美容師として、日本人として、“お邪魔している”カンボジアに寄り添い、生きていく。── 鈴木 彰義

美容師として、日本人として、“お邪魔している”カンボジアに寄り添い、生きていく。── 鈴木 彰義

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東南アジア、タイからスタートした世界一周の旅。
旅の道中で出会った日本人に紹介してもらったのが、カンボジアの象徴アンコール・ワットのほど近くで美容室を経営する鈴木彰義さん。
開業を決意した時点で、カンボジアへの渡航経験は1度もなかったという鈴木さんが、4年経った今、どう働き、どう考えているかを伺ってきました!

鈴木 彰義(すずき あきよし)

カンボジア シェムリアップ 「Hair Salon A」オーナー&美容師 国際文化理容美容専門学校卒業後、同校の国分寺校で教員を務める。その後、東京・東村山の某美容室で店長を勤め、2013年10月カンボジアで「Hair Salon A」をオープン。

予期せず訪れた、カンボジアという新天地。

── カンボジアで美容室を経営するに至った理由を教えてください。

鈴木:2012年、付き合っていた彼女(現在の妻)がカンボジアのハーブを知りたいという事でシェムリアップに単身で行ってしまったんです。その間、日本とカンボジアで10ヶ月くらい遠距離生活をしていたんですが、彼女が言うにはカンボジアには外国人がやっている美容室が少なく、日本人の在住の方達が美容室選びに困っているという事でした。私もそこからカンボジアについて調べるようになりました。

インターネットで検索すると、当時はカンボジアにある日本人経営の美容室が3店舗しか見つからなくて、情報も少ないし止まっていました。だったら私が「美容室をやれるかも」と思い、カンボジアで1番目立つ美容室を作ろうと決意しました。

まぁ、カンボジアには一度も行ったことがなかったんですけどね(笑)

── なんとも思い切った決断ですね(笑)

鈴木:このきっかけはチャンスだなって思いました。今なら1番目立つ美容室が出来るだろうって。そして店の名前を「A」にしたんです。誰でも読めて、一番・初め・最初・エースという想いを込めて。

── お客様は現地の方が多いのですか?

鈴木:お客様の比率としては、日本人が50%、その次にこの辺りに住んでいる日本人以外の在住外国人が40%、残りがカンボジア人ですね。

── 日本人というのは現地に住む方ですか?

鈴木:もちろん住んでる方も多いですが、最近は旅行者や旅人も来てくれますね。嬉しいことに、シェムリアップの観光名所みたいにもなってきています。

▲「Hair Salon A」に来店した世界各国のお客様たち。

鈴木:日本人やそれ以外の外国人の中では知名度が上がってきていると感じる一方で、カンボジア人のお客様が少ないのが課題でした。

カンボジア人は髪質も生活環境も違うし、流行りのスタイルも、趣味も日本人とは全く違います。カンボジアで美容師をやってるんだから、カンボジア人の頭をたくさん触らせてもらって勉強がしたかったし、コミュニケーションの勉強もしたかった。

そこで始めたのが、カンボジア人カットモデルです。

試しに「Hair Salon A」の Facebookで「カンボジア人カットモデル100人募集!1回のみ無料!」って日本語で投稿してみました。そうしたら一週間後、来てくれたんですよ!(笑)

── 日本語だったのにびっくりですね。

鈴木:私もびっくりしました(笑)一番初めのカットモデルは在住日本人のお友達の方でした。そこからはもう順調で、あっという間に1ヶ月半で100人達成。口コミってこういうことなんだなって。

当初は100人限定のつもりだったんですが、終わってもまだ来てくれる方がいたし、私もまだまだ勉強したいと思ったので、そのまま現在も続けています。スタートして3年ほど経っていますが500人以上のカンボジア人の方を無料でカットさせて頂いてます。

── 500人ですか!!すごい!!

鈴木:たくさんの人をカットさせてもらったことで、カンボジア人の髪質や環境も解ってきましたし、コミュニケーションも少しづつですが取れるようになってきました。そして、なぜカンボジア人のお客様の来店が少ないのかも解ってきました。

あと、嬉しかった出来事もありましたね。

無料でカットした時に学生だった子が、その後就職して自分で稼いだお金を持って、「やっと自分のお金で髪を切れます!」と美容室に来てくれたんです。

私のお店の値段は、地元カンボジアの美容室よりは少し高いけれど、お金持ちの方にだけ来て欲しい訳ではないんですよ。「少し高いけど素敵になりたい」というお客様が増えたら嬉しいです。

毎回毎回僕の店に来てもらわなくてもいいんです。一生懸命働いて貯めたお金で、いざって時、とっておきの時に来てもらえれば。「あのときのヘアスタイルよかったなって」忘れないでもらえたらって。

▲カンボジア人カットモデルのみなさん。

カンボジアにお邪魔させていただいているということ

鈴木:その一方で、「無料でカット」するということもちゃんと考えないといけない。

── それはどういった想いからですか?

鈴木:私がやっている無料カットは、私自身の勉強としてやらせて貰っていて、通常であればこちらがモデルにお金を払わないといけないのですが、カット料金を頂かない事でフェアトレードという形でやらせて頂いてます。

しかし最近では、ボランティアや旅中の方で、ありがとうと言われたい、喜んでもらいたい、という理由で村や学校…道端などで「無料でカット」をする方が増えています。少し考えてみてほしいんです。例えば毎月通っている美容室にお金を払うはずだったお客様が、外国人に「無料でカット」してもらったらその月はいつもの美容室に行かない。

これって良い事でしょうか?

カンボジアの美容室からお客様を奪ってしまうことになるんですよ。もちろん切って貰った方は「無料でカット」して貰えたので喜ぶとは思いますが。

── 確かに、そうかもしれませんね。

鈴木:もしかしたらお店が潰れちゃうかもしれないし、生活を壊しちゃうかもしれない。地元の方のビジネスを邪魔してしまうかもしれない。そういった可能性だってありますよね。

実際に私のサロンのお客様も、旅中の美容師に切って貰ったからと言って来店しない方もいました。とても残念な事です。

── それを踏まえて、鈴木さんが気をつけていることはありますか?

鈴木:私はできるだけカンボジアに寄り添って生活することを心がけています。現地に住んで、生活に必要なものはいつものお店で買って、ご飯を食べる時やお酒飲む時はいつものお店に行ってお金を使う。そして近所付き合いもしていく。近所のおばちゃんには毎日顔を見せてますよ(笑)

そうすると困った時は助けてくれるし、たまに美容室にお友達をご紹介してくれたりもします。みんな、小さな街でお互いを助け合っているんです。

── 寄り添って、助け合っての生活。カンボジアでどのような美容室にしたいと思っていますか?

鈴木:私の美容室は、日本から来たジャパニーズクオリティの先端美容室としてはやっていません。「日本の技術教えます。」「スタッフ募集します。」といった事もしていません。

カンボジアにある地元の美容室はライバル同士だと思っていて、地元の美容室をいつもチェックしています。その地元で、もし私が美容師として他の人より稼げていたら、他の美容師は「なんでだ!?」って思うでしょ?こういうやり方もあるんだなって思ってもらって、一緒によくなっていけたらいいなと思い美容室をやっています。

▲カンボジアの象徴「アンコール・ワット」。ここから車で10分程度の場所に「Hair Salon A」がある。

次の世代のために

── 最後に、今後のカンボジアでの展望を教えてください。

鈴木:カンボジアに住み始めてからの4年間で、いろんな環境や生活を観てきて、最近少し気持ちが変わってきました。お金を払ってカットをすることができない人、技術を習いたくても習えない人たちがいて、カンボジアの人たちのために何かできたらと思い始めています。

ボランティアや旅中の方に「無料でカット」された人が綺麗になって喜んでいるのも確かです。ですが、私はカンボジアに住んでいる身として「現地の人の生活」を壊さない、また違った方法で何かできるんじゃないかって。今はそれを考えていますね。

そして、私が日本人として次世代のためにすべきことは何かを。

── 次世代のため。

鈴木:カンボジアに来てみて、日本人であることに有難みと誇りを感じることが多くなったんです。

── それはどうしてですか?

鈴木:カンボジアに来たばかりの時は、言葉も通じないしルールも違うし、大変なことばかりでした。でも、日本人だからという理由で助けてくれる現地の人たちがたくさんいました。

それは、今までカンボジアに居た沢山の日本人の先輩たちが作ってきくれた何かがあって、日本人の印象が良いからなんです。

その先輩たちがいたからこそ、私はカンボジアで美容師として受け入れてもらって生活ができている。これは本当にありがたい事です。ですから私も一人の日本人として絶対この国に迷惑をかけるようなことはしてはいけない。良い印象を継続していこうって思っています。

そして、海外でビジネスや生活をしたいという、次の世代の為に繋げていくことが、海外にいる日本人としての使命だと思っています。

編集後記

旅人やボランティアによる「無料カット」。私は旅人という立場で、カットした人、カットされた人の双方が喜んでいる場面しか目にして来ませんでした。しかし、立ち止まって考えた時、それらを取り巻く環境と様々な立場で想いは変わるのかもしれない。考えさせられるインタビューでした。

── Special thanks to Ayano.M

 

 Hair Salon A

▼Facebook https://www.facebook.com/hairsalonA/

▼Instagram https://www.instagram.com/hairsalon_a_cambodia/

▼住所
Dragon Royal Condominium1, Krong Siem Reap, Siem Reap
Tel : +855(0)89 215 781


 

 
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