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仕事と家庭の両立は女性だけの問題?両親以外のロールモデルを知ろう ── 治部れんげ

仕事と家庭の両立は女性だけの問題?両親以外のロールモデルを知ろう ── 治部れんげ

仕事と家庭の両立は女性だけの問題?両親以外のロールモデルを知ろう ── 治部れんげ

前編では、企業が女性活躍に消極的な理由、女性の意識を変える必要性などについての治部さんの見解を紹介しました。

後編では、女性はどう考え方を変えたらいいのか、企業はどう対応すればいいかなどについてのお話を伺います。

治部 れんげ(じぶ れんげ)

ジャーナリスト 昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員・同大学女性文化研究所特別研究員。Toshima & Associates副代表。1997年一橋大学法学部卒。1997年より2013年4月まで、新聞社系出版社で経済誌の記者を務める。2006~2007年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。アメリカ共働き子育て夫婦の先進事例を調査。報告書”How American Men’s Participation in Housework and Childcare Affects Wives’ Careers”と著書『稼ぐ妻・育てる夫』(勁草書房)をまとめた。夫婦の家事育児分担について『ふたりの子育てルール』(PHP研究所)に記している。

仕事と育児の両立 女性だけが自分ごとと考えている

両立不安白書では、出産経験がない女性の約9割が「仕事と育児の両立に不安を感じる」と答えています。この結果は、女性ほど「結婚後に仕事と家庭のバランスを考えるのは自分たちがすべきこと」という考えが強いことを示していると捉えられます。なぜだと思われますか?

治部 れんげ(以下、治部):両親をロールモデルにしているからでしょう。「父親=長時間労働する人、母親=家事育児とする人」というイメージを自然と持ってしまうんです。

でも昔のように専業主婦世帯は多くはなく、共働きが普通になっています。時代の移り変わりとともに考え方を変えないといけないのですが、未だに女性の中には「子どもができたら家事と育児を担うのは女」という思いが残っているから苦しくなる。夫は何もやらない前提なのは良くないです。

女性活躍を促すために、企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか?

治部:男性従業員が夕飯の時間に自宅に帰れるようにすることです。夕方から夜の忙しい時間帯に夫が家にいる日が増えれば、妻の負担は減ります。

男性ももっと家事や育児を自分ごと化しようという意味では、企業の方が個人よりも真剣に取り組んでいるかもしれません。現に、男性の育休取得の推進などを行なっていますからね。

問題なのは、大学や高等教育だと感じています。学生が就職前に、両親以外の様々なロールモデルを目にして、考え方を柔軟にしないといけない。たとえば男性の保育士、女性の大工などを見せて、「男の職業、女の職業」という思い込みを外すための機会を与えるんです。

不当な扱いをされていると感じたら、転職サイトに登録しよう

女性が今できることをお伺いしたいです。もし現在の勤務先で女性であることを理由で不当な扱いを受けた場合、どのような行動をとればよいでしょうか?

治部:個別のケースで違うので、一概には言えませんが、まずは転職サイトへの登録を勧めています。企業の中には女性を積極的に採用したいところもあるので、本人の能力や市場価値が高ければ、現在の給料よりも良い条件で転職できる可能性があります。

登録後、企業からの反応が芳しくなければ、今の職場でスキルを磨けばいいのです。転職に向けて行動することで現在感じている不快感が、本当に不当な扱いからなのか、自分の思い込みからなのかをつかめます。

ただし、セクハラや深刻な人権侵害を受けている場合は、人事部や弁護士に相談する必要があります

女性は男性に比べて交渉をしない傾向があるという事実をふまえ、企業は働く女性をどのようにサポートすればよいとお考えでしょうか?

治部:声がけする頻度を男性よりも増やすことが大切です。例えば、男性が1回の声かけで昇進試験を受けるとすれば、女性に対しては5回行う、という感じです。

その際には昇進させたり、社内で重要なポストに就けたりしたい理由をしっかりと説明することが大切です。男性は、先輩や上司などロールモデルがたくさんいるので自分の将来像がイメージしやすいです。対して女性は手本が少ないため、これからのキャリアへの不安が強いんです。

あとは、会議の時に発言しない人に発言の機会を与えて、意見を吸い上げる工夫も必要でしょう。

普通の人の発信が大事「自分にもできるかも」と思える

セミナーではSNSの発達によって以前よりも男女の不平等などを発信しやすくなった点を挙げられました。発信の際に工夫することはありますか?

治部:たとえば、自分の働きかけで夫が家事・育児への意識を強め、現在は夫婦で家事育児を協力している女性がいるとします。夫が変わるに至った過程を具体的に書いて発信すれば、それを読んだ女性は、「夫に言ってみようかな」「自分にもできるかもしれない」と感じるかもしれません。

普通の人が発信することで、読んだ人が自分に置き換えて考えやすくなりますよね。男性からの投稿の場合は、いかにもイクメンという人じゃない方が良いこともあります。

以前私が都内で保育園の保護者向けに講演した際、ある男性がした話が印象的でした。「子どもが病院に毎週行くから、特定の曜日は遅刻か早退したいと上司に言ったら、大丈夫だと言われただけではなく、在宅でもいいと言われた。意外と言ってみるとどうにかなるかもと思った」と話していました。もしかしたら、本当は働きやすい環境を手に入れられるのに、できないと思い込んでいるだけかもしれません。

幼少期に様々な男女像を見る機会を増やす

「女性はこうあるべき」という固定観念にとらわれないようにするには何が大切でしょうか?

治部:男らしさ、女らしさと決めつけないことが大切ですね。小学生になる息子は赤ちゃんが大好きですが、学校で友達から「赤ちゃんの世話は女の子のやること」と言われ、「誰が決めたのか」と反論したそうです。

素直で頭が柔らかい幼少期に、様々なモデルケースを見せることに尽きるかなと思っています。

娘は東京都の小池百合子知事を見て、女性がトップに立っていることに驚いていましたが、それによって「女性が組織の長になるのは普通のこと」という意識を持てるようになったと言えます。小さい時にこのような考えを持つことで、仕事や子育てに対する前提が変わっていくと思うんです。

編集後記

性別での役割の決めつけは、生きづらさの一因にもなります。どのような選択をするかは、本来は個人の自由なはずです。

筆者(男性)は息子をベビーカーに乗せて散歩した際、「ママは?」「パパがひとりで赤ちゃんを連れて偉いわね」などと言われたことがあります。また、家庭を優先した働き方をすると、「なぜ奥さんにやってもらえないのか?」という発言をされたことがありました。世間的には、「育児は母親がやること」という意識が強いことを痛感した出来事でした。

このように、「男性は外で仕事、女性は家庭で家事と育児」という社会に根付いた考え方を変えるには、治部さんが話すように、生き方において両親以外のロールモデルをたくさん見ることが大切だと感じました。