なぜ過労死はなくならないのか? ── 西村 創一朗

なぜ過労死はなくならないのか? ── 西村 創一朗

西村 創一朗(にしむら そういちろう)

リクルートキャリアで働く入社6年目の27歳@三児の父。現在は採用と新規事業開発を兼務。昨年6月に自身の会社株式会社HARESを立ち上げ代表取締役社長を務める。「二兎を追って二兎を得られる世の中をつくる」がモットー/NPO法人ファザーリングジャパン理事/Medium Japan Editor

胸をぎゅーっと締め付けられる、悲しい事件が起こりました。

24歳東大卒女性社員が過労死 電通勤務「1日2時間しか寝れない」 クリスマスに投身自殺 労基署が認定

部長「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」「会議中に眠そうな顔をするのは管理ができていない」「髪ボサボサ、目が充血したまま出勤するな」「今の業務量で辛いのはキャパがなさすぎる」

わたし「充血もだめなの?」

— まつり (@matsuririri) 2015年10月30日

@shikotter_ 目も死ぬし心も死ぬし、なんなら死んだほうがよっぽど幸福なんじゃないかとさえ思って、今日は死ぬ前に送る遺書メールのCCに誰を入れるのがベストな布陣を考えてた。

— まつり (@matsuririri) 2015年12月16日

今から帰るんですけど、うけません?

— まつり (@matsuririri) 2015年12月17日

1日20時間とか会社にいるともはや何のために生きてるのか分からなくなって笑けてくるな。

— まつり (@matsuririri) 2015年12月17日

高橋まつりさんのツイートを見るだけで胸が詰まります。

過労死白書は読んだか?

今回のニュースと時を同じくして、厚労省が取りまとめた「過労死白書」が閣議決定されました。

過労死ゼロに向け…世界で例がない初の報告書

こちらは2014年11月に施行された過労死防止法に基づくもの。

資料も含めると284ページにもわたる長文レポートですが、過労死問題に関心のある方もない方も、ぜひご一読頂きたいです。

平成28年版過労死等防止対策白書(厚生労働省)

白書によれば、

将来的に過労死等をゼロにすることを目指し、平成 32 年までに週労 働時間 60 時間以上の雇用者の割合を5%以下、年次有給休暇取得率を 70%以上、平成 29 年 までにメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を 80%以上とする目標を早期に 達成することを目指すこととしている。また、今後おおむね3年を目途に、すべての都道府 県でシンポジウムを開催するなど、全国で啓発活動が行われるようにするとともに、身体面・ 精神面の不調を生じた労働者誰もが必要に応じて相談することができる体制の整備を図ることを目指すこととしている。

とのこと。具体的な数値目標を掲げているので、ぜひ実現に向けてやりきって頂きたいものです。

なぜ過労死はなくならないのか?

NewsPicksにも書きましたが、僕自身友人を過労死で亡くしているので、過労死問題に対しては昔から関心をもっています。

「こんな報告書が出ること自体が社会の恥だ」というコメントもあるが、こうした社会の恥を晒すことで、変えていこうという政府の気概と覚悟を感じるので、僕はむしろプラスだと思います。

ワークライフバランスではなく、ワークインザライフ。

仕事は、それによって人生を充実させることもできるが、人生を転落させることもできてしまう諸刃の剣です。

仕事はかけがえのない人生(The Life)のうちの要素の一つにすぎず、仕事によって人生を飲み込まれてしまうのは本末転倒。

もちろん、本人の完全なる自由意志に基づくハードワークは否定しないし、僕もハードワークしていた時期はあるけれど、「やりがい・成長」をダシにした使用者(経営者・管理職)の強制的な過労は絶対に根絶しなければなりません。

そんな中、驚いたのがとあるプロピッカーのNewsPicks上での「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない」という趣旨のコメントです。

NewsPicksというパブリックの場で、かつ大学教授でプロピッカーという立場の方の発言ということもあり、ちょっとした炎上案件になっていますが、こうした感覚は彼らの世代の「常識」なのでしょう。

その後ご本人がNewsPicks上で謝罪・訂正コメントをされましたが、「情けない」はさすがに酷すぎると思うものの、過労自殺された電通社員の高橋さんを貶めようとしての発言ではなく、「上司を説得してでも」「それでも駄目なら転職を」というアドバイスはごもっともです。

ただし、それは「言うは易く行うは難し」な善意からなる正論なんですよね。

また「残業した経験がないからこんな発言が出来るんだな」というコメントもありましたが、それは恐らく違います。

むしろ逆で、長谷川さん自身が若かりし頃、20〜30代をモーレツ社員としてそれこそ昼夜を問わず、休みもなく働いていて、出世競争を勝ち抜き、その後の素晴らしいキャリア(一部上場企業を中心として、10年以上のCFO経験を持つ)を築かれたという自負があるのでしょう。

いま、日本を代表する大手上場企業の経営陣、管理職の方々は、恐らく同じ成功体験を経験しているはずです。だからこそ、「若い頃に寝る間を惜しんで働くことが、必ず将来につながるぞ!」と悪気なく、むしろ善意でハードワークを促すのです。

「善意のアドバイス」が一番厄介です。悪気はないので、反論しようものなら「目上の人の言うことは素直に聞くもんだ!」と激昂してしまう。

こうした「成功体験の押し付け」が過労死を生んでいるのです。

成功体験から自らを解放し、ゼロベースで考えられる人は極めて少ないです。僕ですら、30年後に下の世代へ自分の成功体験を押し付けているかもしれません。

だから、そうしたハードワークによる成功体験を持った方々が経営の意思決定を握り、現場をマネジメントしている限り、過労死は永遠になくなりません。

働けば働くほど儲かる時代は終わった

日本の高度経済成長を長時間労働が支えたのは事実でしょう。でも、長時間労働があったから高度経済成長ができたのだ、というのは誤りです。

高度経済成長のトリガーは朝鮮戦争による特需やそれに応えうるイノベーションの誕生と政策の成功であって、長時間労働ではありません。長時間労働がなければ高度経済成長は実現できなかったか?というと、果たしてどうでしょうか。

会社単位で考えてみましょう。

今、アベノミクスによる好景気が続いているので、多くの企業で売り上げが伸び続けていますが、売り上げが伸びたから忙しくなっているのであって、たくさん残業したから売り上げが伸びているわけではありません。

売り上げが伸びているのは、景気が良くなっているという外部環境に加え、ニーズに応える優れた商品を生み出せたからであって、長時間労働は優れた商品を生み出す必要条件ではありません。

別の観点で考えてみましょう。

経済学の基礎用語に「限界効用逓減の法則」というものがあります。


大好きな松坂牛も、最初の方はたまらなく美味しいのに、お腹いっぱいになればなるほどありがたみがなくなるアレですね。

労働時間に関しても同じです。

多くの方は労働時間を投入すればするほど、総労働時間に比例して生産量が増えると思いがちですよね。確かに、工場的な発想で考えればその通りなのですが、実際は異なります。

実際には、労働時間を投入すればするほど、ある閾値を超えてからはほとんど生産量は増えなくなり、さらにある閾値を超えるとむしろ総生産量は落ちるのです。

「仕事ができないからもっと働け!」は誤った指示で、

「働けば働くほど仕事ができなくなる」というジレンマに陥るのです。これぞ囚人のジレンマですね。

囚人のジレンマから考える「非合理的な残業」をしてしまう理由

どうしたら過労死を減らせるのか?

過労死がなくならない理由について端的に言えば、長時間労働による成功体験を持った方々が意思決定権を握り続けていることが主因だと思っています。

上記が真だとするならば、解決策は2つしかありません。

現在意思決定権を持った方々の意識を変える
新しい価値観を持った世代に意思決定権を譲る
のいずれかまたは両方ですね。

ただし、いずれも急速に進められるものでもありません。

ではどうするのか?

コタエはシンプルです。

僕ら20〜30代の新しい世代が、長時間労働を前提としないマネジメントによって、長時間労働を前提としたマネジメントよりも圧倒的な成果を出すしかありません。

論理は経験を超えません。

どんなに理論を振りかざして長時間労働を辞めるべき!と説いても、成功体験が理解を妨げます。

でも、同じ職場や経営者仲間で、長時間労働を前提としないマネジメントによって、従業員満足度の高い職場を実現し、なおかつ圧倒的な成果をあげていたらどうでしょうか?

新たな事実は、過去の経験を凌駕します。

先日、とある上場企業の最年少部長とお会いする機会がありました。年齢にして27歳。ダントツの最年少だそうです。

伸び盛りのマーケットに身を置く事業部にも関わらず、売上はずっと横ばい。違和感を感じた彼はすぐに「長時間労働、目標管理システム、多様性のない職場が成長を妨げている」と見抜き、売上目標を廃止し顧客満足度のみをKPIに置き、リモートワーク制度を導入して出社は週一のみでOKにし、クラウドソーシングを徹底活用することでコア業務以外の雑務は全てアウトソースすることで労働時間を劇的に削減しました。

その結果、たった一年で売り上げが3倍近くに伸びたそうです。3倍ですよ。3倍。

当初はなりふり構わない彼の改革を他の部長陣は絶対に上手くいくはずがない!と穿った目で見ていたようですが、今では教えを請われる立場になったそうです。

この上場企業は部長陣に大きな裁量権を委ねていること、彼を信頼して他の部長陣から守ってくれた役員の存在があったことなど、彼だけの成果ではありませんが、こうした事例が増えていけば、必ずパラダイムが変わっていくはずです。

そうした事例を増やし、集め、広げる試みこそが僕が理事を務めるNPO法人ファザーリングジャパンの「イクボスプロジェクト」。これから一層活動を強化していきます。

イクボスプロジェクト – NPO法人ファザーリングジャパン

僕が「二兎を追って二兎を得られる世の中」を目指す理由。

僕は昨年6月、27歳の誕生日に自身の法人として株式会社HARES(ヘアーズ)を立ち上げました。

ビジョンは「二兎を追って二兎を得られる世の中をつくる」というものですが、実はこのビジョンよりもさらに上位のビジョン(Primal Vision)があります。

それが、

仕事を通じて幸せになる人を一人でも増やす。

仕事を通じて不幸せになる人を一人でも減らす。

ということ。

「二兎を追って二兎を得られる世の中をつくる」と言い続けているのは、こうした理由からです。

仕事と家庭の二兎を追って二兎を得る。

本業と複業の二兎を追って二兎を得る。

絶対にやってやります。

少しでも共感された方、ぜひ一緒にやりませんか?

ご興味ある方はこちらからご連絡下さいね。

仕掛けます。

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