がなくなってしまって、間伐ができてない状態なんですね。

間伐がされないと木が密集し過ぎて、地面に光が届かなくなり、草が生えないんですよ。そうなると、土が固くなって、雨が吸収されずに表面を流れるようになってしまう。やがて保水力が弱まって、結果すごいスピードで水が減っていっているのが現状なんです。

──ちなみに今どのくらい水が減っているんですか?
すぐ近くに鮎喰川という川があるんですが、水量が30年前の約3割まで減ってるんです。

──え…。すごいスピードで減ってるんですね。
神山町は人口減少も当然問題ですが、水の減るスピードが早い方が僕は問題だと思っていて、これを止めていかないと、将来自分の子供たちが住めなくなってしまうと思ったんです。

──なるほど。確かに深刻な問題ですね…。
じゃ、木を切るかって話になるんですけど、実際僕が木を切ろうとすると20万年くらい切り続けないと理想の状態にはならなそうで(笑)僕はデザイナーなので、この杉に今までなかった価値をつけて商品化しようってことで「SHIZQ」というブランド名でタンブラーを創ることにしました。
杉の木で製作したタンブラー「SHIZQ」──杉を使ったタンブラーってあまり聞いたことがないですね。
杉はツートンカラー(外側は白く、内側は赤い木材)で建材としては使い勝手が悪く、木工職人の手作業でも加工が難しい木材なんです。ただ、ツートンカラーってすごく特徴になると思いましたし、SHIZQのために加工用の刃物から作ってくれる職人さんとも出会えたので、これは新しい神山ブランドとして製品化できると思いました!

──(タンブラーを実際に見ながら)すごくお洒落なタンブラーですね。すべて職人さんの手作業ということは大量生産はできないということですか?
そうですね。なのでスタートはネットショップのみで販売していましたが、少しずつ生産量や商品ラインナップを増やしていって、今はこのオフィスの一部をギャラリーにして実際に製品を手に取ってもらい購入できるようにしてます。

神山町を本当の意味で豊かな場所にするために

キネトスコープ社の廣瀬圭治 ──神山の水を守りたいという想いから始まった「神山しずくプロジェクト」ですが、今後の展望を教えてください。
まずはこのプロジェクトを長く続けていくことですね。そうしないと根本的な「水」の問題解決に繋がりません。現在うちの職人は60歳を超えていて、このままだと長く続けることが出来ないので神山町に工場を用意して、職人育成のプロジェクトを始めようと思っています。

──職人の育成が出来れば長く続けていくことも可能ですね!
神山町の杉を職人の手で加工し販売をしているので、小さい規模ではありますが1つ都会に頼らない田舎ならではのビジネスモデルが確立できたのかなと思っています。そうなると次のステップとして職人の育成が出来れば、このプロジェクトを長く続けていくことも現実的に可能かなと。

──政治家の小泉進次郎さんも地方創生の講演などで「神山しずくプロジェクト」についてお話されていますよね?
神山町の視察に来られた際にギャラリーに寄ってくれたんですが、「まちづくりや地方創生に必要な精神を象徴するタンブラー」と自身の講演会やFacebookなどで紹介してくれています。実際に製品を買って下さって、そういった評価をして頂けるのは本当にありがたいですね。

──そういった姿を廣瀬さん自身が神山町で先頭に立って見せることで、未来の子供たちにも良い影響が出そうですね。
神山町で暮らしている今の子どもたちが将来ここに戻って来たいと思ったときに、このプロジェクトが仕事の選択肢の一つになってくれたら素晴らしいなと思いますし、それ以外でも神山町を守りたいと思ってくれる子を一人でも多く増やしていきたいですね。環境が良くなって神山町に人が戻って来て、色々な角度からみんなで神山町を守っていくことができたら、本当の意味での豊かな場所になるのかなって思っています。

──最後に、神山町に来てこの瞬間が最高だったというエピソードを教えて頂けますか?
たくさんありますが・・・徳島はウナギの産地でもあって、先日うちの職人がウナギを持ってきてくれて、みんなでウナギを食べながら「SHIZQ」のタンブラーで地元のお酒飲んだんですよ。こういった地元の人と地元の名産を食べながらコミュニケーション取るのって都心ではなかったことなんで幸せを感じる瞬間だったりしますね。

──徳島のウナギ・・・高級品ですね!
ウナギって高価じゃないですか。でも、みんな見返りを求めてる訳じゃなくて、純粋に楽しくやろうという感覚の人が本当に多いと思います!そんな環境で暮らせていること自体が最高だし、素晴らしいことだと感じているので、次の世代にも僕たちが繋いでいかなければいけないと思ってます。

──貴重なお話をお聞かせ頂きありがとうございました。

 

編集後記

20代のときから理想として思い描いていた田舎での生活と、仕事を神山町で実践している廣瀬さんの言葉には説得力があり、お金では買えない田舎の価値を純粋に楽しんでいるように感じました。

また「SHIZQ」ブランドはミラノ万博に出展したことで世界から注目を集め、Fledgeの取材当日も新聞社の方が「神山しずくプロジェクト」の視察や取材に来ていました。とても注目度の高いプロジェクトであると同時に、神山町から世界に羽ばたくプロジェクトが出来つつあることに衝撃をうけました。

廣瀬さんは現在グリーンバレーの理事も兼務し、「しずくプロジェクト」を地域資源活用の事例の一つとし多くの方にご紹介されています。自分と同じような想いを持った人と一緒に神山町を守り、そしてより良くしていきたいと考えていることが強く伝わりました。