今回お話を伺ったのは、「オンラインショッピング事業」や「専門家マッチング事業」を展開しているエンファクトリーさん!最近では社員の副業を認める企業が増え始めていますが、なんとこちらの会社では「副業禁止」ならぬ「専業禁止(=会社の仕事だけをやっているようじゃダメ!)」というポリシーを打ち出しています!
そんなユニークな方針を掲げることになった経緯や、それによって得られるメリットについて詳しく伺ってきました!
加藤 健太(かとう けんた)
株式会社エンファクトリー 代表取締役社長 リクルート出身、前職ではオールアバウトを上場へ導く。エンファクトリーでは「相利共生」の精神に基づき、立ち上げ当初より「専業禁止」の人材ポリシーを貫く。
あえて「専業禁止」という言葉を使った理由
── 最近では社員の副業を認める企業が増えてきました。「副業可」「副業を推奨」ではなく、あえて「専業禁止」という言葉を使っている理由は?
一つはマーケティングですね。おかげさまで「専業禁止」と検索すると間違いなくうちの会社が出てくるので「なんだこの会社は?」と思ってもらうのが狙いですね。もう一つは、社内向けのメッセージとして“インパクト”を持たせたかったというのもあります。
── 確かに「副業推奨」だと「やってもやらなくても、どちらでもいい」という印象ですが「専業禁止」と言われると行動に起こしやすいですね。
(↑コーポレートサイト上でも「専業禁止」の文字が大きく謳われています)
社内、社外、パートナー。社内の“複業事情”
── 実際、全体の何割ぐらいの方が複業されているんですか?
過去に挑戦した人も含めると、半分ぐらいですね。
── 社内の人同士で連携するケースもあるんですか?
そうですね、組み合わせとしてはいろんなパターンがあります。エンファクトリーには社内の仕事に集中する人もいれば、社内にいるけど外の仕事もやるという、いわゆる「パラレルワーカー」もいます。それが高じて起業していったけれども、エンファクトリーとも連携する「フェロー (※) 」もいます。あとは、完全に外部パートナーとして連携するケースもありますよ。
※「フェロー制度」とは?
エンファクトリーでは、退職もしくは独立する際に任意で「フェロー」を選択する事ができます。 フェローとして活動する場合、双方の関係性をゼロにする事なく、状況に応じてビジネスパートナーとして利用し合うことができるという「相利共生」の精神に基づいた仕組みです。
エンファクトリーではお互いに都合の良い時に協力し合う、「相利共生」という考え方の下に、同心円上に緩やかに大きなネットワークを持っています。そのため、自然と色んな企画も湧いてきますし、実際に仕事を進める際にも多方面に連携を取り合うことになります。
専業禁止に関するルールは一つ。「オープンにすること」
── 「専業禁止」を実施するにあたって、これだけは守って欲しいというルールは何かありますか?
ルールとしてあるのは一つだけで、みんなに複業の内容をオープンにすること。それだけです。
── 実際にはどのようにオープンにされているのでしょう?
半年に一度ぐらいの間隔で「en Terminal」という共有会を開催しています。そこでは自分が複業として何をやっていて、どれぐらい儲かっているか、今後何をやろうとしているかについて発表します。あとは外部からもゲストを呼んで色んな話をしてもらっています。そういうかたちで内容をオープンにすると、あらゆる“懸念点”が消えるんですね。
( 「en Terminal」ってなんですか!?より )
── 具体的にはどのような懸念が消えるんですか?
発表する側の人にとっては、「会社の仕事」と「個人の仕事」という両面から、自分は何をやっている人なのかを知ってもらうことになります。それによって「あの人紹介するよ!」「それならここと連携すれば?」といった貴重なフィードバックをもらうことができます。また逆に言うと、こうした発表の場があることで会社の仕事で手が抜けなくなるというわけですね。
── 確かにそうですね。自分から発表しているわけですしね……。
「アイツ、個人の仕事ばっかりやって…」って思われるの、カッコ悪いですよね?(笑)オープンにしているわけなので、半年後くらいに「何もできてないです…」と報告するというのもカッコ悪い。あとは聞く方も「ふむふむ、なるほどね!」とか「いやぁ〜やっぱり儲かんないんだな…」とか良い勉強になりますしね。
複業を両立させるポイントは……?
── 一口に「複業」といっても、現実的には複数の仕事を両立していく難しさがあると思います。そこを両立させていくのに重要なポイントって何だと思いますか?
知りません!私は複業やっていないので(笑)
── なるほど(笑)
だってそれは、その人がどうしたいかという話なわけであって、そのために会社としてのお膳立ては一切ないです。それをやってしまうと本末転倒ですよね。複業のために納期は調整してもいいですとか、うちの会社で一人あたりのミッションを減らすといったことは一切していないので、一人分の仕事に加えてプラスαで複業をする。よく勘違いして「複業OKだから、会社の仕事を半分にしてなんたら……」とか。いやいや、無い無い!
── そういうことでは無いということですね。
違いますね。そこは自分でなんとか考えてやるしか無いです。自分でやっていくことで力がつく、それが大事なんです。そこにお膳立てしてもらってもダメなので、うちがやるのは背中を押してあげるだけ。
── ちなみに「背中を押す」とは?
単純に「いいんじゃない?やったら」って話をするだけですよ!(笑)だから逆に言えば厳しいですよね、同時に会社のパフォーマンスも上げなきゃいけないわけですし。ただ目先のお金目的の時給のアルバイトするんだったらやめとけよ、みたいな話ですよ。自分がある種「経営者」というか、新しい商売を始めるというのに近い話なので。
複業によって社内にもたらされた数々のメリット
── 社員の半分くらいの方が複業されているという話がありましたが、それによって、エンファクトリーさんの中で実際に活かされたという事例はありますか?
事例はね、個人の仕事の方からネタを拾ってきて、そのネタが協業のネタになったり、エンファクトリーとしての事業のネタになったり、そういうことはたくさんありますね。それはもういくらでもあります。
あとはやっぱり会社の外で仕事をすることになるので、普段とは違う能力が身につきますね。例えば社長は組織全体をサポートしていく仕事なんですが、他の社員は「社長の仕事」ってあまりわからないですよね?想像はつくかもしれないですけど、実際やってないとわからない。でも例えば、それを会社の外でやって経験則的に身につけた人が社内でマネジメントすると、結果は全然違いますよね?
── そうですね。それは全然違う気がします。
そうなんです。どこでやろうが仕事をやる以上は、やっぱり“プロ”なんです。そして自分の仕事を徹底的に追求して価値を最大限に高めるというのがプロ。映画でありますよね、なんたらイレブン。なんたらトゥエルブ…
── 『オーシャンズイレブン』!!
そうそれ!ああいう世界。みんなそれぞれが高い意識を持ったプロの組織。あれはあくまでも映画での話ですけど、あれぐらい一人一人が自立している組織。当然そこまでは行ける人と行けない人がいると思いますが、その人なりのプロ意識を持っている人がどんどん出てくるといいなと思っています。
引き続き連載の第2回では、エンファクトリー独自の「ローカルプレナー」についてお話を伺っています!