今回取材させていただいたのは、ママ支援コミュニティHimemama London(ひめママ ロンドン)の代表を務める薫さん。海外でお仕事をされているわけではありませんが、ロンドン在住の日本人女性のためのコミュニティを立ち上げ、精力的に活動をされている女性です。このコミュニティ立ち上げの背景には、渡英によって大きく変わった自分自身を取り巻く環境と、それによる悩みや苦しみがあったといいます。
Himemama Londonとはどのようなコミュニティなのでしょうか。薫さんが住むバッキンガム宮殿のすぐ近く、ウエストミンスター地区のカフェで、お話を伺ってきました。
鎌田 薫(かまた かおる)
イギリス・ロンドン 大学卒業後、明治安田生命の総合職を経てリクルートに入社し、ホットペッパービューティーのweb事業拡大に貢献。マネジメント職昇進を辞退し、ハリウッドビューティーサロンに入社。総支配人として、サロンに関わる業務はもちろんのこと、ハリウッド美容専門学校や化粧品部門の総括、六本木ヒルズ運営などにも携わる。結婚出産を経て、ご主人の転勤とともにロンドンへ。一児の母であり、ママ支援コミュニティ「Himemama London」の代表。
子連れ復帰直前!突如訪れたロンドン移住
ロンドンにいらっしゃる前は、ハリウッドビューティーサロンの総支配人を務めていらっしゃったと伺っています。
鎌田 薫(以下、薫):はい。リクルートを経てハリウッドビューティーサロンに 入社し、サロンで働き始めて6年目で出産を迎えました。産休と育休で1年程お休みを頂いていましたが、休暇の終盤は、子連れでの仕事復帰に向け、子どもを抱っこひもで抱えてよく会社に行っていましたね。
ハリウッドビューティーサロンという会社は、日本で最も歴史のある美容の会社であり、創業以来女性の働き方や社会進出を考えていた会社なので、当たり前のように育児と仕事が両立できる環境が整っていました。そして、私が入社してからも、その環境整備および改善は続けていましたから、いつ復帰しても不自由なく働ける環境でした。
それで、復帰前から意気込んで、よく会社にも行っていたんです。
そんな風に過ごしていると、ある日突然、ロンドン転勤が決まったとの報告を夫から受けたんです。
その時の率直な心境は?
薫:夫の仕事の都合上、海外転勤があるというのはわかっていたんですが、想定よりも早かったんですね。復帰に意気込んでいた分、落胆したというのが正直なところでした。
とは言うものの、ロンドンに一緒に行かないという選択肢はありませんでしたから、駐在人の妻として渡英しました。それが、2016年6月のことです。
「今の私にはバリューがない...」ひどく落ち込んだロンドン生活3ヶ月目
ロンドンに渡ってからの生活はいかがでしたか?
薫:渡英してしばらくは、新しいことだらけで刺激的なんですよ。慣れるのに精一杯ながらも、それなりに楽しい生活をしていました。でもそれも、数ヶ月すると慣れが来るんですね。
非日常だったものが、日常になり・・・ということですね。
薫:そうです。ひどく落ち込んだのが、ロンドン生活3ヶ月目のことでした。
今まで日本では、本当にありがたいことにやりたいことは何でも出来ていたんです。それは、私がすごいとかではなくって、周りにはたくさんのできる方たちがいっぱいいてくれて、「何かやろう!」って言ったら、仕事においてもプライベートにおいても自己実現ができる環境でした。でも、こっちに来てみたら、自分の語学力が低いばかりに人にお世話になってばかりで、仕事だってできない。家のことと子育てのことで毎日がただただ過ぎ去って行く。子育ての場所が日本から、ただロンドンに変わっただけなんです。
「いま、私がいてもいなくても、何も変わらない。今のわたしには価値がない」
そんな現実に耐えきれなくなって、夫にこんなことを言ったこともありましたね。そして、いつだって「○○ちゃんのママ」。自分はどこかに行ってしまったようでした。
そんな時にいただいたのが、Himemama(ヒメママ)のロンドン支部立ち上げのお話でした。
お話をいただいた時はどんなお気持ちだったんですか?
薫:そんな自信のない状態でしたから、「大したことはできないかもしれません」最初はそんなお返事をさせてもらったんです。そうしたら、「カフェでのお茶会の様子や、ロンドンの日常を写真に撮ってブログにアップするだけでもいいの、そういった事から始めてみたらいいんじゃない?」ってHimemama 代表の坂上愛佳さんが言ってくれたんです。
そういった小さなことだったら今の私にもできるかもしれない、そう思って引き受けさせてもらったのが、Himemama Londonの始まりです。
母である前にひとりの女性。想いを同じくしたママが、自分の周りにもたくさんいた
▲Himemama Londonのメンバーの皆様と薫さん(写真下、中央)
周りのママ友達と少しずつ始めていったんですか?
薫:Himemamaの相談の前に、まずはママ友達に自分自身の悩みを、思い切って打ち明けることをしてみたんです。そうしたら、びっくりすることに、ママ友達も同じような悩みを抱えていたんですね。
そうしてみると、出てくる出てくる、それぞれの悩みやこれまでの仕事の話。
「ロンドンに来たら仕事何してたとか誰も話さないから、今まで話せずにいたんだけど...」
「私も普段は子どもの話しかしないし、そういった話をしていいのかどうかもわからないからしなかったんだけど...」
と、その時に初めて、「〇〇ちゃんのママ」ではなく、ひとりの女性として自分たちの話をたくさんしました。
そこが、コミュニティのコンセプトにも関わってくるんですね。
薫:そうなんです。こんなに想いを同じくしたママが集まっているんだったら、こんな話ができるコミュニティつくろう!そうやって、Himemama Londonの「ママ(わたし)が主役のコミュニティ」というコンセプトが生まれたんです。
ロンドンは子育てがしやすい地域で、プレイグラウンドが各地にたくさんあるんですね。だから、情報さえゲットできてそこに足を運べれば、子どもを軸にママ友はいくらでもできちゃうんです。でも、自分のことが話せる友達を見つけられるかというとまた別の話です。
Himemamaは、子どもではなくママが軸だから、自分のことをたくさん話せる場所でもあります。もちろんママじゃなくても全然OK、自分自身が主役になれる場所をつくりました。
そして、駐在の方も永住の方もミックスにもしているんです。
それはどういった想いからですか?
薫:先にも言ったように、自分の身近な所でママ友達を作ろうと思ったら簡単なんですね。ただ、簡単で困らない分、その世界で終わってしまいやすい。せっかく日本から遥々やって来て、行動範囲がその地域だけになってしまったり、自分たちの生活しか知らなかったりするのって勿体無いじゃないですか。
代表も、駐在の代表である私と、永住の代表をもうひとり置き、2人体制にしています。
元バリキャリが集まったら、コミュニティ運営がすごいことに
▲Himemama Londonホームページに並ぶ、たくさんのイベント情報
いまどのくらいロンドン在住女性が集まっているんですか?
薫:今運営を初めて8ヶ月になるのですが、現在150人がコミュニティに参加してくれていて、7人がスタッフとして運営に関わってくれています。(※2017年11月時点)
HPを拝見しましたが、積極的にイベント活動などもされていますね。
薫:そうですね、月に5-6本くらいはイベントをやっています。それも、既に他で実現できているものではなく、Himemamaでしかできない新しいことを常に考えてやっています。
最近では、私たちから企画するのではなく、逆に、Himemamaでイベントをやりたいという依頼をいただくことが多くなっています。先日は、日本の子ども服ブランドの企業様から、ロンドンとパリ出店に向けてプロモーションのお手伝いのご依頼を頂いたりと、Himemama活動の幅がどんどん広まっているんです。
企業様のお手伝いまで!すごい!とても忙しそうですね(笑)
薫:有難いことですね。スタッフ7人で役割分担をしながら、これまで仕事で活用してきた知識をフル活用しながら、楽しくやっています。
例えば、コミュニケーションおよびタスク管理ツールはslack(※)を利用していて、議事録フォーマットなんかもあります。イベントは2、3人のグループで動かしているのですが、担当者が自由にやりたいことができるようにしていて、議事録通りに話を進めていけば簡単にイベントが出来上がるよう、仕組みに落とし込んでいます。代表に相談がくるのは困った時だけで、自由に楽しくやるために、みんなでたくさんの工夫をしています。
こういった工夫は、それぞれのメンバーから出てきた発案なんです。
※slack・・・ビジネス向けのチームコミュニケーションツール。
▲スタッフ間のコミュニケーションツールのslackとコミュニティのチラシ
みなさん、日本ではどんなお仕事をされていたんですか?
薫:外資系ITコンサルに、外資証券会社に、教育ITコンサルに、外資系ホテルの人事に...
...バリキャリな上に、ハイキャリア!!!!
薫:そうですね、みんなバリバリ仕事をしていたけれど、旦那様の転勤で仕事をやめてロンドンにやってきたメンバーです。
「日本にいなかったら送らなかっただろう人生を、一生懸命楽しみたいね」と、最近はみんなでそんな風に話しています。こんな活動をしながら、子育てにどっぷり浸かっているのもいいんじゃないかなって。海外に来なかったら、きっとこんなに立ち止まることはなかったんですよね。
きっと日本にいたら、ノンストップでバリバリ働いていたんでしょうね。
薫:そうだと思います。バリキャリって言葉があるなら、バリママだっていいじゃん♪なんて思っています。
▲想いを同じくしてHimemama Londonに集まった、ロンドン在住女性とお子さんたち
今後Himemamaで「こんなことを実現したい!」って何か考えていらっしゃることはあるんですか?
薫:Himemama Londonとして考えていることは2つあります。
まず1つは、ずっと続いていくコミュニティにすることです。例えば、中心として動いていた駐在人がいなくなってしまうことでコミュニティが衰退していくというのはよくあることです。現に、私も主人の任期は2年なので、来年には日本に帰る予定です。せっかくここまで創ってきたコミュニティを、そうはしたくない。だから駐在と永住がミックスだし、スタッフ全員が自立して運営できる状態になっています。
もう1つは、安心して渡英して来れる受け皿になりたいと思っているんです。例えばそれは、渡英に必要な情報が得られる場所かもしれないし、繋がりを作れる場所かもしれません。今ここにいる私たちも同じように悩んできたことだから、きっと役に立てることが多いんじゃないかなって思うんです。
Himemama London(ひめママ ロンドン)
ホームページ:http://himemama.com/himemama-london/
facebookページ:https://www.facebook.com/himemama.london/
\\ 薫さんが講師を務めるイベントのお知らせ //
『ワーママのための、やりたいことの、みつけ方・育て方〜メンターから学ぶ・スキルアップ講座〜』と題して、「やりたいことがわからない・やりたいことをどう実現していいかわからない」という悩めるママのためのオンライン講座が下記日程で開催されます。自分のワクワクに従って、新しい事業を沢山立ち上げてきた薫さんに、未来のヒントをもらえるチャンスです♪
ワーママのための、やりたいことの、みつけ方・育て方【メンターから学ぶ・スキルアップ講座】
https://mentor-06.peatix.com/?lang=ja
[日時] 2018/06/09 (土) 14:00 - 15:00
[会場] オンライン
インタビューを終えて
2018年4月、旦那様の任期終了とともに日本にご帰国されたとの連絡を頂きました。私が取材させて頂いた後、会員は250人まで増えられたとのことで、Himemama Londonがいかにロンドン在住の日本人女性に求められているかが伺えます。
「日本に帰ったら、今度は、元ロンドン在住コミュニティが出来たら面白いな〜なんて思ったり、今のスタッフは、日本で仕事していただけでは絶対に出逢えなかったドリームチームなので、一緒に仕事してみたら面白いな〜なんて思ってるんです」そう話してくださっていた薫さん。今の彼女の頭の中には、どんな素敵なアイデアが隠れているんでしょうか♪これからのご活躍、とても楽しみにしています。