先日、47都道府県の知事で構成される全国知事会は、11月28日の会合で、各都道府県で「イクボス」を増やす方針を表明となる「イクボス宣言」を行い話題となりました。(参考:「イクボス」増やそう 全国知事会、全会一致で宣言)
ここでは、働きやすい職場を作るために欠かせない存在として「イクボス」が求められている背景と、その果たすべき役割について解説していきます!
「イクボス」とは?
そもそも「イクボス」って何?という方向けに、まずは言葉の定義から見ていきましょう!
ファザーリング・ジャパンが運営している「イクボスプロジェクト」では「イクボス」を次のように定義しています。
「イクボス」とは、職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことを指します(対象は男性管理職に限らず、増えるであろう女性管理職も)。
ポイントは、上司自らが仕事とプライベートの両面で充実した生活を送り、それを積極的に部下に伝え、奨励するという点です。
職場の雰囲気は上司の言動によって大きく左右されます。仕事以外の面にも理解がある上司の下であれば、部下もモチベーション高く本来の仕事でも良い成果を発揮するはずです。
なぜ「イクボス」が注目されているの?
では、今なぜ「イクボス」に注目が集まっているのか。その時代背景について見ていきましょう。
1.仕事も家庭も充実させたい男性の増加とそれが叶いにくい現状
みなさんの周りでも、家事や育児に積極的な男性がいませんか?「イクメン」という言葉がすっかり定着したように、仕事も家庭も共に充実させたいと考える男性が増えています。
ちなみに「イクメン」が流行語大賞にノミネートされたのは2010年の出来事でした。
その一方で、男性の育児休業の取得率は2.65%(※)と低調で、なかなか浮上の兆しが見られません。その妨げとなる最大の理由は「職場の雰囲気」です。そしてそれに最も大きな影響力を持つのが「上司」という存在です。そう、時代はイクボスを求めているのです!!
(※「平成27年度雇用機会均等基本調査」より)
2.企業の慢性的な長時間労働の問題
悲しいことに、日本では長年に渡って「労働生産性の低さ(※)」が指摘されています。先日の電通の一件では、まさに長時間労働による弊害が浮き彫りになった出来事でした。(関連記事:なぜ過労死はなくならないのか?)
20〜30年前までは良しとされていた「モーレツ社員」はもはや過去のものです。生産性を上げ、今の時代にあった働き方にアップデートすることが強く求められています。
※日本生産性本部の「日本の生産性の動向2015年版」によれば、日本の順位はOECD加盟国34か国中21位となっています。
3.上司に求められる「マネジメント」の変化
従来の「終身雇用」を前提とした企業のあり方が崩れたことによって、上司に求められるマネジメントにも変化の必要性が生じています。
これまでは、「20〜40代くらい」までの働き盛りの「男性」がメインで、転勤や異動にも従い、長時間労働もいとわない「時間や場所に制約がない」「正社員」が多くの企業の大多数を構成してきました。
しかし、今は「男女問わず」「雇用形態や働き方が異なり」、家庭の事情などによって「時間や場所に制約がある」というような、以前であれば“会社を辞めることになっていたであろう社員”の割合が増えてきています。
つまり、社員が会社の絶対的なルールに従うという時代から、会社が社員の事情に歩み寄っていく時代へと変化していると言えます。
それによって、管理職も企業が最大限の成果を上げるためには、画一的なマネジメントから、社員一人ひとりが最大限に力を発揮できるように、環境を整えるという方向性でのマネジメントへと変化が求められているのです!
これぞ「イクボス」の鏡!イクボスアワード2016受賞者の取り組み
それでは、今どういった取り組みが実際に「イクボス」として評価されているのか、ここでは先日行われた、『イクボスアワード』で受賞された方々の事例をご紹介します!
<イクボス事例:その1> |
森田さんは部下の保育園の送迎に配慮した打ち合わせ時間の設定、iPadの活用による情報共有・業務の見える化促進など、育児期間中の社員の仕事と家庭との両立に配慮するといった取り組みを行いました。
また、職場の様子や共有したい情報について自ら動画を作成し、月に1度定期的に上映会を開催するなど、上司・部下の距離感を縮め、風通しの良い職場を実現するために尽力されています。
<イクボス事例:その2> |
弘前警察署長を務められている齊藤さんは、職員が育児休業を取得しやすいよう働きかけ、なんと男性警察官による初めての育児休業取得を実現されました。
さらに、2016年7月には県警全署長等がイクボス宣言を実施するなど、警察組織全体のワークライフバランスの推進の象徴的な存在となりました。
<イクボス事例:その3> |
井上さんは産休→育休→時短復帰→フルタイム転換→昇格というキャリアを歩まれ、育児をしながら働く社員のロールモデルとして活躍されています。
その中で、自主的に育児休業中の女性社員をネットワーク化し、悩みを持つ社員に個別に「ママ面談」を行うなど、イクボスぶりを発揮。これが社内で好評で、昨年からは「パパ面談」も開始されるなど、社内の働きやすい環境づくりに大きく貢献されました。
まとめ
今後「イクボスがいる職場」と「そうではない職場」では、働きやすさの面でも、業績の面でも、大きく二極化が進んでいくことになるでしょう。そういった情報を多く発信している企業に人は集まり、そこに理解のある上司がいれば人は定着します。(その逆もまたしかり)
企業内においても、業績や人材の定着、労働環境の向上に大きな影響力を持つ「イクボス」の存在は、さらに重要度が増すはずです。
上司自らが仕事もプライベートも十分に満喫し、部下にもそれを積極的に奨励していく。それがやがて部署の外にも広がり、会社全体へと浸透する。そうやって活き活きと働ける会社が1社でも増えることで、社会全体の活性化へと繋がっていくのではないでしょうか。