高校や大学を卒業して仕事をする……。これは現在の日本では男女ともに当たり前のことですよね。しかし、少し前は「男性は外で仕事、女性は家で家事や育児」が当然の価値観でした。
安倍政権による「働き方改革」が進む今年、女性と仕事の関係は大きな節目を迎えています。今回は昔と今で大きく変化した “女性と仕事の関係” を読み解き、女性の本当の働きやすさについて考えました。
女性の働き方はどう変わった?
今まで女性が社会的にどのような立場にいて、どういった歴史を辿ってきたのかを知ると、今の女性の働き方が見えてきます。ざっくりと辿っていきましょう!
◯1950年以前…女性は男性の補佐役だった時代
「家内」という漢字が表すように、この時代の女性は家の中を守るという役目がありました。ほとんどの日本人が、女性は結婚したら旦那を支え、家事や育児に専念するべきだと考えられていました。
その背景にあったのは「男性一人の稼ぎで家族全員を養うことができる」という社会。大企業に勤めてさえいれば、終身雇用のシステムや手厚い福利厚生などに守られ、一生安泰が約束されていました。
◯1950年代後半〜1970年代初頭…女性の生き方・働き方の選択肢が広がった時代
戦後の高度経済成長期に伴い、少しずつ女性の社会進出が始まります。男性は外で仕事をするのに対し、女性は専業主婦になるか、キャリアウーマンとして外で仕事をするかのどちらかに分かれました。
女性の生き方・働き方の選択肢が広がった時代でしたが、戦前に確立した「男性は仕事、女性は家庭」という意識は日本人の中に根強く残り、男性と差別されることも多かったようです。
◯1980年代〜1990年代…女性が働きやすい時代への第一歩
1986年4月に男女雇用機会均等法が施行され、仕事における男女差別は撤廃されました。育児休業など、女性にとって働きやすい制度が確立されたのもこの頃です。
この頃から日本の共働き世帯の数は増え続け、1997年には遂に共働き世帯が片働き世帯数を上回りました。その後も共働き世帯は増加を続け、片働き世帯数との差はどんどん広がっています。
◯2000年代〜…不景気の波から女性もフルで働く時代に
2000年代は、長期化する不況やリーマンショックといった不景気な出来事が続きます。「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業はもう非現実的であり、一人の収入のみで家計を支えるのはリスクが高いと多くの人が気づいた時代であるとも言えます。
同時に、結婚率の低下や晩婚化といったさまざまな要因が絡み合い、合計特殊出生率(*1)はどんどん低下していきます。「子どもが減る=将来の労働力が減る」ということ。進む少子高齢化に歯止めをかけなければと、政府が働き方改革へと舵を切り出した時代でもあります。
(*1)合計特殊出生率とは…1人の女性が生涯に産むことが見込まれる子供の数を示す指標のこと(コトバンクより)
◯2010年代〜…働き方の考えが大きく変わる時代
合計特殊出生率の引き上げを目指し、全ての人の働き方環境を改善しようと政府が本格的に動き出します。
「働き方改革」の成長戦略の一つである「全員参加、世界で勝てる人材を育てる」は、まさに女性のためのもの。
日本再興戦略 一部引用
「保育の受け皿の整備などにより夫婦が働きながら安心して子供を育てられる環境を整備すると同時に、育児休業後の職場復帰の支援、女性の積極登用などを通じて、女性の労働参加率を抜本的に引き上げることを目指す。」
参考:日本再興戦略 - 首相官邸ホームページ (P4)
…とあるように、さまざまな政策が打ち出されていますが、実績はまだ十分ではないですね。今後に期待です!
現代を生きる女性にとっての“働きやすさ”ってなに?
今まで女性を取り巻く社会背景を追ってきましたが、これからの時代を生きる女性にとって、本当に働きやすい環境とは一体どのようなものなのでしょう?
女性が男性と大きく違う点は
・出産、育児に伴い一時的に働けなくなる
・家事・育児の負担がどうしてもかかってくる
ということ。
女性は「結婚→出産→育児」という各ステージのライフスタイルに影響されながら仕事をしています。これが「女性の働きにくさ」に繋がっているのではないでしょうか。
では、どうしたら女性にとって働きやすい環境だと言えるのか、解決の糸口をいくつか考えて見ました。
◯男性の意識改革
大分変わりつつありますが、「家事・育児は女性がやるもの」という意識はまだまだ色濃いです。特に「男性は仕事、女性は家庭」という時代を生きた年配の方には根強く残っているようなイメージ…
パートナーがこの意識を持っていると、仕事をしていてもプレッシャーを感じてしまいます。女性の社会進出が進んだ今、共働き世帯において家事・育児を夫婦で分担して行うのは当然のはず。お互いでお互いを支え合う体制が必要です。
◯女性の意識改革
男性の意識改革と同様に、女性自身も意識改革が必要です。家庭のことを省みるなというわけではありませんが「女だから…」と一歩引いてしまうのではなく、自分の才能を生かし、どんどん上を目指すバイタリティーが必要です。
女性は必ずしも扶養される存在ではなく、必要であれば女性側がお金を稼ぎ、男性側が家事や育児をしたっていいはず。自分自身のキャリアアップが自分、そして家族の幸せに繋がるという意識を持って欲しいと思います。
◯会社の意識改革
子育てと並行して働きたいと思っても、会社側の理解や配慮がないとなかなか難しいもの。特に、なかなか帰りづらい・長時間仕事をした人が評価されるといった雰囲気や風土が残っている会社はまだまだ多く、これでは子育て中の女性にとって働きやすいとは言えません。育児休暇や短時間勤務への理解がない場合も同様です。
たとえ短時間勤務でも、きちんと仕事のプロセスや個人の成果を見てくれる企業こそ、女性が働きやすい会社と言えるのではないでしょうか。
◯女性が働きやすい制度づくり
働き方改革で特に推し進めているのが、この制度づくりの部分です。
例えば、2015年8月に成立した「女性活躍推進法」では、企業の女性の採用比率をあげたり、女性管理職比率を引き上げるなどを記しています。
女性にとって働きやすいワークスタイルも徐々に整備されてきています。例えば、時間を短縮して働くことができる時短勤務や、情報通信技術を活用し、場所や時間にとらわれずに働くリモートワークや在宅勤務、いつ出勤・退勤してもいいフレックス勤務など。
なかなか長時間に渡り家を空けられない子育て中の女性にとって、こういったワークスタイルを知ることはとても大切です。たとえ出産や子育てで一度リタイアしたとしても、労働力を失わずに済むということです。“女性と仕事”に対する社会の捉え方が、変革の時期に来ているのは間違いないですね!
まとめ
家の中で家事や育児をするしか選択肢がなかった60年前とは違い、今は女性も自分で選択し、子育ても仕事も見事に両立する女性が増えています。そういったロールモデルが増えることは、結果的に女性の社会参加をさらに後押ししてくれると言えそうだと、気持ちが前向きになりました。
今回調査してみて感じたのは、女性はもちろんですが、会社側も女性の働き方について真剣に向き合う必要があるということ。「今話題だから」という理由で安易に働き方改革を取り入れるのでは意味がなく、女性の働き方について本質を捉えておく必要があります。
これからも時代はどんどん変化していきます。自分らしいワークスタイル、子育てスタイルを今一度しっかり考えてみてはいかがでしょうか