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一過性のブームで終わらせない。美波バレー構想と未来の子供たちに込めた想い──サイファー・テック株式会社

一過性のブームで終わらせない。美波バレー構想と未来の子供たちに込めた想い──サイファー・テック株式会社

一過性のブームで終わらせない。美波バレー構想と未来の子供たちに込めた想い──サイファー・テック株式会社

前回は代表の吉田さんにサテライトオフィスを出した経緯や想い、住吉さんには美波町での生き方や働き方についてお聞きしましたが、吉田さんは美波町を活性化させるべく、自治体と共に誘致活動などにも関わっています。今回はそんな吉田さんの誘致にかける想いや美波町の将来についてたっぷりと語っていただきました。

吉田 基晴(よしだ もとはる)

サイファー・テック株式会社代表取締役社長。2012年徳島県海部郡美波町にサテライトオフィスを開設。翌年本社を東京から美波町に移転し、地域の課題を解決することを目的とした「株式会社あわえ」も創業。現在では美波町と地方創生におけるパートナーシップ協定を締結し参与として誘致活動にも積極的に取り組んでいる。

第2回
一過性のブームで終わらせない。美波バレー構想と未来の子供たちに込めた想い──サイファー・テック株式会社

【徳島県海部群美波町】
徳島県南部に位置する町。総人口7,114人(2016年12月1日時点)、面積は140.80 km²。2006年に日和佐町と由岐町が合併し美波町が誕生。新日本観光地100選にも選ばれた美しい街並みと海。四国霊場の薬王寺に参拝するお遍路で門前町は賑わい、海岸ではアカウミガメが産卵に訪れるスポットとして有名。世界的にも珍しい施設となっている日和佐うみがめ博物館などウミガメで町おこしを行い、NHK連続テレビ小説「ウェルかめ」の舞台にもなっている。
参考:美波町役場ホームページ

「つとめ」を果たすこと=社会や地域に貢献すること

-美波町で地域のためにインターネットを教えているってお話をお聞きしたんですが?

吉田 基晴(以下、吉田):はい。美波町に来た2012年当時、地域オンリーワンのIT企業だったので、高齢者向けのIT講座を実施したり、中学校でITの授業を担当しパワーポイントの使い方とかを教えていました。

-中学校での授業ってすごいですね!学校側に授業の提案をしに行かれたんですか?

吉田:いや、学校側から依頼を頂いたんですよ。ちょっと教えてくれない?っていう感じで(笑)それで実際にやってみると、みんなの反応も良くてね!そうすると学校や生徒から「ありがとうございます!」って感謝されるんです!

-直接感謝されるって嬉しいですよね!

吉田:中学校での授業もそうなんですが、美波町の場合は自分たちでやらないといけないものが多いんです。避難所の整備は自分たちでやるし、お祭りも見に行く側ではなく準備含めて主催者側にならないといけない、その他にも移住者の家探しもやらないといけないし、時には恋愛相談にも乗りますね(笑)

-みんなで助け合いながら生活していくんですね。

吉田:そうですね!人が少ない分、1人が複数の役割を担うことが大切になってくるんですが、これって田舎では当たり前の「つとめ(役割)」なんです。それも報酬なんてない「無償のつとめ」です。美波町の人はこの「無償のつとめ」を自然に果たしています。だから、移住者でも当たり前のように「つとめ」が与えられるんですよ!自分のことだけでじゃなくて、みんなのために「つとめ」を果たすと地域住民から「村が元気になってきたよ。ありがとう!」って直接感謝の言葉をもらえるんです。これこそが、求めていた幸せだったり充実感が得られる瞬間ですね!

-ちなみに都心では中々経験できない感謝って何かありますか?

吉田:色々ありますが・・・、東京だと法人税とか納めても誰からも感謝されないですよね?むしろ義務でしょ?みたいな感じだと思いますが、美波町だとわずかな税収でも町長から直々に「ありがとう!」って感謝されます。田舎は「ありがとう!」がたくさん交換できる場所なんです。

-「ありがとう」の交換!素敵ですね!

吉田:この「ありがとう!」の交換をもっと増やしたいと思ったことがキッカケで僕の新しい「つとめ」として誘致活動を始めたんです。

「過疎地でもできる企業誘致」-数十年ぶりに転出者より転入者が増えた美波町の誘致活動とは?

-いま何社くらい美波町にサテライトオフィスを開設してるんですか?

吉田:サイファー・テックが第1号ですが、16社(2017年2月現在)ですね。

-すごい勢いで増えてますね!ちなみに美波町への誘致活動は吉田さんがキーパーソンになっていると思いますが、どういった会社に来てもらいと考えていますか?

吉田:「過疎地でも出来る企業誘致」というテーマなんですが、基本的にはベンチャー企業の社長に対して誘致を行っています。

-なぜベンチャー企業の社長なんでしょうか?

吉田:比較的若くて勢いのある人が多いですし、その土地に合わせた新しい事業にもチャレンジする傾向があると思ったからです。既存事業も続けながら、別の事業も立ち上げると、その1社の中で新しい雇用が生まれますよね?「過疎地でも出来る企業誘致」のポイントってこれだと思っていて、こういった事業展開を考えているベンチャー企業の社長を徳島県や美波町と一緒に誘致しています。

-誘致活動をすることで何かしらの課題解決に繋げていくと思いますが、吉田さんが考えている美波町の課題ってどういったところでしょうか?

吉田:地方にはたくさんの素敵なことがあると思っています。ただ、それがあまり知られていない。美波町に限った話ではありませんが、田舎では「一度来たらこの場所の良さがわかる」って言葉を聞きますが、問題は「どうやってその一度を作るのか」です。町の魅力を発信する立派なパンフレットがあっても、そのパンフレットを手にする人はすでにその町に来ている訳で・・・。これってちょっと残念ですよね(笑)

-確かにそうですね…。

吉田:だから課題としてはどうやって美波町の魅力を美波町のことを知らない人に発信していくかだと思っていて。この解決策が先程のベンチャー企業の社長をはじめとした外部の方を誘致することと、ここで働きたいと思う人を集めることなんです。外部の方の目で地域の魅力を指さしてもらい、発信してもらうことが重要だと考えています。

-なるほど!ここで働きたいと思う人はどのように集めているのでしょうか?

吉田:2つありますが1つは大学生のインターンです。例えば、美波町に来てもらい「10日間で地域が元気になるアプリを作ってください」というお題を出して、自分たちで地域の課題を見つけて、解決できる方法を考えてもらいます。結果、参加してくれた大学生が美波町を知り、SNS等で美波町を紹介してくれています。更に地域の課題を解決するために地域との交流が生まれ、最終的に美波町を好きになってくれた子がサイファー・テックに入社したり、サテライトオフィスを開設している美波町の企業に入社したりしてくれていますね。

-一石五鳥くらいの効果ですね(笑)2つ目もお伺いできますか?

吉田:実は株式会社あわえという会社を2013年に美波町で創業していて、地域の課題解決や地域特性を活かしたビジネスを展開しているんですが、事業の1つで「美波クリエイターズスクール」の運営をしています。地域で働くクリエイターの育成を目的として、厚生労働省からの委託で運営しているんですが、受講生は期間限定で美波町に移住することを条件としています。ちなみに、一般的なスクールと異なり受講生にお給料もお支払しているので、お金をもらいながら勉強もできてしまうスクールなんですよ!

-給料がもらえるんですね!!ちなみに美波クリエイターズスクールでは、どういった講義をされてるんですか?

吉田:地域の土地柄や文化を情報コンテンツとして発信する力や、プログラミングを含めたWEB技術を学んでもらい地域広報を即戦力で実行までできるクリエイターを育てています。ちなみに、この資料を見てもらいたいんですが、参加者の70%近くが都会に住まれている20~30代の女性なんです。

美波クリエイターズスクールの定員数は限りもあるんですが、美波町に移住する条件でも応募してきてくれる人がこれだけいるんですよね。実はこの応募してくれた層の方々は、地方が喉から手が出るほど欲しい人材で、やり方次第でこれだけの人が集まってくれるんです。だから僕たちは、この架け橋にならないといけないと思ってます。

-こういった取り組みの影響で、転入者が転出者を上回ったんですか?

吉田:そうなんです!しかも数十年ぶりだと聞いています。人口減少が続いた過疎地でこういった結果が出ると全国の自治体から視察がすごく増えるんですね。そこで美波町のモデルをより理解してもらうために、クリエイターズスクールを運営しているあわえで、自治体・企業向けの研修システム「あわえトレーニングプログラム」も始めました。

-なるほど!この研修は吉田さんを始め、御社のスタッフが講師をされているんですか?

吉田:そうですね。うちのスタッフ以外だと美波町役場の人にも講師として登壇してもらっています。美波町で起きた出来事を経験談も含めてお話いただくことで、受講者はより深い理解を得られると思っています。

【今後の展望】吉田氏が考える人生の「つとめ」とは?

サイファー・テック株式会社吉田基晴
-美波町をより良くするために全力を注いでいる吉田さんに、誘致活動を含めた今後の展望を是非お伺いしたいです。

吉田:近い将来の展望としては、僕を信頼してくれて色々な方が美波町に来て仕事をしてくれているので、これを一過性のブームで終わらせたくなくて。具体的には、美波町内で転職できる環境を用意しないと駄目かなと思っていますね。

-確かにそれができれば、美波町から出ていく人は一気に減りそうですね。

吉田:美波バレーや美波コーストなんて呼ばれることもあるみたいですが、僕はシリコンバレーみないな場所を美波町に創りたいんですよ。いまの仕事を失ったら次はない。積み上げてきたものが失われてしまう。そんな場所なら誰も美波町に来たいと思いませんよね。この町にはたくさんの選択肢がある。そういう安心感を作ってあげられたら、精神的にも、もっと穏やかに過ごせるかなと。だから、美波町内で転職できるくらい企業を誘致することが、僕の「つとめ」だと思っています。

-まさに「美波バレー構想」ですね。精神的にも穏やかに過ごせる環境って本当に重要だと思います。

吉田:あと、ちょっと先の展望にはなりますが、もっと自由で欲張れる世の中にしていきたいです。

-「自由で欲張れる」は吉田さんを語る上で欠かせないキーワードですね。

吉田:会社を2つ3つやっていると、周りから「どっちが本業なの?」「こっちで稼いで、こっちは趣味なんでしょ?」みたいな言い方をされるんですが、これが本当に嫌なんですよね。僕からすれば全部本業だし全部大事。単純に法人が分かれているだけで、僕がやりたいこと自体は共通しているつもりです。だから働き方も生き方も、もっと自由で欲張っていいじゃないの?って本気で思っています。

-確かにみんなが自由で欲張って生きたら、そういったことは言われなくなりそうですね!

吉田:睡眠と食事のどっちが大事って、どっちも大事に決まってるんで誰も質問しませんよね?それと一緒で僕からすると今やっている事業は全部大事なんで、睡眠と食事の関係と変わらないんです。いつか価値観が壊されて僕みたいな働き方や生き方がスタンダードになるタイミングが来ると思うんですが、そのときに先頭で旗を振っているのが僕でありたいと思ってますし、次の世代に伝えたいと思っていますね。

-次の世代とは美波町の子供たちのことでしょうか?

吉田:そうですね。東京と異なり、美波町には子供達に背中で見せられるシチュエーションがたくさんあるので、まずはいま目の前にいる子供たちが美波町で働きたいと思ってもらいたいですね。

-将来サイファー・テックさんに入社する子が出てきたら感無量ですね!

吉田:中学校の授業を担当させていただくこともあるので、一層そういった思い入れが強くなりますが、この子たちがサイファー・テックの門を叩くまでは頑張ろうって社内で話したことがありますね。ちなみに、美波町には高校がないので、ほとんどの子供が一度美波町から出て行ってしまうんです。そのときに片道切符でこの町を出て行ってしまうのか、それともサイファー・テックの〇〇さんみたいになりたいから勉強して帰ってくるという往復切符で出ていくので大きく違うと思っています。

-子供が憧れる存在にならなければいけないってことですね!

吉田:そうです!サイファー・テックの社員も含めて美波町で働く大人は子供たちが憧れるカッコイイ存在にならないといけません。それは小手先のIT系がカッコイイとかパソコンを使う仕事がカッコイイとかでは全然ダメなんです。

-仕事も遊びも生き方も全部がカッコイイということですか?

吉田:はい。仕事も全力、趣味も遊びも「つとめ」も目一杯満喫している、何か一つだけでなく、たくさんのことを自由に欲張りに本気でやっていく生き方がカッコイイんだって思ってもらいたいんです。僕はこの先、絶対そういう時代になると思っているので子供たちの憧れの存在でい続けて次の世代に繋ぐことが人生の「つとめ」だと思っていますね!

-是非多くの子供たちにカッコイイ姿を見せて自由で欲張りな生き方が出来る人を増やしてほしいです!

本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

【編集後記】

もっと自由で欲張れる世の中にするため、いまの自分たちのことだけでなく、美波町の今後や、その先にいる未来の子供たちの将来の姿まで見据えて改革を起こしている吉田さんに終始圧倒されました。また、インタビュー中も常に笑顔で、時に冗談を混ぜながらお話される姿を見て、本当に自分の人生を自由に欲張りに楽しんでいる印象を強く受けました。吉田さんを中心に美波町から「新しい生き方」のロールモデルが今後たくさん誕生するのではと思います。

余談ではありますが、吉田さんの漁船の名前は「阿武能丸(アブノーマル)」。こういったネーミングまで吉田さんの生き方が反映されていました(笑)

吉田さんの漁船「阿武能丸(アブノーマル)」

第2回
一過性のブームで終わらせない。美波バレー構想と未来の子供たちに込めた想い──サイファー・テック株式会社