徳島県庁と同じく、徳島県神山町にある『神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス(以下、神山コンプレックス)』にサテライトオフィスを構える株式会社ダンクソフト。実際にここで働いている本橋さんに、神山で働くことの魅力を伺ってきました!(2016年10月21日時点)
本橋 大輔(もとはし だいすけ)
株式会社ダンクソフト所属のプログラマー。埼玉県出身。前職がきっかけで徳島に移住し現在に至る。神山コンプレックス内に置く神山オフィスでは、3Dプリンターやレーザーカッターを使用したワークショップなどを開催。地域と関わり合いながら、神山ならではの目線で数々の新規事業開発を行う。
働く場所は、仕事を楽しむための大事な要素
—— ご出身は埼玉だと伺っているのですが、徳島に移住されたきっかけはなんですか?
前職の本社が徳島だったからなんですけど、その時に来て以来、気に入ってずっと徳島に住んでいます。もう移住して15年ほどになりますね。
神山のオフィスに来たのは3年ほど前なのですが、それまでは徳島市内で働いていました。
—— ダンクソフトには神山にオフィスがあったから入社されたのですか?
いえ、ぼくがダンクソフトに入社したときは徳島には市内のオフィスだけで、そのあとに神山にオフィスができました。
神山コンプレックスが完成する前、ここより更に山の方に行ったところに一軒家を借りて、循環型サテライトオフィスの実証実験があったんです。そこに知り合いを通じて関わっていくうちに「ダンクソフト入らない?」と声をかけられたのが入社のきっかけですね。
それに、神山オフィスはぼくが神山で働きたいと言ったからできたんですよ!
—— え!!そうだったんですね!
実証実験をきっかけに神山がすごく好きになってしまって…(笑)
—— 会社が場所を決めるというよりかは、本橋さんのように本人の希望に応じてオフィスを開設できるんですか?
そうですね、そこで働きたかったらそこで働いていいというのが会社の方針ですので、そこにオフィスを作りたい!と言ったらじゃあどうぞ、みたいな(笑)
なので、北は北海道から南はクアラルンプール(マレーシア)までオフィスがあったりと、場所は本当に自由になっていますね。
—— すごいですね!!!実際に市内から移られてみてどうでしたか?
市内と比べると神山の方が広くスペースを使えるので、仕事に集中できますね。それに何より環境がいいです!自然に囲まれてるという意味でもそうですけど、見ていただいたらわかるように、あのぐっちゃっとした感じとかね(笑)
神山じゃなければできなかったこともたくさんあるんです。むしろ新規事業のほとんどがそうじゃないかと思うほどなんですよ。
(▲まさに、ぐちゃっと(笑)いつもスタンディングスタイルだそうです。)
本業も副業も、すべては趣味とつながっている
(▲ amazonのダンボールを再利用して作った試作品。インタビューの15分前にできたばかりのできたてホヤホヤ。頭の中で考えたものをスグにカタチにできるのもまた、神山が最高なポイントだとか。)
—— ではそのあたりのお話について詳しくお聞きできればと!神山で働くことで得られるメリットはなんでしょう?
会社でのぼくのミッションは新規事業開発で、どんどん新しい事業を作っていくことなんですけど、今まで立ち上げた事業のほとんどはここにいなければできなかったことだと思うんです。
例えばここに遊びに来た昔の知り合いや、お客さんとして来られた方の相談内容がそのままカタチになったり、最近だとドローンを飛ばしてるんですけど、それもこの辺りだったら割と自由にできますし。あとは神山コンプレックスだと広いスペースが使えるので、その辺散らかしながら作業できたり(笑)
広いスペースが使えるからこそいろんな発想ができるんですよね。この環境じゃなければドローンを飛ばすことも含めて、思いつかなかった事業もたくさんあっただろうなと。
—— 今はもう趣味と仕事がごっちゃになってる感じですか?ドローン教室をやっていらっしゃるとか…
そうですね!小学校でドローン教室をやったりしてます。
それはもう趣味というより副業としてワークショップを開催していまして。
—— 会社ではなく、ご自身でやっていらっしゃるのですね!
そうです。ドローンはそのうちの一つで、他にはレーザーカッターとか、3Dプリンターを使ってモノづくりをするワークショップを開いています。
それこそ神山に来たから3Dプリンターとかに触れる機会も出てきたもので、ちょっとずつ触っていくうちに、今ではもう手放せない道具になっています。
※ 神山コンプレックス内には3Dプリンターとレーザーカッターがドドーンとあって、自由に使えるそう。
—— なるほど!それは新規事業とも関わっているのですか?
関わっていますね。今立ち上げようとしているのが、小学校でのプログラミングの教材を作るプロジェクトでして、その教材はレーザーカッターとか、3Dプリンターで作っているんです。
—— すごい!面白いですね!
小・中学校では、2020年からプログラミング教育の必修化が始まるんですね。それに向けて総務省から助成金が出るので、そこに関連して新しく事業を始めようと動いてたんです。
そんなところに、「プログラミングをどう教えればいいのか分からない」って神山にある二つの小学校(神領小学校、広野小学校)から相談をもらったんですね。たまたまぼくがドローンの授業で小学校に関わっていたので相談していただけたみたいなんですけど。
そうやって、ちょっとずつやってきたものが本格的にプロジェクトとして立ち上がり始めてるといったところですね。
これはもう本当に趣味なのか仕事なのかわからないですね(笑)
—— なかなかそこまで趣味と仕事が結びついている方っていらっしゃらないですよね!素敵な働き方ですね!
そうですね、ここまで密接になってるのはなかなかないかもしれないですね。
でもプログラミングを仕事でやってる人って、多かれ少なかれもともとプログラミングが好きで趣味でやってた人なんですよね。もちろん働きだしてからやり始めたって人もいるとは思いますが。そうやって趣味で楽しんでやってて、得意だから、好きだから、それがお金になるなら仕事にしようって。
ぼくもそんな感じでプログラマーやってますので、趣味で遊んでたことが仕事になったといえば、形は違えど同じような状況ですね。
すんなりと溶け込めたのは、地域主導ならではの手厚いケアがあってこそ
—— なんだかもう、神山に来られたことでメリットしかないように感じてきたのですが、デメリットとかってありますか?
デメリットは…ほとんどないですね!
—— ですよね(笑)
必要なものはネット経由で翌日には届きますし。
…あ、IT系のイベントとかが徳島からだとなかなか行きづらいとかですかね。
情報入手するだけならネットで間に合う部分もありますが、やっぱり他の会社の方と直接話をするには展示会にいくのが一番の近道なので。
—— なるほど、確かにそういったイベントは都心の方ばかりですもんね。
そうなんです。だからそういうのに行きたければ東京で仕事の予定つくって、出張で合わせて行くみたいな。
本当に、デメリットとしてあえて出すならこれくらいですかね。
ただ他社さんとの繋がりでいうと、ここにいるといろんな会社さんが来てくれるので、東京にいたらなかったであろう出会いがたくさんあるんです。そういう機会があるっていうのが、今の神山のすごいところだなあと思っています。
—— すごい面白い人がいっぱいいるって、みなさんおっしゃってました!神山は「変態」が多いとか(笑)
(笑)
そうですね、びっくりするぐらい面白い人がいっぱいいますね!
いい意味で自由だな、と。
—— 田舎は閉鎖的で入りづらい印象もあるのですが、神山はどうでしょう?
他の地域のことは知りませんが、神山は周りの人がウェルカム状態なので入りやすいかなと思います。
例えば、神山の地域の集まりで「お大師さん」というのが毎月20日にあるんです。御経をあげるという目的もありますけど、これ実は連絡網代わりで、何か困ったことない?今度の慰安旅行どうすんだ?とかコミュニケーションの場として使われています。
もし単に引っ越してきてその場に突然行くと、誰だこいつってなっちゃうと思うんですが、地元をはじめいろいろな方を紹介してもらえるので、そのおかげですんなりと地域に溶け込めるんです。グリーンバレーさんもそうですが、地元の方がやってるのでそういったケアが細かいですね。
逆にもしそれを行政がやってるだけとなると、細かい地域の人によるケアってのはなかなか受けられないと思うんです。普通、知らない地域にいきなり入っていくのは怖いじゃないですか。
—— そうですよね。そういった意味では今すごくいい環境にいらっしゃるということなんですね。
好きを楽しむ。遊びや地域との関わりから生まれるシゴト
——ちなみに、東京など他のオフィスの方との仕事はされていないのですか?
そうですね、ほとんどしてないですね。
——なるほど…一応各オフィスとの連携の話を聞こうと思ったのですが(笑)
すみません、もう個人プロジェクト状態なんです(笑)
東京オフィスとの連絡は、……うーん、それこそ保険の話とか(笑)
そういった事務的な連絡が中心ですね。
あとは問い合わせの対応依頼があったりですね。
※ 本橋さんだけが異例とのお話をのちほど星野社長からお伺いしました(笑)
基本的に、他のサテライトオフィスの方は、一プロジェクトのデザインやシステムをやっているので連携は取るそう。
——ここから一番近くにある徳島オフィスには行かれますか?
たまに行きますね。今住んでるのが市内なので、市内で予定があるときなどは、神山に出てこなくとも徳島オフィスで仕事をしたり、在宅で仕事をしたりしています。
ちなみに徳島全体では社員が4名いて、他の3名は市内のオフィスで働いていて、神山はぼく一人です。
——サテライトオフィスは他にも何箇所も設けられていると思うのですが、働く場所がバラバラだと、その分しっかりと成果を求められるのでは?
そういう管理をしている会社ではないんですよね。
もちろん部署によるとは思いますが、個人に委ねられているんです。
先ほどあったように、働きたいところで働いていいというのが会社の方針ですので、だいたい1人か2人の部署なんですね。
ただ、やっぱりそこでちゃんと部署ごとの仕事をするのは当たり前。でもそれ以外は自由にやっていいよというのが共通の認識としてあるんです。場所によって、地域として求められることも違うと思いますし、そこで生まれた業務があるのであればそれはやるべきことですしね。
ただぼくの場合は一人部署なので、本当に自由になっちゃってるっていう(笑)
——なるほど(笑)仕事をやる上で大切にしている考えとかはありますか?
とにかく楽しんでやっています。
新規事業開発ってカッコイイこと言ってますけど、要は遊んでるだけなんですよね(笑)
遊びの中から仕事が出てくるわけで…ですので…うん、遊んでます!(笑)
——遊びから仕事が生まれるって素敵ですね!まさに理想の働き方!
ただ、そもそもこの遊べる環境にあるというのは大きいですね!恵まれた環境です。
徳島に来たことも、ダンクソフトに入ったことも、神山で働くようになったことも、どれもほんの些細なきっかけだったんですけど、でもその一つ一つが重なって今の働き方ができていると実感してます。
毎日のように賑わう、自然と人が集まる場所に
——最後に、今後の展望などあれば聞かせてください。
隣の部屋のKMS(Kamiyama Maker Space)でワークショップをやってるんですけど、それをもっと軌道に乗せて、毎日ワークショップを何かしらやっている状態にしていきたいですね。
ここってイベントのある時は賑やかなんですけど、使ってない時はすごい静かなんですよ。だから、常に賑やかになっていったら、もっといろんな人の動きも出てきてきっと楽しいんじゃないかな、と。
——オープンになっているのでふらっと人が来て、っていうのがいいですよね。
たまに近所の方も「ここ何やっとるんやー」ってふらっと覗きにきたりするんです。噂が回ったのか、「ちょっとレーザーカッター使いたいんやけどー」って人が来たりもするんですよね。地域の方々にも自然と興味を持っていただけるのが嬉しいですね。
こうやって、地域の中にもともとあったモノ・コトと、自分達が来たことによって加わる知識・技術の相乗効果でお互いにたくさんの気づき・発見で溢れていって、地域社会がより良くなっていくような、そんな輪がどんどん広がっていったらいいなって思います。
あとがき
人のためになることをやっていて、でもそれは「遊んでるだけ」と笑顔で言えてしまうところが、自分らしく生きている証だろうなと感じました。
大人になっても目を輝かせながらこれからの話をする、意外と難しいことだと思います。
シゴトの話をしていると自然と笑顔になっていく。シゴトを楽しんでいるからこそ、人生の充実をより感じていらっしゃることが伝わるインタビューでした。
お話にあったプログラミングの授業やワークショップをはじめ、今後の神山の発展には本橋さんの遊びゴコロが大いに関わってくるんだろうなと、非常に楽しみになりました!
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