直感を信じて、自分が笑顔になれる選択を。世界に羽ばたく絵本作家 ── 三岡 有矢音

直感を信じて、自分が笑顔になれる選択を。世界に羽ばたく絵本作家 ── 三岡 有矢音

直感を信じて、自分が笑顔になれる選択を。世界に羽ばたく絵本作家 ── 三岡 有矢音

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私はスロバキアのホステルに滞在中、同い年の絵本作家と出会いました。「絵本の受賞式のために東ヨーロッパに来てん」と関西弁で明るく話す彼女にだんだんと惹きつけられ、仕事や将来について何時間も語り合い、忘れがたい出来事となりました。

時は経ち1年後、日本で再会を果たすと、大阪でのちょっと変わった展示に向けて忙しいとのこと。グランフロント大阪で行われた「ナレッジキャピタル大学校」にお邪魔して、夢を追いかける彼女の話を聞いてみました。

三岡 有矢音(みつおか あやね)

1992年生まれ。兵庫県西宮市出身。梅花女子大学こども学科児童文学・絵本コース卒業。あたらしい創作絵本大賞で大賞受賞。ポーランドで開催されたコンテスト(CLAIRVOYANTS 2016 competition)では優秀賞を受賞。KBS京都「レコメン!in梅花女子大学」、朝日新聞【関西版】「挑む!」、さくらFM「梓 文音の「ありがとう」の花束を」などのメディアに出演。2018年4月からはアイルランドに拠点を移し絵本制作を続ける。

川西 里奈(かわにし りな)

1991年生まれ。愛知県名古屋市出身。立命館大学文学部卒業。2017年から約1年間スロバキアに住みながらヨーロッパを旅し、フリーライターに転身。

すべての経験が創作につながる

川西 里奈(以下、川西):偶然の出会いから早くも1年、ますます忙しそうでびっくりだよ。そもそも、絵本作家を目指そうと思ったきっかけは何だったの?

三岡 有矢音(以下、三岡):本を出したいと思ったのは小学校2年生のときかなあ。元々絵本が好きだったから、芸術系の仕事をするとは考えていて。大学は児童文学を専攻して絵本のコースに進んだ。

川西:児童文学ってことは、子どもが好きなんだ?

三岡好きじゃないねん!

川西:きっぱり!(笑)

三岡:子どもが好きっていうよりも、絵本が好き。というか、「音楽してる」は「音楽好きなんだな」って思ってもらえて、「絵描いてる」は「絵好きなんだな」ってなるのに、なんでか絵本とか児童文学だけ「子どもが好き」ってなるのよね。それがめちゃくちゃイヤ。でも誤解のないように言うけど、すごい仲の良い2歳児もいるよ!それは、気が合う子がたまたま「子ども」と言われる年齢ってだけ。だから、子どもを子どもとは括らずに同じ人間として捉えているのかも。大学に入ってからは、師匠と呼べる先生にも出会って、その先生の影響もあって、私もプロとして絵本作家になりたいっていう想いは強くなっていった。その先生はプロ意識がとても高い人やったからね。でも卒業するときは、就職するかどうかで迷って、結局大学院に進んだ。

▲学生時代にはミニサイズの絵本も制作し学祭などで販売していた

川西:それで、大学院を卒業してから出版デビュー?

三岡:いや、大学院は2年目で休学して、復学はせずに3年目にそのまま辞めたの。色んな経験をするために外に出るものありだと思っていたからね。だけど、休学する直前に「あたらしい創作絵本大賞」という賞をいただいて、その年の10月には初の出版をすることができた。

川西:そこからは絵本作家として生活してたの?

三岡:さすがにまだそれはムリ。アルバイトをしながら絵本を描いてたなあ。てなわけでアルバイトはかなりの数をやってる。ファーストフードから始まって居酒屋、映画館、教科書の販売、不動産の営業事務、たこ焼き屋、阪急そばとか訪問販売とかね。去年の夏までは画材屋さんでアルバイトしていて。それ以降はありがたいことに絵本や絵の収入だけで生きてるよ。

川西:本当はアルバイトせずに絵本だけで食べて行きたいよね。

三岡:いや、そこにこだわってはいなくて、今後も自分の経験のためにするアルバイトなら、全然ありだと思っている。生活のためのアルバイトは絶対に嫌やけども。師匠と呼んでいる先生は「今まで生きてきた経験すべてを糧にしてできるのがこの仕事」っておっしゃっていて、私も自分のやることが全部絵本づくりに繋がっていると思ってる。だから、何かしているときはいつも、自分の中に種を撒いて土を耕している感じ。それで仕事という芽が一本でもでたらラッキー!ってね

▲展示会場でも楽しそうに絵本をめくる三岡さん

就職はしない!体当たりで学んでいく

川西:その後も、就職しようと思わなかったの?

三岡:ない!そして今後も就職することはない!

川西:またもやきっぱり!(笑)

三岡:合同説明会には行ってみたよ。それで、肌に合わないなって思ったのもあるけど、やっぱり、就職したら好きなものを描く時間がないんじゃないかと思った。仕事をしながらでも時間を見つけてとか、寝ないでできる人もいるけど、私はそこまでできない。絶対寝たいし、仕事しながらは無理や!ってなった(笑)あとは会社に入っても経験は増えたり、学ぶことはあると思うけど、今の私に必要な学びはそれじゃないなって。教わる経験じゃなくて、自分で体当たりで学んでいくことが必要かなと。

川西:そこから、絵本をつくることが仕事になっていったきっかけは?

三岡:仕事で海外に行くのを目標に掲げていたのもあって、英会話教室に通っていたんやけど、その先生がポーランドで行われる絵本のコンテストを見つけてくれたの。それで実際に応募をしたら、賞をいただくことができて。
それで、ポーランドで受賞式もあるし、これはもう現地に行っちゃおうって。行っちゃえば出版できんじゃねぇかって。元々ひとり旅が好きってのもあって、ついでに旅行もしててその足でスロバキアまで行ったんよね。

川西:そのときに、私は三岡さんに出会ったってわけだね。

三岡:そうそう。運命の出会い(笑)その頃から、だんだんと絵本が仕事になってきているのかも。今回の展示も、その頃からお話をいただいてた。

川西:今回のイベント、かなり大きくてびっくりしたよ。これは一体どういったものなの?

三岡:せやねん!こんな大きいイベントとは知らなくて、私も当日にびっくり(笑)
これは、様々な分野の講義やアートパフォーマンス、体験型展示とか、ジャンルやスタイルを超えた新しい学びの場、「ナレッジキャピタル大学校」を開催していて。その中で、映像制作の技術とコラボしてアニメーション化された私の絵本が「飛び出す絵本」として、展示されてる。自分の絵が動くところが見てみたいっていうのもあったから、この企画はすごい嬉しかった。

▲プロジェクターで映し出し、絵本からはみ出して動物は動き回る

行動力と営業力を磨く

川西:着々と夢が叶っていってるね。振り返ってみてなぜうまくいっていると思う?

三岡:作品が評価されているというよりも、私っていう人間を応援してくれる人がいるからだと思う。私がコンテストに出したいと言う前から、英会話の先生がこんな賞があるよって勧めてくれたり、ポーランドの授賞式に行くときには、ポーランド人の知り合いを紹介してくれる人がいたり、お店の壁に絵を描いてほしいと依頼してくれたり、一緒に絵本を作りませんか?ってお話があったりね。そういう話には修業期間だと思ってお金うんぬんじゃなくてできる限り乗っかって経験値を得ようとする。
センスとかって人それぞれだからそこを評価するのはむずかしいと思うけど、そこではなくて、行動力っていうもっとわかりやすい部分を周りの人は評価してくれているんだと思う。
賞を取れたのも、やっぱり始まりは行動力と、あとは営業力。私のことを気に入ってもらえたら、私のやってることを応援してくれると思うから、今日みたいな展示会場でも自分から色んな人に話かけに行くし(笑)この営業力は数々のバイトで培われたからありがたい経験だった。

子どもの発想力に負けたくない!

川西:絵本をつくっていて大変なことはどんなこと?

三岡:大変なことはない!ウソ!ある!私の描く絵本が※ナンセンス絵本と称されるものだから、たまに理解されにくいところってのはあるかも。

川西:たとえばどんなこと?

三岡:「あたらしい創作絵本大賞」をいただいた『ゾウとイカとカエルとキリン』っていう絵本は、一緒にいたイカを最後にみんなが食べて終わるお話なんだけど、講評会で聴衆に来ていたの方に、イカが食べられるのがかわいそうって言われて(笑)でも私が描いているのはそこではなくて、みんなで踊って疲れて、イカ焼きがあったら食べるでしょ?イカじゃない、イカ焼き。「かわいそう」ではない。そんな意味も込めて、裏表紙には黒く焼かれたイカがピースしてるんよね。これなら文句ないだろう?「かわいそう」じゃない、だってイカピースしてるもん。って。

▲裏表紙ではイカがピースしている

三岡:意味を求められても、意味はないですよってちゃんと言う。ただ、おもしろいかおもしろくないか、だけでいいと思っていて。教育とかルールばっかりの絵本が売れやすいけど、私にとっては売れることより「こんな変な絵本をつくってる変な人がいるんだ。じゃあ変な自分でも生きてていいんだ」なんて思ってもらえたら、こんなに嬉しいことはない。

ナンセンス絵本は次のページをめくったときに、想像を超える展開が起こり続けるものなんだけど、私は子どもの発想力に負けたくない。子どもの発想力って本当にすごいからね。私が活動し続ける意味はそこにあるのかな。

▲最新作の絵本「キシマン」も、想像を超える展開にくすっと笑ってしまう

※ナンセンス絵本…意味のないストーリーや予測ができない展開の絵本

やりたくないことをやること

川西:三岡さんにとって、「絵本をつくる」=「働くこと」?

三岡:絵本と絵と文で食べていく、ていう目標があるんやけど、多分それが「働く」なんやと思う。一応私の中での「働く」は”手を動かす作業時間”ってことにしてる。
でも普通に電車乗ってるときに、絵本の内容が思いついたりして、その時間は「絵本をつくっている」かもしれないけど、「働く」にイコールではないかな。例えば映画を見ることは趣味だけど、それがインプットって意味でこの先の仕事に繋がれば働いてることになるような気がしているし。そういう意味では24時間働いているありがたい職種。
だから絵本をつくるのは労働している感覚ではないな。お金のために働くのが労働だと思っているから。

川西:今後も絵本で生活していくためには何が必要になるのかな?

三岡:やりたくないこともやること。やりたいことをするためには、ちっちゃいやりたくないことって絶対ある。例えば、メールをすぐ返すとか、締め切りを守るとか。新しく出会った人にはすぐに連絡するとか。ぶっちゃけめんどくさいですよ。私なんて全然マメじゃないからね。喋るのは好きなんやけどな~。もう全員に電話したい。やりたい仕事が来たって、やってるうちに実質ちょっと変わっていくこともあるし。でもその向こう側には、終わったときの達成感がある。

▲いつも作業をしているアトリエ

川西:三岡さんにとって絵本ってどんな存在?

三岡:仲悪いけど、ずっと付き合ってるカップルみたいなもんよ(笑)嫌い!ってなるときも大好き!ってなるときもある。正直に言えば絵本を描くのはしんどいし、締め切りがないとやらない。でも私と絵本は切ってもきれない。一生逃げられない。逃げないって思ってる。

空想の力で、子どもを笑顔にしたい

川西:今後はどんな活動をしていきたい?

三岡:海外で出版したいと思ってる。そのきっかけにもなればと思って、2018年4月末からアイルランドに渡って創作を続けていくつもり。

川西:アイルランドを選んだのはなんで?

三岡:一番は英語の勉強のためかな。海外で出版するなら絶対必要だし。あと日本人が少ないし、寒いところで、行ったことがないし…。まあ、つまり直感だね!(笑)もちろん、知り合いも誰もいない。

川西:行動力ある!絵本作家として見て、海外と日本の違いってどんなところ?

三岡:日本では、アーティストですって言うとだいたいひかれるし、本収入はどこから?って聞かれるんだけど、海外ではふつうに受け入れてくれる。所属をしているかどうかとか、肩書きが何かってことにこだわる人が日本には多いなって思う。

川西:絵本作家としての目標は?

三岡:自分の絵本で人を勇気づけられたらいいな。具体的には、ひとりで泣いている子どもに笑ってほしい。本当の対象がそこって決まっているから、それ以外の人に何を言われても全く怖くない。誰かがいる前で泣いているならまだいいかもしれないけど、ひとりっていう状況はどうしてもいやだから。

ただ、そんな状況であっても、空想はその子どもを笑顔にする手助けができるって思っていて。子どもの頃、人形にしゃべりかけた経験がある人っていると思うんだけど、その頃は人形が返事をしてくれたと思うのね。つまり、空想の力で孤独の状況って少し和らいだりする。私の絵本が、そんな空想の力を持てるようなきっかけになればいいなとは思ってる。そのメッセージを絵本に入れるのは嫌なので、そこは行動で表現できればいいかな。

色んな人の助けを借りて実現できている今なので、そこを驕らずに感謝しながら、まずは自分が笑っていられるように、好きなことを続けていくよ。

川西:ところで、次はどんな絵本を描くの?

三岡:締め切りがないからなんも考えてない!これまでの自分の絵本にない展開のものをつくりたいかな!だけど、そこはやっぱり直感やな!(笑)

川西:アイルランドでも頑張ってね!今日はありがとう!

取材を終えて

三岡さんの絵本のおもしろさが言葉では説明できないように、私が三岡さんに感じる魅力も、説明しがたいものです。ですが、それがまさに“直感”と呼べるもので・・・って、頭で考えていると疲れます!そんなときはナンセンス絵本を読んで、頭を空っぽにしてガハハと笑ってみるのもありだなあ、と思わせてくれた今回の取材。三岡さんはこれから、世界中の子どもたちだけでなく、大人までも笑顔にしてくれるかもしれません。

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