東京 赤坂の大通りを一本入ると、大使館や洋館などが立ち並ぶ閑静な街並みが広がる。その中に佇むのが、『富山県赤坂会館』。
一見、会社のようにも見えるこの建物。実は、知る人ぞ知る都会のオアシスなのだとか。早速中へ入って、様子を伺ってみましょう!
楠 宗久(くすのき むねひさ)さん
富山県赤坂会館 支配人 神奈川県横浜市に生まれ、小中高は富山県で育つ。先祖は代々富山県出身。東京の大学を卒業後、富山にUターン就職。富山県庁に37年間勤務した後、2020年から富山県赤坂会館の支配人を務める。
東京のど真ん中で富山を満喫!?
おや!?受付や食堂のような場所が…ここは一体なんなのでしょうか?
楠宗久さん(以下、楠):ここは『富山県赤坂会館』。私は支配人の楠です。宿泊をはじめ、旬の富山料理や会議や宴会場のご提供をしています。昭和47年に建物が完成し、48年(1973年)4月にオープンしました。
▲受付前に広がるロビーは明るく開放的。
ということは今年で48周年ですか!すごい歴史ですね。富山とはどういった関係なのでしょうか?
楠:1990年代までは富山県の議員や職員等富山県関係者が、東京へ出張に来たときに滞在するための施設でした。その後、北陸新幹線の開通や飛行機などの交通の便が発達し、出張も日帰りで済むことも多くなりました。そのため、富山県関係者だけでなく一般の方にも利用していただけるようにして、現在では一般の利用者の方のほうが多くなりました。
▲「1階エントランスには東京・富山のガイドブックも多数用意しています」(楠支配人)。
一般の方はどういった目的で来られるお客さんが多いのでしょうか?
楠:東京の観光で利用される方もいらっしゃいますし、宿泊が61室あって110名泊まれますので、部活の合宿であったり、スポーツ大会で来られる学生さんなどの利用も多いですよ。
団体でお越しいただいた際には、食堂や宴会場も重宝していただいています。
▲1階の食堂(左)。24畳の大広間(右)は宴会スペースとしても利用可能。
施設としては、どういった特徴があるのでしょう?
楠:機能として、宿泊、宴会、会議という3本の柱があります。
▲会議室は、企業や周辺のマンション管理組合などさまざまな用途に開放している。
特に好評いただいているのは、富山ならではの味覚。ブリやホタルイカ、白エビ、氷見うどんなどを楽しめる宴会料理を味わっていただけます。
▲富山出身のシェフによる四季折々の食材を活かした宴会料理が評判。
富山が地元の人にとっては、懐かしい味を体験していただけますし、東京の方には新たな発見がある、そういった施設になっています。
お得感満載!個性あふれる宿泊プランが自慢
あ!白えびせんべいだ!富山のお土産も売ってるんですね!
▲1階では富山で人気のお土産も販売している。
楠:ああ、このお土産は「富山の美味を懐石料理で堪能・都心で旅館気分」プランにはプレゼントとしてお付けしています。
こちらのプランは、富山の料理、富山のお酒をじっくり楽しんでいただき、温泉旅館のようにゆったりと過ごしていただくというプランです。昨年から始めたのですが大好評をいただきまして、今年もご案内をさせていただいています。
「富山に旅行に行きたかったけどコロナの影響で行けなかった…」という方にも多数ご利用いただきました。「東京観光もしつつ、富山旅行も疑似体験できた」というお声もありましたね。
▲1〜6名で宿泊できる和室はタイプもいろいろ。
他にはどんなプランがあるのでしょうか?
楠:以前から受験生パックも販売しています。富山から東京の学校を受験するとき、集中して勉強していただけるプランとなっています。県の関連施設となるとご両親さまも安心されていましたね。プレゼントでは合格祈願グッズとして、湯島天神のえんぴつも差し上げました。
新しいプランは「日帰りテレワークプラン」と、「14泊または28泊の長期滞在プラン」。日帰りテレワークプランは、お一人3,000円で、7時~22時の最大15時間ご利用いただけます。各部屋に無料Wi-Fiがあり、共同浴室もご利用可能。貸出タオルも無料で付いています。
この立地の良さで個室で集中して仕事ができて、お風呂にも入れるなんて…今すぐ利用したいです!長期滞在プランはどういった方が利用されていますか?
楠:都心へ引っ越す必要がありアパートを探している方や、地方から出張で来た方が多いですね。元々ここの7階は、東京に派遣された人が長期で滞在するための場所だったので、洗濯機や乾燥機などの設備も整っているんです。なので、マンスリーマンションのようなかたちでもご利用していただけます。
コロナ禍で頻繁に移動するよりも、長期で滞在を望んでいる方もいるので、そういった方にも重宝していただきましたね。こちらは1泊あたりの値段が2,350円になります。
ええ!朝食付きでそんな値段は、ここ周辺のホテルとしてはきっと破格ですね。
▲朝食のご飯ももちろん富山県産のコシヒカリ。おかわり自由。
富山を離れ、東京で第二の人生をスタート
ところで楠支配人、昨年からこちらに勤務されているということですが、それまでは何を?
楠:37年間、富山県庁の職員でした。県外の勤務も一回もなかったのでずっと富山県に住んでいました。
それで、退職後の第二の人生にここの仕事をしないかって話が来たんですが、実は新入職員のとき、僕はここの仕事をしていたんです。
当時はインターネットもないですから、富山県庁に予約の受付の台帳があって、受付印を押したり、台帳をファックスしていたんです。そういう意味では何かご縁があったのかもしれませんね。
楠支配人と赤坂会館は、実は長い付き合いがあったんですね。県庁にいた頃とは、まったく違う業務をされていると思うのですが、戸惑いなどなかったですか?
楠:県庁では主に土木系統に携わる業務が多かったんですが、そのほかにも富山空港のセールスの仕事もしていました。それから、伏木富山港へのクルーズ客船の誘致。旅行代理店とか船会社を回っていましたね。
だから、「新たに旅行や観光の仕事をするのはありかな」と思いました。まあそれ以外は堅い仕事がほとんどでしたけどね(笑)。
こちらに来て仕事をされてみて、どうでしたか?
楠:民間企業はスピードが違いますから、とても刺激的でした。周辺のホテルの状況を見ていると、新しいプランをどんどん出していますからね。
うちは他のホテルよりも施設自体が古いですから、何かメリットがなくては来ていただけません。うちでできることは、やっぱり富山を推すこと。富山のお酒と料理が楽しめるということや、富山のお土産もプラスしてみたり、試行錯誤を重ねています。
真心込めたサービスで、心休まる都会のオアシスを実現
富山県赤坂会館の運営をする上で、いちばん大事にしてることはなんでしょうか?
楠:お客様へ提供するサービスに間違いや不備がないか、必ず複数人で二重チェックすることを徹底しています。お客様の応対、お出迎え、お見送り、プランニング、価格設定、フロント、職員の管理、総務から営業まで、すべての業務に直接携わり、責任をもってやっています。
それから、広報にも力を入れています。フェイスブックでの情報発信やSNSでのPRもしています。
▲1階入り口付近では富山の写真の展示も楽しめる。
今のお仕事のどういったところをやりがいに感じていますか?
楠:やはり、自分で作ったプランが多くの予約をいただくとうれしいですよ。好評なときは、予約を開始して2日で埋まってしまうときもあって、「次はどんなプランにしようか」と、いつも考えています。
これまではビジネスホテルとしての利用が多かったですが、観光目的のお客様にも利用していただけるよう、いろんなプランを考えていきたいですね。コロナもあって安全な滞在を重視するお客様も増えていますから、そういった方にも安心してくつろげる“大人の隠れ家”のような感じでご利用いただけると良いなと思います。
▲富山県赤坂会館の周りには緑が広がる。
たしかに、とても静かでゆっくりできて、隠れ家のような雰囲気はありますね。
楠:そうなんです。僕も東京へ引っ越してきて、ビルばっかりで疲れちゃうかなと思っていたんですが、この辺りは公園もあって緑も豊かで、意外と心が安らぐんです。
しかも立地は最高ですよ。少し歩いたらすぐ六本木駅です。
まさに都会のオアシスですね。
楠:はい。富山を体験しながら、心も体も癒やされる…そんな場所として、今後もコロナ対策も含めて、安心して滞在をいただくためのサービスの提供を心がけていきたいと思います。
取材を終えて
富山県赤坂会館は、東京のど真ん中で、真心尽くされたサービスと個性あふれるプランを提供する癒しスポットでした。
今後はどんな富山の魅力を発信してくれるのか、とても楽しみです。都会の喧騒に疲れたとき、ちょっと仕事に集中したいとき、気軽に利用してみるのもありかもしれません。