経営課題を解決するプロ人材を紹介する「プロパートナーズ事業」、大手企業の幹部候補をベンチャー企業へ送り“他社留学”を実現する「ナナサン」など、時代のニーズに合わせた人材サービスを提供するエッセンス株式会社。
そんな同社が自社の取り組みとして、社員の副業解禁に向けたトライアルの実施に踏み切りました。
なぜ今、副業解禁なのか。人材業界を知り尽くした代表取締役の米田さんに、今回の経緯と今後の展望について伺ってきました。
米田 瑛紀(よねだ えいき)
エッセンス株式会社 代表取締役 1996年、大学卒業後、地元広島にて人材ビジネスを行う企業に入社。24歳にして取締役ゼネラルマネージャーへ就任。2009年、エッセンス株式会社設立。専門分野に特化したビジネスのプロフェッショナル人材の力で、企業の経営課題を解決するビジネスモデル(プロパートナーズ)を考案。プロフェッショナル人材と成長企業との出会いを通じ、企業の経営課題解決に貢献する。現在は、7割現職、3割他社留学で本業とベンチャー留学を並行して行うことのできるベンチャー留学研修サービス「ナナサン」をサービスに加え、人材開発分野にも進出。
「ビジョン」の背景にある時代の変化
まずは、御社が掲げる「新しい、仕事文化をつくる」というビジョン、「企業と個人の新しい関係性を実現する」というミッションにこめた想いについて教えてください。
米田 瑛紀(以下、米田):これから日本は労働人口が減っていく中で、終身雇用や年功序列といった考え方が崩れていくことは避けられません。それに伴い、企業はこれまでの正社員雇用以外の「新しい人材の活用方法」を考えざるを得ない時代に突入していくと考えています。
米田:一方、個人の価値観も多様化していて、1つの会社にしがみついて定年まで勤めるという考え方はほぼ崩壊していますし、今はそういった働き方はワクワクしないというアグレッシブな人も増えてきています。働き方だって、リモートワークや複業を含めてどんどん新しい選択肢が生まれて来ていますよね。
そうすると、今起きている働き方の変化の上に、新たな上位概念・仕事文化が生まれるんじゃないかと考え、「新しい、仕事文化をつくる」というビジョンを作りました。
「企業と個人の新しい関係性を実現する」というミッションについては、私たちが提供するサービスによって叶えていきたいと考えています。
副業解禁のトライアルを始めたキッカケ
それではなぜ今、御社の社員に対して「副業」を解禁するに至ったのでしょうか?
米田:正確には「解禁」とは言っておらず、「解禁に向けてのトライアル」という位置付けです。というのも、やはり私としては、本業であるエッセンスでの業務で成果をあげてから、社外活動を行って欲しいという想いが前提だからです。
なので、現在は個別に「こういったことをやりたいと思っています!」と相談を受けたら、随時調整しながら進めていくという形をとっています。
そういった動きに繋がったキッカケは何だったのでしょう?
米田:キッカケは自社サービスですね。弊社では『プロパートナーズ』というプロ人材の紹介サービスを行っているのですが、現在登録いただいている人数がおよそ1,000名ほどになっています。その内訳を見ると、勤務先の企業が「副業、兼業OK」という人の登録が増えているんですね。年代で言えば40代の伸びが顕著です。
そうした状況を受け、サービスを提供する私たち自身も副業や兼業を認めていくべきなのではないか、これを認めた時に社員はどうなるのか、経営陣はどう感じるのか、というのを試してみたいと考えたのが始まりでした。
社内の副業事情
実際に副業、社外活動をされている方はどんな方がいるんですか?
米田:まだまだ事例は少ないんですが、例えばプロパートナーズ事業部マネージャーの島崎(※後編でご紹介します!)は、社外活動として「One HR」という団体と「たいとうパパママ応援隊」という団体、ともに共同代表を務めています。
▲米田代表取締役(左)と社内の副業実践者の一人であるプロパートナーズ事業部マネージャーの島崎さん(右)
米田:社外活動というところでは、他の社員もIRというニッチな業界のコンサルをやっていたりします。彼なんかはもう、IR業界では引く手あまたの人材で、知り合いを中心に相談に乗るということを報酬をもらわずに、時々やっていたりしますね。
そういった方々に関しては、副業・社外活動を通じて、どんな経験を積んで欲しいとお考えですか?
米田:社内でのビジネスから得られる学びや刺激は本当に大切なんですが、それだけだとどうしても井の中の蛙になりがちです。社外で世の中のトレンドを知って、社外の人の価値観に触れて新たな人脈をつくる経験は、本人にとって大きな成長に繋がると考えています。
それがやがて自分の強みになって本業でも活かしてもらえたら、ゆくゆくは会社としての業績向上にも繋がりますよね。副業・社外活動を通じて、そんな相乗効果を生み出して欲しいと期待しています。
副業を解禁して得られたメリット・デメリット
副業を解禁して得られたメリットと、そう思われた具体的なエピソード等あれば教えてください。
米田:島崎を見ていると、社外活動を行うようになってから、視野が広がったと感じています。また、One HRという団体は、人材業界の人間が会社を超えて集まり、人材業界を変革しようという想いで活動していると聞いています。そのような団体を島崎がアイコンとなって運営することで、弊社のブランディングにも繋がってくると考えています。
反対にデメリットと言いますか、苦労されている点などありますか?
米田:先日も島崎の事例をテレビ東京の『ガイアの夜明け』に取り上げていただきましたが、副業を始めることによって周囲からも色んな目で見られることになります。
現在はマネージャーとして初めて部下を持つことになり、これまでの仕事にマネージメントが入り、そこへさらに副業が加わるわけですから、業務としては非常に多忙になるわけですよね。
その中でもしっかりと本業の方で毎月の目標をしっかり達成できるか。万が一それが未達に終わったとき、悔しさは相当なものになるはずなので、今後、彼がどう動き、どう学んでいくのかには注目しています。
今後の活躍に期待ですね!
米田:あとは、そこに経営視点が加わると尚良いと考えています。本業に加えて、今後は副業のバランスをどう判断していくのか。目の前の仕事に追われるだけでは、どうしても「個別最適」になりがちです。
経営視点だと、それこそ「全体最適」を念頭に物事を判断してくのが重要になってきますので、そういった面での成長も期待したいですね。
「どこでも通用する人間」であって欲しい
それでは今後について伺いたいのですが、まずは自社の社員に対してはどのように働いて欲しいとお考えでしょうか?
米田:シンプルですが、うちの社員に関しては「どこの会社でも通用する人材であれ」ということは言っています。実はこれは自分の子どもにも言ってたりします。
今、お子さんは何歳ですか?
米田:まだ小1です(笑)まあ、それは置いておいても、やっぱりうちの社員に関してはいつも自立して、どこでも通用する人間になるんだと思っていて欲しいですね。
あと、うちの会社にいてくれるということは、会社として実現していきたい世界観が自分ごとになって、「会社が実現したいもの」=「社員が実現したいもの」となってくれると信じているので、会社としてもそういった魅力ある世界観を発信し続ける存在であり続けたいと思います。
会社の成長と個人の成長とマーケットの広がりが重なって、本当に「新しい、仕事文化」が広がり始めたね、と。その中で私はこれだけ貢献したよ、と胸を張って言い合えるようなメンバー、組織でありたいですね。
事業を通じて実現したい世界
最後に、事業を通じてどんなことを実現していきたいとお考えですか?
米田:リンダ・グラットン著の『LIFE SHIFT』でも言われているように、今「人生100年時代」が到来しています。冒頭でもお伝えしましたが、一人ひとりの寿命が延びるのと同時に、日本の労働人口は減少の一途をたどっています。
今の世の中においては、働く個人が1社にしがみつくのではなく「自分は何ができるのか」ということを考え、自立していかなければいけないと感じています。
しかし、現代の世の中は自立するために必要な「複数社で働く」といったことがなかなか行いにくいのが現状です。そこで、他社留学研修サービス「ナナサン」で多くの人が社外活動が行いやすい世の中づくりも行っていきたいと思っています。
国家資格に関わらず、ビジネスの成長には、人事のプロ、マーケティングのプロ、戦略のプロなど欠かせません。であれば、そんなプロ人材を雇用だけでなく活用することが、これからの企業には必要だと考えています。
例えば、企業の全社員数の5%が複数社で働くプロ人材となり、全労働人口の5%が自立したプロ人材として働けば、働き方改革のテーマでもある「生産性の向上」や「労働人口の減少」にも貢献できます。それによって企業と個人の新しい関係性が生まれ、副業・兼業が当たり前の「新しい仕事文化」が形成されると信じています。
次回予告
今回のお話にも登場した、プロパートナーズ事業部マネージャーの島崎さんにお話を伺っています!副業ではない、“複業”を実践するリアルとは?引き続きお楽しみに!!
▼今回お話を伺った会社
エッセンス株式会社