大手メディアと同じことはしない。BuzzFeedが目指す効率的なメディアの運営方法

大手メディアと同じことはしない。BuzzFeedが目指す効率的なメディアの運営方法

大手メディアと同じことはしない。BuzzFeedが目指す効率的なメディアの運営方法

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企業の働き方改革が注目される中、最近ではニュースを報じるメディアの労働環境にもスポットライトが当たっています。長時間労働が当たり前で休みはほぼない、事件が発生すれば深夜・早朝でも関係者を直撃する、という旧来のメディアの体質が問題視されています。

そんなメディア業界の中でも「午後6時に帰る編集部」というポリシーを掲げ、独自の仕組みによる効率化と圧倒的な成果を同時に実現しているのがBuzzFeed Japan(以下、BuzzFeed) です。

2016年1月の日本版の創刊以来、政治や時事、女性活躍やジェンダー、エンタメ、グルメなど幅広いトピックを扱い、バズを連発。日本のネットニュース界をリードする存在です。

これだけのヒットを出しているにも関わらず、なぜ労働を減らし効率的なメディア運営ができているのでしょうか?「メディアの働き方改革」を知るべく、Fledge編集部は創刊編集長の古田大輔さんにお話を伺いました。

第1回
大手メディアと同じことはしない。BuzzFeedが目指す効率的なメディアの運営方法
第2回
会議は30分、退社時間は厳守。BuzzFeedのエディターが「午後6時」に帰れる理由

古田 大輔(ふるた だいすけ)

1977年福岡出身。早稲田大卒。2002年朝日新聞入社。社会部、東南アジア特派員、シンガポール支局長、デジタル編集部を経て2015年退社。同年、BuzzFeed Japan創刊編集長に就任。

価値観が変わるきっかけとなった、ニューヨークの同僚からの問い

古田編集長は、日本の新聞社で長時間労働が当たり前の環境に身を置いていらっしゃいました。そこから現在の効率的な働き方へと切り替えられたきっかけは何だったのでしょうか?

古田 大輔(以下、古田):BuzzFeedの創刊編集長のオファーをもらった後、ニューヨークにある本社で行われた研修の際に同僚から言われた一言です。ミーティングの内容を新聞社時代と同じように遅くまで残ってまとめようとしていたら、「何をやっているんだ?それでどうやってクリエイティビティを保てるんだ?」と指摘されたんです。ハッとしましたね。

私にとっては、夜12時を過ぎて仕事をすることは特別ではありませんでしたが、言われてみると「確かにそうだな」と納得しました。ニューヨーク本社の勤務時間は午前9時〜午後6時なのですが、6時を過ぎるとほとんど退社してしまうような環境でした。

その経験が元となり、働き方を見つめ直すことに繋がったのですね。

古田:はい。長時間労働をするのではなく、社内のルールづくりやツールの活用によって無駄な仕事は減らせると思ったんです。

それでも理想と現実はあって、長時間労働を減らすという理念を掲げても、その通りにいかないことはあります。案件によっては時間をかけて書かなければいけない場合もあります。それでも、慢性的な長時間労働はマネジメントで防げると思っています。

なぜメディア業界は長時間労働になりがちだと思われますか?

古田:コンテンツを作る会社は、往々にして労働集約的になりがちです。その大きな理由は、ひとりが書ける記事の数に限りがあるためです。どんなに優秀な人でも、一日に記事を量産するのは不可能です。

製造業であれば、ある時期に集中して頑張って商品がヒットすれば、一定期間に渡って多額の利益を生み出すことができます。でもメディアでは、商品つまり情報の多くは1日で古くなるので、絶えず生産を続けないといけないし、一つのコンテンツが生み出す利益は多くありません。

収入を大きくしようとすると、毎日、長時間、たくさんのコンテンツを生み出そうとするところが多くなる。持ち場によっては、早朝、深夜、週末にも取材を続けることもあり、長時間労働が常態化する環境を生み出してしまう要因だと考えています。

BuzzFeedだからこそ発信できるコンテンツづくりに注力

BuzzFeedで行っている働き方に関する具体的な施策を教えてください。

古田:「休日エディター」の実例をご紹介します。弊社の休みはカレンダー通りですが、休日も記事を出す必要があります。そうすると誰かが記事を書き、誰かが編集をしなければならないため、ゆっくり休むことが難しかった。創刊から1年間は、休日に記事をどう出すかが課題でした。

それではルールを作って解決しようと思い、休日エディター制度を設けました。休日を担当するエディターを固定し、その分、平日に休んでもらう。ライターは当番制にするもので、これにより他の人は落ち着いて休むことができるようになりました。

結局のところ、BuzzFeedが長時間労働に陥ってしまった場合、悪いのは編集長である私の責任です。ルール化することで、少なくとも休みたいとき、休むべきときにはしっかり休めるメディアになれるように、今も試行錯誤を続けています。

コンテンツづくり、ネタ出しではどのようなことを工夫していますか?

古田:社内にあるチームは、ニュース、メディカル、バズ、エンタメなど、複数のチームに分かれています。各チームにはそれぞれの分野に精通している記者やライターがいるので、メンバー間での雑談がネタ出しになっています。自分たちの得意分野や好きな分野、やりたいことを仕事にする。そんな個人の特性を生かしたチーム作りが重要だと思っています。

長時間労働を改善するために、古田編集長は何が重要だと考えていますか?

古田:社内の人数を考慮し、何を捨てて何をするべきかを明確にすることです。私が以前にいた朝日新聞社には全国で2,500人ほどの編集部員がいます。それに対してBuzzFeedは数十人規模です。大手メディアと同じことをやっても勝ち目はないですし、ユーザーに新たな価値を提供できません。

そこで当社がやっているのが、特定のテーマを深掘りしたり、他メディアと違う付加情報や視点を提供したりするような記事を配信することです。何か大きな出来事が起こった場合、大手メディアはライバル社に先んじて速報を出そうとします。

私たちはそこに参戦するのではなく、そのニュースに対して読者が疑問を持つであろう内容を取り上げ、それを解決するような記事を出します。海外では「スローニュース」と呼ばれる考え方ですね。“スロー”といっても決して1、2ヶ月後に出すのではなく、大手メディアが報じた直後に、“なるべく早くスローニュースを公開する”イメージですね。

大手メディアと同じことをせず、BuzzFeedだからこそできることをやればいい。そんな価値観を持って取り組んでいます。最近の例では、セクハラや性被害に遭った人が「私も」と訴える #MeTooムーブメントや、国際女性デー特集などがありますが、いずれも大きな反響をいただきました。

ビジョンの実現に向けて取り組む3つの戦略

編集部の体制について詳しく教えてください。多くのメディアではコンテンツ制作を外注するケースがありますが、BuzzFeedではいかがでしょうか?

古田:まず編集部の体制についてですが、編集長、副編集長、その下にニュースや医療、健康などのチームがあり、各チームにエディター、ライターが配置されています。

また、外注は基本的に行いません。ただし例外はあります。メディカルチームは2人体制のため制作できるコンテンツには限度がありますし、扱うテーマの専門性が極めて高い。そのため、専門家や医療従事者などに寄稿してもらい、記事に深みを持たせることはあります。その他にも、その方にしか書けないものについて、寄稿をお願いすることはあります。

例えば、2018年3月に行った「国際女性デー」特集では、日本での認知を広げる意図で漫画家さんにわかりやすく書いてもらったケースもあります。

そんな編集部の中で、古田編集長は具体的にどのような役割を担っているのでしょうか?

古田:私は1つ1つの記事を作ることはせずに、全体を見渡して理念の徹底やコンテンツ戦略の策定・推進を行っています。

まず組織には「私たちは何をしたいのか」という理念が必要になります。BuzzFeedの理念は「人々の生活や社会にポジティブなインパクトを生み出すこと」です。それを実現するためにはどうすればいいかを個人、チームで考えられる環境の整備を行っています。またビジネスとして取り組んでいる以上、理念に沿ったビジネスモデルを構築し、収益を上げることも求められます。

現在、力を入れて取り組んでいるのが、3つの戦略です。何を作るかという「コンテンツ戦略」、それをどう届けるかという「ディストリビューション戦略」、読者にどう行動を起こさせるかという「エンゲージメント戦略」です。これら3つの視点から具体的な施策へと落とし込んでいっています。

動画やライブ配信を伸ばし、自分たちからムーブメントを起こせるメディアに

最後に、BuzzFeedの今後の展望について教えてください。

古田:今年伸ばしていきたいのが、動画やライブ配信です。テキストや画像とも掛け合わせて、世の中にムーブメントを起こしていきたいですね。

今から5年後、インターネットはより目まぐるしい変化を遂げていることは間違いありません。その時に実際どうなっているかは誰にもわかりません。5G(※)が登場して、通信速度や扱える情報量も増えていきます。

それに、2020年には東京五輪という大きなイベントがあります。そんな時代に向けて受け身ではなく、自分たちからムーブメントやカルチャーを生み出していけるようなメディアでありたいと考えています。

※5Gとは・・・LTE、LTE-Advancedの次となる第5世代移動通信システムのこと。通信速度の大幅な向上が期待されている。

取材を終えて

自身は長時間労働は苦ではないと語る古田編集長。しかし、ニューヨーク本社で異なる常識に触れたことで、創造性が維持できる働き方へと切り替えることを決意。帰国後には編集部におけるコンテンツ制作の効率化を図り、バズを巻き起こす記事を数多く生み出すことに成功しています。

メディアは長時間労働して当然という思い込みを疑い、どうしたら限られた人員や時間などのリソースを最大限活用できるのか。メディアに携わるものとして、引き続き考えていきたいと思います。

次編では、午後6時に帰る特集エディターである小林明子さんに、なぜその働き方が実現できるのかについて伺っています。こちらもお楽しみに。

執筆:そのべゆういち(@prepapayuyu
企画・編集:たくみこうたろう(@kotaro53
写真:つるみほ

第1回
大手メディアと同じことはしない。BuzzFeedが目指す効率的なメディアの運営方法
第2回
会議は30分、退社時間は厳守。BuzzFeedのエディターが「午後6時」に帰れる理由
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