医療・介護業界に必要な「複業・パラレルキャリア」という選択肢 ── 細川 寛将

医療・介護業界に必要な「複業・パラレルキャリア」という選択肢 ── 細川 寛将

医療・介護業界に必要な「複業・パラレルキャリア」という選択肢 ── 細川 寛将

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細川 寛将(ほそかわ ひろまさ)

作業療法士/保健学修士/パラレルキャリア・複業療法士 / 記憶術講師/ 医療法人で中間管理職(高齢者施設施設長・他)しながら株式会社、一般社団法人、NPO法人などで役員してたりします。パラレルキャリアでPTOTがやりたいことをやり、リハビリテーションの可能性が最大化できる社会を目指してます。

初めまして、細川 寛将と申します。私は現在、作業療法士をしながら、パラレルキャリアとして株式会社、一般社団法人、NPO法人などで役員を務めています。

今回はそんな医療・介護業界に従事する私から、医療・介護業界における働き方の問題点、なぜ医療・介護業界に「複業・パラレルキャリア」という選択肢が必要なのか、という点についてお伝えしていきたいと思います。

これまでのキャリアの歩みと「複業」や「パラキャリ」をはじめたきっかけ

私は学生時代にリハビリテーション専門職である「作業療法」専攻の大学卒業後国家試験を取得し、多くの同期が歩むのと同じようにして総合病院に就職しました。

その頃、将来のキャリアとして考えていたのは「大学の先生」でした。そのため、卒業後に大学院進学をストレートに考えましたが、お世話になる予定だった先生が遠方の大学に移られるということもあり一旦就職をしました。当時を考えると今の働き方は微塵も想像していませんでした。

就職してからは、回復期リハビリテーション病棟に配属され脳卒中後遺症や足を骨折された高齢者の方をメインにリハビリテーションを行う、どこにでもいる作業療法士でした。ただ、将来大学の先生になるモチベーションは維持していたので、学会の発表や共同研究の手伝いは積極的に行っていました。

就職して3年経った頃から「そろそろ大学院に行こうかな」と思い、4年目から社会人大学院生として母校の大学院に通いはじめました。当時はとにかく専門性を突き詰めることしか考えていませんでした。

そんな中、就業先の先輩が病院で働きながら休日を活用して自分で勉強会を主宰され、治療の知識や技術を県内外問わず多くの方に教えており、その手伝いをしていました。振り返ってみるとその活動が自分の「複業・パラレルキャリア」のスタートと言えます。

もうひとつ、その年に大きな転機がありました。

同じ病院で仲の良い後輩から大晦日にいきなり「今からお話できますか?」とメールがきたのです。何のこっちゃわからなかったんですが、とりあえず自分の家の傍まで来るとのことだったので喫茶店で待ち合わせをして会いました。

今でも忘れられないんですが、むちゃくちゃ鬼気迫る表情だったことを覚えています。そこでいきなり彼から「細川さん、僕自身難病になって将来歩けなくなるかもしれません。病院で理学療法士として勤務することはできなくなります。でも結婚もしたいし、子どももほしいです。何かアドバイスください」と言われたんです。

聞けば「副腎白質ジストロフィー」という難病を患い、どうしていいか悩んで「細川しかいない」と思って相談をしてきたようなんです。普通なら個々の判断に委ね過ぎるなど、過度なストレスがかかるケースも多くあり、話を聞くだけとか、励ましの言葉とかで終わってしまうと思うんですが、そういうことを僕自身も冷静に考えられないくらい、ただ、ただ、鬼気迫る表情というか、雰囲気に圧倒されました。

あと、彼がわざわざ自分を選んで遠方から相談をしてきてくれたことに何とか報いないといけないと思って「じゃあ、身体が動けなくなってもしっかりと自分で稼げるように一緒にやろう。協力するよ。」と相手に安心感を持ってほしい一心で、半ばノリで返答したのを記憶しています。当時は独身だったのでこんなことを“ノリ”で言えたのはありますね。そのエピソードが、自分が本格的に複業やパラレルキャリアをやるきっかけになりました。

その後は、週の半分は自分の家に泊めて、2人でどういった事業に取り組むかを考え、実践していました。第一優先は歩けなくなった場合でも行える取り組み。それでインターネットで構築できる事業を少しずつ初めていきました。約1年くらいそんな生活をしていました。

もちろんその間に大学院も行っていたので睡眠時間は2-3時間でしたが、若かったので何とかなりました。今は2人とも当時勤めていた病院を辞めていますが、取り組んだ事業(インターネットEC事業)が中国に工場を持ち、社員を雇いながら運営できる事業にまで成長しています。現在は彼が一手に行っていますが、彼とは今でもビジネスパートナーとして様々なことに取り組んでいます。今思えば、「彼のためになんとかしなきゃ」という想いで必死にやってきたことが、結果的に自分のためにもなった感じで、感謝しかないです。

それを機に、複業やパラレルキャリアという「働き方」や「キャリア」について興味を持つようになっていき、色々勉強したり、それを体現できる就職先を探しました。探す中でご縁があり、訪問看護ステーションに移り、それと同時期に東京でリハビリテーションメディアサイトの起ち上げに役員として関わりはじめ、本格的に複業・パラレルキャリアの道に進みました。現在は医療法人の中間管理職(高齢者施設施設長)や株式会社の役員、一般社団法人やNPO法人の理事を兼任して行っています。ただ、今でも大学の先生になりたいという夢は諦めていません(笑)


▲きっかけを与えてくれた“彼(右端)”と複業の事業拡大にむけたカンボジア視察の様子

<キャリアの歩み(時系列)>
♦2009年~2013年:社会医療法人財団新和会 八千代病院(回復期リハビリテーション病棟で作業療法士として従事)
*2012年:社会人大学院に進学(2014年に修了)・週末に先輩の勉強会のお手伝いを行う
*2013年:後輩から相談をうけ本格的に複業・パラレルキャリアを実践し始める
♦2013年~2015年:有限会社RK(訪問リハビリ業務、デイサービス相談員として従事)
♦2013年~2016年:株式会社メディカルエージェンシー(取締役・リハビリメディアPOST副編集長として従事)
♦2015年~:医療法人陽明会グループ(在宅緩和ケア住宅まごころの杜 施設長として従事)
♦2015年~:Shuha-Re Project(個人事業主登録)
♦2016年~:株式会社クリエイターズ(取締役・CoMedi編集長として従事)
♦2016年~:一般社団法人 ベル学術振興機構(理事・ウェディング介護事業技術担当として従事)
♦2016年~:特定非営利活動法人 リハビリコラボレーション(副理事として従事)
♦2017年~:一般社団法人 医療福祉支援協会(理事として従事)
♦2018年中(予定):一般社団法人 守破離(起ち上げ準備中:代表理事として従事予定)

医療・介護業界における働き方の問題点

自分自身が考える医療・介護の働き方の問題点は「4つ」にまとめられると考えています。

1.社会保障という「プラットフォーム上」の職業

平成30年には医療・介護保険の同時改定がありますが、改定により得られる報酬が変化するのが医療・介護職の宿命です。少し飛躍した表現をすれば「株式会社日本国」のプラットフォーム上で働いている身になります。

何事もそうなのですが、こうしたプラットフォームに依存する働き方というのはやはりリスクがあると考えます。また、今現在の診療報酬・介護報酬の仕組み自体は「個人の技術」が尊重されているとは言い切れません

例えば、腕がいい外科医とそうでない外科医でも同じ術式の場合、得られる報酬が同じだったりします。腕がいい理学療法士と新人理学療法士でも得られる報酬は同じ。もっと言えば、新人が同じ効果を出すのに20分かかることをベテランが5分で行ってしまった場合。20分「身体をしっかり見てくれた」新人が患者から賞賛され、5分で治療したベテランが「しっかり見てくれなかった」とクレームになることもあります。

腕のいい外科医が自由競争の米国に行ったり、腕のいい理学療法士が自費のコンディショニングサロンを開いたりする現状もあり、頑張って実力を磨いているのにも関わらず、実力がある従事者にインセンティブが得られにくい仕組みとなっているのは「キャリアパス」としては大きな問題です。

2.2040年・2045年問題

これはあくまでも仮説レベルなのですが、高齢者人口のピークが2040年でそれ以降に高齢者人口が減るとの試算が出ています。国策で団塊の世代が後期高齢者になる2025年以降に合わせて増産された医療介護職にとってみれば、対象者が減ることは死活問題にもなりえます

なおかつ2045年にはAIが様々なテクノロジーを代替すると言われており、仮説通りになれば多くの医療・介護職は「対象者減」「生産性の高まり」により仕事がなくなってしまうリスクがあります。仮にそうなった場合に求められるのは自分自身の売り・独自性です。これを見出せずに大勢の中の一人になってしまうと雇用自体危うくなってしまう可能性すらあります。

3.過度な労働集約型・サービス残業が当たり前の働き方

医療分野については、今年に入り「働き方改革」に関する様々な検討会が行われ、報告書としてまとめられるなど医師や看護師の働き方に対して新たな提言がなされました。介護分野でも、「処遇改善加算」が見直されるなどキャリアの在り方が見直されてきています。

2025年以降患者数が増加していく状況の中で、現状の働き方では長時間労働、過労死といった社会的な問題が増加する可能性が高まります。

これまでは、サービス残業や過剰な休日出勤などにより医療・介護職の自己犠牲を伴う負担や、個々の判断に委ねていて過度なストレスがかかるケースも多くあり、益々この問題が広がるのではとの懸念もあります

ゆえに、今後はより高度で多種多様な医療・介護サービスを提供する必要性が高まるとともに、より高い効率性(生産性)が求められることになります。これらを可能とするためには、働き方を抜本的に変えていく必要があります。

4.潜在看護師・介護士を活かしきれていない

これは一般的にも言われていることですが、「一億総活躍社会」や「女性の社会進出推進」が叫ばれている昨今において、出産や子育てというライフイベントを経てそのまま資格を活かした就業をしない(または、できない)「潜在看護師や介護士」はものすごく多いです。

これに関して、ブランクがあって復帰まで敷居が高くなっていることなどが理由としては挙げられますが、構造的な問題は解決していません。看護師不足や介護士不足の労働力不足を解決するためには、こうした潜在従事者の復帰を促す施策・外部サービスの醸成が必要です

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